学級経営で何より大切なのは「人を育てる」視点を教師がもつこと
マイナスからスタートすることもある学級に対して、教師はどのように1年間の見通しをもって臨めばよいのでしょうか。
私は、担任が自分の得意分野を生かした学級経営をしていくことが大切だと考えています。専門性をより発揮できる強みがあるからです。
そして、学級経営で何より大切なのは「子どもを育てる」のではなく、「人を育てる」視点を教師がもつことだと思っています。
担当した学年で学ぶべき知識や身につけるべき技能を教えることは、担任にとってもちろん大切なことです。 でも、それだけでは「子ども」を育てることに留まってしまいます。
本当に大切なのは、知識や技能の先にある「社会に必要な人」を育てる意識をもつことではないでしょうか。
公けの場ではよりよい社会を実現するため、さまざまな人と協力し合うことが求められます。
自分らしさを発揮し、望ましい社会を築き上げてこと。「大人になる」とは、それができる人になるということです。
私たち教師は、子どもの未来を見すえた意識をもつことが大切なのです。
「人を育てる」源になるのは、コミュニケーション力です。
そして、コミュニケーション力を支えるのが「言葉」の力です。
一人ひとりが豊かな言葉を獲得し、自分を表現する。
友だちとの学び合いを通してさまざまな意見や考えを知り、相手を理解する。
この積み重ねが自信をもたらし、自分と同じように相手の存在も大切に思う信頼感を育み、温かい学級を生み出していくことを、私は実践を通して確信しています。
具体的には、私は何よりも、子どもたちが自己肯定感をもてるようにすることから始めます。
子どもたちの「どうせ自分なんて」というマイナスの気持ちを「自分だからこそ」というプラスに転化していくのです。
大切なのは、子どもの行為を価値づけ(意味づけ)してほめることです。
例えば、話し手のほうに体を向けて、笑顔で聴いていた子どもに対して、聴く姿勢という行為に加え
「話し手が話しやすいように聴いていた〇〇さんは、思いやりがあふれ出ていますね」
と、行為の価値づけ(意味づけ)をしてほめるのです。
ほめられた本人も「思いやりをもって聴いていた」という意識がないので「えっ?」という表情になります。
この、小さな驚きは「自分がこんなことでほめられるなんて思わなかった」という喜びにつながっていきます。
価値づけ(意味づけ)をすることで、ほめられた本人はもちろん、他の子どもたちも「よいこと」の本質を学ぶことができます。
そうは言っても、問題を起こす子や目立たない子のよいところを探すのは難しいと思われる教師も多いでしょう。
そんなときは、子どもの非言語の部分も見てください。
例えば、目に見えやすい「話す」だけではなく、非言語の「聴く」ことにも注意を向ければ、子どもたちをほめる視点が増えてくるはずです。
もっと広く、話す、聴く行為だけでなく、話したり聴いたりする意欲や工夫、相手に対する思いやりも大切です。
このような視点を教師が持てば、学習や活動のほとんどの場面で、具体的に子どもをほめることができると思います。
まずは、教師が子ども一人ひとりとつながること。ていねいに張りめぐらされた糸は、後に織りなされる子どもたちの横糸の土台となるのです。
(菊池省三:1959年生まれ 福岡県北九州市公立小学校教師、2015年に退職。コミュニケーション教育を長年実践した。「プロフェッショナル-仕事の流儀(NHK)」などに出演、「 菊池道場」(主宰)を中心に全国で講演活動をしている。 北九州市すぐれた教育実践教員表彰、福岡県市民教育賞受賞)
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