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私はいかにしてプロ教師になったか、その方法とは

 30歳を過ぎた頃から、プロ教師としての自分をつくりあげるために、意識的に修業を始めた。
 体の動き、教師としての服装、言葉づかい、教師と生徒との関係・クラスのつくり方、行事の組み立て方にいたるまで、約10年の修業で何とか人並みにやっていけるようになった。
 学校で何年か生活していれば、自然に教師になれるというわけではない。プロの教師として生き抜いていこうと決意した時から、すべてが始まる。教師は自らの力でつくりあげていくものなのだ。
 生身の自分を教師にするということは、肉体的・精神的苦痛をともなう苦しい修業と考えていい。この修業をやり抜いてこそ、プロの教師としての道が開けるのである。
 私の修業時代の要点を簡単に紹介すると
1 学校は戦場である
 ボーッとした頭、だるい体で戦える場ではない。体調を万全に整えて臨むことが基本である。
 私の場合は、睡眠を充分にとること、毎朝15分体操することぐらいであるが、階段を1段おきに駆け上がるかどうかで体調をはかり、調整している。
2 教師を演じるには服装から
 服装は、相手をひとつの型に引きずり込む力を持っている。例えば、役者が舞台で劇を演ずるとき、衣装は力を持っている。教師も同じである。
 私の場合「スーツにネクタイ」である。真冬の寒い中、スーツでさっそうと生徒の前に登場するのは、さわやかなものである。それだけで、ずいぶんと得をするはずである。
 主役の教師が貧相な服装では劇は盛り上がらない、スーツはできるだけいいものがいい。
 以前は、ラフな服装をし、生身をさらして生徒の前に立っていた。しかし、生身の自分をさらし、生徒とわたりあっていくには、私は人間としての力量は小さすぎることに気づき、教師としての自分をつくらねばならない、と考えたのである。
3 役者のような動作を身につけろ
(1)
顔つき
 服装だけで戦えるわけがない。そこでまず、顔つきに注意しよう。自分が今、どんな顔つきをしているか、いつも意識し続けなければならない。
 生徒は教師の顔つきの変化で大きく変わるものである。顔つきを意識してつくろう。
(2)
身のこなし
 廊下を歩くとき、私は胸を張って前方を真っすぐ見て、サッサッと歩くように心がけている。
 生徒に見られているわけだから、下を向いてダラッと歩いていては、権威も何もあったものではない。 
 生徒の前に立つときは、胸を張って背筋をピンと伸ばす必要がある。
 そして、動作は大きいほうがいい。メリハリのある動作がいい。芝居のように大げさな動作がいいのだ。
(3)
メモ魔になろう
 自分の動作・言葉を対象化するため、そして他人の教師や生徒をしっかりつかむために、メモ魔になろう。
 自分の動き、しゃべった内容、他の教師や生徒の動きを徹底してメモし、これからの自分をつくる材料にしたい。
 中学校では3年が1サイクルである。3年間、ノートを片時も離さずメモし続けよう。
4 話し方
(1)
しゃべり方・言葉づかい
 しゃべり方、言葉づかいはもっとも難しい。
 原則は、教師と生徒の距離をおくこと。生徒を教師から離すことは、なかなかもって難しい。
 教師と生徒とは立場が違うのだということを、自分にも生徒にもハッキリさせることが目的である。
 服装、顔つき、動作、すべてそのためである。
 教師は一般的におしゃべりである。ペラペラしゃべることをやめることから始めよう。できもしないことは絶対に言わない。愚痴は言わない。黙って行動する努力をしよう。
 生徒のなれなれしい言葉づかいを拒否することから始めたい。教師もなれなれしい言葉づかいをやめる。
 言葉づかいは他人行儀なものがいい。
(2)
声の大きさ
 大勢の生徒の前でしゃべる場合、声が通らないというのは致命傷である。
 少しくらいうるさくとも、自分の声が教室の後ろまで通るように訓練する必要がある。演劇の発声訓練に学ばねばならない。
 できれば、体育館で千人の生徒を前にして、マイクなしで後ろまで充分に届く声をつくり出す必要がある。
(3)
しゃべる内容
 何をしゃべるか、短くまとめ、しゃべる練習をする必要がある。
 たいして考えもせずにしゃべり出し、中身がないからダラダラと枝葉をくっつけて話を長びかせる教師が多いが、そんなことをするくらいなら、しゃべらない方がよっぽどいい。
(
河上亮一:1943年東京都生まれ、埼玉県公立中学校教諭、教育改革国民会議委員、日本教育大学院教授を経て、埼玉県鶴ケ島市教育委員会教育長、プロ教師の会主宰)


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