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教育実践がうまくいく先生は何が違うのでしょうか

 教育実践がうまくいっている教師は何が違うのでしょうか。
 教育実践がうまくいっている理由をあげると、
(1)教育実践がうまい教師は、原因を追及しすぎません。
 原因を追求しすぎると、教育実践がうまくいかないことを、よく知っているからです。
 教育実践がうまくいかない原因には、取り除くことができるものと、できないものがあります。
 例えば、親の離婚が原因で欠席が多くなった場合「離婚をやめてください」とは言えません。
 原因を追究して取り除くという考え方は、教育現場には、なじまない場合が多いようです。
(2)どうしたらうまくいくかという「解決」に焦点をあてる
 教育実践がうまい教師は、どうしたらうまくいくかという「解決」に焦点をあてます。 
 どうしたら、「よりよき状態を手に入れることができるか」を考えることに焦点をあてたほうが効率がよいのです。
(3)うまくいっている状況を具体的に想像ができる
 教育実践がうまい教師は、「よりよき状態」を手に入れるために
「うまくいっている状態では、どのようなことが起きているか」を、具体的に想像できます。
 実は、ここが一番重要なことです。
 例えば、うまくいっている学級の状態では「個々の子どもにどんなことが起きていますか?」具体的に考えてみてください。
 そのとき、子どもは何をしていますか。どのような言葉が聞こえ、どのような関わり方をしていますか。
 具体的な行動が想像でき、そのときの空気感まで感じることができれば、半分は成功です。
 最終のゴールのイメージが描けたら、現実のものにするために、何をするか考えればいいわけです。
 ゴールのイメージが想像しにくい教師は、うまくいっている教師の学級の様子を観察したり、同僚の教師と一緒に考えてみたりするとよいでしょう。
(4) 「どうしたら、うまくいくか」という解決志向の対応や考え方が体になじんでいます
 私は、以前に中学校の教師をしていましたが、そのとき私にできたことは、生徒たちが「しあわせ」を感じることのできるセンサーを磨くことと、心の種をひたすら蒔き続けることでした。
 ストレスは、自分の思うようにいかないときに生じるものです。
 私たちは、変えることのできない他人と過去の出来事について「なぜ」「どうして」と思い悩み、身動きがとれなくなるのです。
 他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられます。過去の出来事をどう受け止めるかは、いま、変えることができます。
 原因の追究に時間を割くのではなく、解決志向でいきましょう。
 教育実践のうまい教師は「どうしたら、うまくいくか」という解決志向の対応や考え方が体になじんでいます。
 こうした教師の対応や考えが、子どもたちのモデルにもなります。一石二鳥にもなるでしょう。
(5)うまくいかないとき、子どもを変えようとせず、教師自身の行動を変える
 子どもを変えようとするのではなく、教師自身の行動を変えれば、未来も変わります。
 もし、一度やってうまくいったなら、迷わず次もその方法でやってみることです。
 その方法を繰り返し続けていくうちに、それが自分の得意技となり、自信へとつながります。
 一度うまくいくと、どんな忙しくても、どんなに時間を費やしても「達成感>疲労感」となるものです。
 もし、うまくいかなかったら、いさぎよく、ほかのやり方を試してみましょう。うまくいかないことに、いつまでもこだわることはありません。
 百発百中をめざすのではなく「数打ちゃ当たる」の心意気です。そして、うまくいったら、迷わず次もその方法でやってみることです。
 教育実践のうまい教師は、うまくいかないとき、子どもを変えようとせず、自分が変わろうとします。 
(6)子どもたちの小さな変化に気づくのがじょうず
 教育実践のうまい教師は、子どもたちをよく見ています。
 いままで、できていなかったことが、できそうになった瞬間を見逃さないのです。すかさず声をかけるのです。子どもたちは前に進む勇気が出ます。
(7)小さな変化を起こすのがじょうず
 いままでとは違う何かをするということです。
 例えば教室に入るとき、いつもは前から入るが、今日は後ろから入り、机と机の間を通るルートを変えてみます。子どもの様子を身近で観察することができます。
(8)「どうしたらうまくいくか」考えるのがじょうず
 よりよき状態を手に入れるために、どうするか考え、すぐに行動に移すことができます。
(9)問題解決を「子ども自身でできる」と信じて対応することがじょうず
 教育実践のうまい教師は、子どもの話を聴きながら、
「そっかぁ(受容)」
「で、あなたはどうしたいの?(質問)」
と、いった会話をしています。
 答えは、その子がすでにもっているものです。気づかないふりをしていることが多いことを教師は知っているのです。
(10)「アプローチの引き出し」をたくさん用意できている
 教育実践のうまい教師は、アプローチの仕方の引き出しをたくさん持っています。
 この手法がダメなら、あの手法がある。この子にはこの言葉がけが効くだろうと。
 アプローチのレパートリーを増やすには、どうすればよいのでしょうか。
 各種研修会に参加する。本屋で探すのもいいでしょう。常にセンサーを張り、気になるものや使えそうなものを書きとめることをおすすめします。
(11)教育技法や理論を支える哲学をもち、それを支える人間性を常に磨く
 教育技法の裏づけとなる理論を知り、意味がわかることが大切です。
 すぐに結果が出なくても、意味がわかっていれば、余裕をもって子どもにかかわることができるようになります。
 逆に、小手先の技法にとらわれて溺れたりしないでください。
 いくら技法を学んでも、それを使う教師の人間性に問題があると、実践はしっくりきません。操作的になってしまい、うまくいかないので注意が必要です。
 教育実践のうまい教師は、教育技法や理論を支える哲学をもち、それを支える人間性を常に磨いているのです。
(鹿嶋真弓:広島県生まれ、東京都公立中学校で30年間勤務、神奈川県逗子市教育研究所長を経て高知大学准教授。文部科学大臣優秀教員表彰。日本カウンセリング学会賞受賞。専門は学級経営、人間関係づくり、カウンセリング科学。構成的グループエンカウンターなど教育現場に活かせるワークショップを展開。 『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK)出演)

 

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