子どもの指導で、「温かさ」と「厳しさ」のバランスがわからない、「温かく、厳しい」指導の極意とは
子どもを叱ると、子どもの心が離れてしまう気がします。
優しすぎると、子どもにバカにされるのではないかと不安です。
この問題は、ほとんどの教師が同じ経験をしています。
この問いに答えるには、子どもの「心理的事実」と「客観的事実」を考えるとよい。
「心理的事実」は、子どもの気持ちです。
「客観的事実」は、子どもの発言や行動です。
これが同じなら、子どもを理解するのに苦労することはないのですが、やっかいなことに、違う場合が多い。
例えば、ある子が遅刻して教室に入るなり「おもしろくねー」と、大きな声を出しながら、前列の子の机の上にあった筆箱を窓の外に放り投げてしまった。
その子は家を出るとき、ささいなことで父親に殴られていました。どう指導しますか。
A教師
教師:「どうしたんだ?」と尋ねると
その子:「朝、父ちゃんに殴られてムシャクシャしてるんだ」と答えた。
教師:「それじゃ、仕方ないね」と言った。
B教師
教師:「バカもん、筆箱を拾ってきて、しっかり謝れ」と言った。
どちらも、いい指導とは言えません。
子どもの「心理的事実」を受け入れ、「客観的事実」には責任をとらせる。
これが「温かく、厳しい指導の極意」なのです。
「心理的事実」には耳を傾け、子どもの気持ちをしっかり受け止める。「客観的事実」には責任を果たさせるようにするのです。
例えば、ある日、教師の注意に腹を立てた生徒が故意に窓ガラスを割りました。
どうすれば、「温かく、厳しい」指導になるのでしょうか。
C教師
教師:駆けつけると、窓ガラスを割った生徒に大きな声で「ガラスの破片を全部片づけろ」と、叱りました。
生徒:C教師の迫力に、その生徒はしぶしぶ破片を拾い始めました。
教師:少したつと、その生徒と額をぶつけるようにして手伝い始めました。
「ところで、何でこんなことしたんだ」と語りかけ、その生徒の辛い気持ちには大きくうなづいていました。
D女教師
D教師:ガラスを割った生徒の手を握り
「どうしてこんなに興奮しちゃったの。ダメじゃない」
「まずは片づけ。手伝ってあげるから」
「このガラス高いんだから、自分の小遣いで弁償するのよ。お母さんには先生から言っとくから」
C,D教師に共通していたのは「心理的事実」には耳を傾け、子どもの気持ちをしっかり受け止めるが、「ダメなことはダメ」と「客観的事実」には責任を果たさせている点でした。
「温かく、厳しい」指導とは、こういう指導を指すのではないでしょうか。
(嶋﨑政男:元東京都立中学校教諭・校長、日本教育相談学会事務局長)
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