どうすればよいかわからないときは、他の人に意見を聞き、自分の行き方、性格をしっかりとつかんだ上で、参考にするとよい
日々、常に「いかにするべきか」という迷いが生じてくるのが人生だと思います。
例えば、自分はこの仕事に向いているのだろうかといった基本的な迷いをもつこともあれば、新しい仕事にどう対処していったらいいかというような具体的な悩みにも出会います。
どうすればよいかわからないときや、迷ったときには、他の人に意見を求めてみるとよいと思います。
自分をしっかりつかみ、素直な心で耳を傾けていく。そこから確かな人生の歩みが始まります。
私たちは、日々の生活の中で、さまざまな迷いによく直面します。一生を左右するほどの決断から、日々のこまごまとした選択まで、常に「いかにするべきか」という迷いが生じるのが人生だと思います。
そこで、その迷いを解決するときには、一つにはやはり、ほかの人に意見を求めてみることだと思います。
自分をよく知ってくれている人に尋ねてみる。そうすると、そこに具体的な方向がしだいに明らかになってくる場合が多いと思うのです。
私もこれまで、自分でわからないことがあると、できるかぎり他人の意見を求めるよう努めてきました。
自分だけでは判断がつかないこともしばしばあります。そんなときには、事情を説明して「あなたなら、どう思いますか」と尋ねるわけです。
そうすると「それは松下くん、ムリやで」とか「きみの今の力ならやれる。大いにやるべきだ」とかいろいろ言ってくれます。
そのとき、自分がすぐ納得できたら、そのとおりに実行します。
しかし、どうもピンとこない場合には、また他の人に聞いてみると、また違った立場からの意見を言ってくれます。
そうした意見を参考にして自分なりによく考え、結論を出すようにしてきたのです。
意見を求めてみると「それは、よく聞いてくれた。見ていて、内心こうしたらよいと思っていたんだ」と、言ってくれる人が案外多いのではないでしょうか。
ですから、ちゅうちょせず、思い切って尋ねてみることだと思います。
ただ、その場合に忘れてはならないのは、あくまで自分というものをしっかりつかみ、そのうえで、素直な心で聞くということでしょう。
自分をつかんでいないと、相手の言うことがみな正しく思えて、聞くたびに右往左往することになりかねません。
また、私心にとらわれて、自分の利害や体面などが気になって、自分に都合のいい意見ばかりを求めてしまうことにもなるでしょう。
それでは、聞く意味がなくなってしまいます。
こうしたことは、人に意見を聞く場合のみではなく、本を読んだり、テレビを見たりする場合でも、同様に大切なことだと思います。
他の人の意見を取り入れて、その通り自分でやってみても、人それぞれに天分、個性が違うのですから、同じようにはいきません。
人には人の行き方があり、自分には自分の行き方がおのずとあるわけです。
だから、やはりまず自分の考え、性質を正しくつかんで、そのうえで他人を参考としていかなければならないと思うのです。
人間一人の知恵才覚というものは頼りないもので、だからこそ、迷ったときは何ごとにも積極的に他の人の知恵を借りることが必要です。
自分のカラに閉じこもったり、頑迷であったりしてはならないと思います。
しかし、人の意見を聞いてそれに流されてしまってもいけない。聞くべきを聞き、聞くべかざるは聞かない。
そのへんがなかなかむずかしいところですが、それができれば、お互いの人生の歩みは、より確かなものになっていくのではないでしょうか。
(松下幸之助:1894-1989年、パナソニック(旧名:松下電器産業)創業者。経営の神様と呼ばれた日本を代表する経営者)
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