私は様々な指導技術を身に付けてきた、その方法とは
私が本に書いているのは、目の前の子どもたちに試して、ヒットした実感のあるものだけである。
現場人である我々教師には、理屈は不要だ。
例えば、水泳指導である。25mを泳ぎ切った時の子どもの笑顔は最高だ。
しかし、私は若いとき、子どもを25m泳がせる指導技術をもっていなかった。
私は子どもの笑顔を見るのが大好きだ。だから教師になったと言ってよい。
しかし、子どもの笑顔を見たいのに見ることができない。こんなつらいことはない。
だから、一生懸命に勉強した。本屋に行って、水泳指導の本があれば、片っ端から買って読んだ。そして、本から学んだことを子どもたちに試した。
その方法を使って子どもが泳げるようになれば、その指導法を取り入れた。子どもが泳げるようにならなければ、その方法は使わなくなった。
我々教師にとって、目の前の子どもの事実が全てだからだ。
これをくり返すことで、私なりの水泳の指導法をつくりあげていった。
おかげで、毎年多くの子を、初めて25m泳ぐことが出来るようにし、多くの子どもたちの笑顔を見ることに成功している。
様々な本を読んでいると、それぞれに理屈が違っていることに気がついた。
私には、目の前の子どもの事実だけが頼りだった。
これは、水泳の指導だけに限らない。
若い私は、多くの本を読んだ。教育雑誌だけで毎月20誌以上を買っていたこともある。
それらの本から学んだことを、どんどん子どもたちに試した。
そして、効果のあった指導法を取り入れ、効果のなかった指導法を捨てていった。
私はこうやって様々な指導技術を身に付けてきたのだ。
ある若い教師から、こんな質問を受けた。
「授業に班学習を多く取り入れている。それなのに、班学習をすると、いつもパニックになる子どもがいる。どう対応すればよいか?」
私の答は、単純明快。「班学習をやめたらいい」である。
班学習をしたら、必ずパニックを起こす子どもがいるのである。目の前の子どもに合っていないのに班学習にこだわる理由が分からない。
私は、その子が良くなった方法を続けて使う。悪くなった方法は使うのを止めることにしている。
もちろん、そのためには「子どもを見る目」が必要なのは言うまでもない。
私にとって必要なのは理屈ではない。目の前の子どもたちの事実が全てなのだ。
私は目の前の子どもの事実からしか学ばない。それは若いころも、今も変わらない。
(中村健一:1970年山口県生まれ、山口県岩国市立小学校教師。授業づくりネットワーク、お笑い教師同盟などに所属。笑いとフォローをいかした教育実践は各方面で高い評価を受けている。 また、若手教師を育てることに力を入れ講演も行っている)
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