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教師は保護者と、今を共に生きる仲間として本気で付き合おう

 教師は、保護者に誤解されたり、真意が伝わらなかったり、不信感を抱かれたりすることは避けられないことです。
 しかし、失敗を回避することばかり考えていたら何もできません。失敗から学ぶことも大切です。
 私は、若かりし頃、初めて担任した保護者懇談会で「とにかくいいところをほめればいい」と思い込んで「〇〇さんは、とても素晴らしいですね。」をくり返していました。
 ある保護者が「先生、私は子どもがどうしたら伸びるかを知りたいのです」と言われ、絶句してしまいました。
 教育は、How toではなく「誠意」「本当の気持ち」が大切です。
 口先だけでなく、表情や声のトーン、抑揚、態度など、非言語的なものが相手に伝わります。心のありようが出てしまうものです。少しのおごりも必ず態度に出てしまうものです。
 私は、迅速、丁寧、誠意を心がけています。
 保護者の方とはいえ、やっぱり大事な人生を分かち合う人です。本気でつきあうと本気の関係が返ってきます。子どもたちの成長に代えがたい糧にもなるものです。つぎのような例があります。
 私が30歳くらいの頃、中学校2年生の担任になりました。
 そこにA子がいました。教師に対する暴言、授業エスケープ、いじめなど、あらゆることをして、1年生の2月から登校しなくなりました。
 家庭訪問すると、金髪で眉毛はなく「もう二度と来るな」と言われ、その後、何度、家庭訪問をしても「帰れ、帰れ」と罵声を浴びせられ顔を見ることはできませんでした。
 しかし、私はA子の姿がSOSを発信しているのだと受け取れました。人として無視できなかった。
 ある日、相変わらず家庭訪問していた私に、父親が
「先生、わが子のことは、そっとしておいてください。先生はまだお若く、経験もあまりおありでないようですから」
 私は、本音で次のように答えました。
「確かに、私は経験が少ないです。でも、それは関係ありません」
「A子さんは孤独なんです。荒れるからと、みんなが怖がって距離をとっているから、いつまでたっても孤独なんです」
「結果は、どうなるかわかりません。でも、今が最悪です。これ以上悪くなることはありません。どうか家庭訪問を続けさせてください」
 私の姿をじっと見つめていた母親は、
「お父さん、先生の言うとおりですよ。今まで何をしてもだめだったんだもの」
「先生に任せてみましょうよ。今より悪くなることはないんだから」
 父親は、そのとき初めて私に頭を下げて「先生にお任せします。よろしくお願いします」と言ってくださいました。
 その後も、しばらくの間、私の家庭訪問に荒れ狂うA子でした。
 A子に「もう来るな」と言われた私は「いいや、毎日来る」と言い放ち、A子に「絶対来るな」と言い返された私は、
「それでも、毎日来る、何と言われても来る、私はあなたから目を離しはしない」と叫んだとき、ようやくA子の罵声が止まりました。
 小さな間があって、A子は「・・・・・来るなよぉ」と小さな声で言いました。
 その後も、毎日、自宅へ帰る途中、A子の家に寄り、私はA子とだんだん関係を紡いでいきました。
 その後、A子が卒業してからも、ご両親は私に信頼と親愛の情を寄せてくれました。                                                                        
(堀川真理:1963年生まれ、新潟市公立中学校教師。学校心理士、カウンセラー。カウンセリング・ワークショップ「サイコドラマ新潟」主宰) 

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