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質の高い教材をつくるには、どのようにすればよいでしょうか

 私はセミナー「有田実践の継承と発展」(2015年)に参加した。
 その講座で、有田和正氏の仕事部屋の様子をDVDで見せてくださったのだ。非常に興味深かった。
 たくさんの本棚にはビッチリと本が詰められていた。それだけではない。無造作に本や資料が山積みされていた。驚くほどの本や資料の量である。仕事机の上の天井には地図まで貼ってある。
 新聞の切り抜きを毎日集めている映像もあった。
 なんの教材になるか、その時は分からない。気になった物は、あまり考えずに何でも集める。なんとなく面白いなあという「カン」が頼りだ。有田氏が嬉しそうに笑顔で語るので私も嬉しくなった。
 新聞などの切り抜きを集めたネタ帳の現物も初めて見た。一冊の厚さは10cm近く。しかも、使えるのは、その中で2つか3つだと言う。
 私も多くのネタ本を出版してきた。しかし、このDVDを見て、名人と凡人の差を嫌というほど思い知らされた。
 では、名人・有田氏と凡人・中村の差は何か? 圧倒的な情報「量」の差だ。
 私も一時期、ネタ帳を作ってネタを集めていたことがある。しかし、あれほどの「量」の本は読んでいない。新聞の切り抜きもしていない。
 あれだけ多くの情報から生み出されたネタだから、有田氏のネタは「質」が高いのだ。
「量」を求めることで「質」が上がるのだ。
 私が10から1つのネタを生み出しているとすれば、有田氏は100、いや1000から1つのネタを生み出している。10分の1のネタと1000分の1のネタでは「質」が違うのは当然だ。
 有田氏は、圧倒的な「量」を集めることで「質」の高いネタを開発していたのだ、と改めて思い知らされた。
 それにしても、昔の教育書は面白いなあ。私のような凡人が「普通の」学級づくりや授業づくりについて書く本とは明らかにレベルが違う。
 若手教師の修行も「質」を求めてもうまくいかない。
 例えば、1冊の教育書を精選して読むよりは、10冊の本を乱読した方が良い。
 若手教師は、そもそも、どの教育書が自分の役に立つかなんてわからない。10冊読めば、それらの本のどこかがヒットするだろう。
 そうやって、たくさんの「量」を読んでいけば、自分に必要な本が分かるはずだ。そうなってから「質」を求めればよい。
 とにかく「たくさん」の本を読み、「たくさん」のセミナーにでかける、「たくさん」の研究授業をする、「たくさん」の優れた授業を追試する、「たくさん」の学級通信を書く、「たくさん」の実践記録を書く。
 とにかく「たくさん」と「量」にこだわって修業をすることが大切だ。
「たくさん」していく中で、必ずポイントが見えるはずだ。そうすれば「質」も上がる。
 要領よく、なんて思わずに、要領悪く学ぶことが大切だ。無駄だったかな、なんてことが、結局後でものすごく役に立つことも多い。
(中村健一:1970年山口県生まれ、山口県岩国市立小学校教師。授業づくりネットワーク、お笑い教師同盟などに所属。笑いとフォローをいかした教育実践は各方面で高い評価を受けている。 また、若手教師を育てることに力を入れ講演も行っている)

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