すぐれた教育技術を身につけるには、どのようにすればよいか
すぐれた技術を身につけるには、学ばなくてはならない。それも、半端な努力ではだめである。
すぐれた技術は、それを知ってすぐに身につくものではない。
技術を身につけるということは「技術について理解すること」と「技術を身体に習得すること」の二つを通過しなければならない。
「技術を理解すること」は、学習においてもできるが、それを「身体に習得させる」ことは、学校現場でやるほかはない。
「技術」は、その人その人の「使用能力」と合体して表現されることがある。
「技術+その人の使用能力」それを技能とよぶ。
技術を技能にまで高めることが必要である。それには修業が必要だ。
技術は人それぞれの個性と結びつき、それぞれの姿を持つ。
同じ歌を歌っても、歌手によっておもむきがちがうようにである。
高い技能水準に達するには、
(1)どのくらいの水準にまで上げるのか目標がなければならない。
(2)目標との差を自覚しなければならない。
どこが、どのように悪いのかを分析しなければならない。
優れたコーチは、そこを発見してくれる。上級者の存在が必要だ。
すぐれた教師に授業を見てもらう最大のポイントは、そこを見てくれることである。たった一言でも万金にあたる。
(3)自分の現状を分析し、その欠点をあばいた上で、それを克服する努力を続けねばならない。
意識しなくても、瞬間的に使えるようになるまで、自然に自分のものになっている状態まで続ける必要がある。
(4)技能は、一つの技術を使えるという状態から、「多くの技術から瞬間的に一番いい方法を選択して使いこなす」という状態までの広がりがある。技術は多くを知っていなければならない。
例えば、全校集会で体育館に集まったとき、はじめは騒がしいものである。さわがしい子どもたちをどう静かにさせるか。教育技術という点から考えてみる。
教育技術のない教師は、「静かにしなさい」「前にならい」をくり返す。教師としてのプロ性はほとんどない。
最低の教師は、子どもをどなりつける。ほめ方が上手で毎時間ほめている教師はいい教師だ。
教師なら何かの技を持っているべきであろう。
誰でも一つか二つの技術を持っていてあたり前である。教師は、それが仕事なのであるから。例えば
「先生が五つ数えますからね。五つ数えるうちに静かになりましょう。ひとーつ。ふたーつ。・・・・・」
これは、かなり効き目のある方法である。このような方法をする教師でプロの入り口、新卒程度であろう。
問題は、いつもいつもこの方法しかとれないことである。
これでは、教育の幅がせまくなる。自己流の教師に多い。本を読まない教師に多い。
教育技術はいっぱい持っていた方がいい。いっぱい持っていれば、いろいろ選択できる。
教育技術をさまざま知ることによって教育の幅は広がるのである。
(向山洋一:1943年生まれ、元東京都公立小学校教師、教育技術法則化運動代表を務めてきた。教師を退職後、TOSSインターネットランドの運営に力を注いでいる)
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