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保護者からの苦情対応の具体的なポイントとは

 あなたは保護者から、つぎのような脅しに似た文句を言われた経験はないだろうか。
「うちの子が言っていることが絶対正しい」
「担任を変えろ」
「子どものけがの治療代を払え」
「学校を訴える」
「慰謝料を払え」
「子どもに土下座をして謝れ」
「校長を出せ」
 そのとき、どんな対応をするのだろう。
 保護者の苦情を「聞くことすら嫌だ」と思う教師は多い。こうした教師の初期対応は、相手に対する思いやりがなく、自ら問題をこじらせてしまう。
 相手の言っていることが嫌だ、他の人に相談するのは恥ずかしいなどと考え、相手を押し返そうとする。
 それも態度や言葉による圧力で対抗する。その結果、保護者の逆鱗に触れてしまう。次には保護者は知識をつけて強硬な態度で対抗してくることになる。
 これらの教師は責められると弱い、対応能力が乏しい。そのくせ管理職に報告するときは、真実を曲げ自分を被害者にしたり、言葉の強弱のつけ方で自分を正当化するのがうまい。
 保護者からの苦情において、トラブルを未然に防ぐためには、まず教師の受け入れる姿勢を変えなければならない。
 教師が姿勢を変えることによって、多く問題の解決が図れる。
 管理職は、保護者からの苦情を最初に受ける教師に、対応の仕方を教えておくべきだ。
 つまり、保護者の話が無理だとわかっていても黙って聴くこと。自分では判断せず「ご提案はお預かりして、校長や教頭に相談してみます」と、その場では伝えることである。
 もちろん、実現は困難だとわかっているのだから、軽い予防線をはるようにする。例えば
「たいへん貴重なご提案をいただきありがとうございます。さっそく会議に諮れるように提案をしてみます。少しお時間をください。」
「しかし、会議で検討しても実現できるかどうかという問題も出ます。なぜなら、学校では年度当初に、〇〇という考えのもとで計画的に決定されていますから、変更はとてもむずかしいと思います」
「その点だけはご承知ください。でも貴重なご意見です。ありがとうございます」
というふうに。
 苦情対処のポイントは、言わずにいられない保護者の気持ちの「落としどころ」が見つかるかどうかである。
 苦情では、一つの問題に対して複数の回答を想定しておかねばならない。
 複数の回答を想定しておけば、その問題に当てはめて応用することができる。
 苦情対応の世界では、一度提案してもお客から拒否されることはいくらでもある。当然、次の手を考え準備しておく。
 それが拒否されたとしても、さらに次の手まで考えておけばよいだけのことだ。
 どんな説明で保護者を納得させるか、話術が必要となる。保護者に「仕方がない」と思わせる会話力だ。
 保護者に我を張らせない話術を持つことは大事である。
 我を張らせない話術には、先を読む推測力とそれを完成させる会話力が必要になる。
 つまり、会話で相手の心を和ませるのだから、相手の心理を読む冷静さと、会話の「間」のよさが求められる。
 保護者の顔色を見ながら笑顔で話し、保護者の顔が少しでもゆるんだ瞬間に
「〇〇くんは、おとなしいけど、芯が強いからなぁ。これからが楽しみだ」
などと、目をあわさずにつぶやく技を持てたらすばらしい。
 保護者は、教師の一言のつぶやきでほっとするのではないだろうか。親心とはそんなものである。
 苦情対応の世界では、問題解決のために、場の設定は絶対に欠くことのできない大道具である。
 保護者も、校長室の隣の応接室などへ通されたら、軽々しい発言はつつしみ、いい加減なことは言えないし、悪態もつけなくなるだろう。
 また、保護者が座ったら、まずお茶を出すべきである。出されるお茶の役割は一呼吸置いたり、目をそらしたりするのに最適な小道具なのである。
(関根眞一:1950年埼玉県生まれ、苦情・クレーム対応アドバイザー。百貨店に34年間在職し、お客様相談室長を経て、メデュケーション(株)代表取締役。新学校保護者関係研究会委員) 

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