教師は献身的で自分を追い込みがち、自分の健康と向き合うことも大切である
いくつもの学校を巡回相談していると実感するのですが、現在、医療機関に通院しながら仕事を頑張っている教師がたくさんいます。
また、その反対に、健康診断で疾患があると指摘されながらも、いまだに医療機関に診てもらっていない教師も相当数いるようです。
退職して2~3年内にお亡くなりになる教師の話を耳にする機会が多いものですから、心配ですね。
教育は、献身的に殉ずる姿勢があってこそ向上していくという側面があることは否定できません。
それだけに、教師にとって重要な特性である献身的に子どもを気づかう心、利他的な奉仕の精神が、バーンアウト(燃え尽き症候群)やうつ病のリスクを高める性格特性にもなっているのです。
私自身も、昔は教師の仮面を1日中かぶっていて「頑張ることが正しいことだ」と思い込んでいる人間でした。
子どもから信頼され、感謝される教師をめざして、毎日遅くまで子どもの教育に情熱を傾けていました。
いつの間にか、ハードルを勝手に高く設定し、自分で自分を追い込んでしまいました。
無理がたたったのでしょうか、30歳代半ばに、いわゆるパニック障害のような症状が出ました。
とにかく不安でしかたがない。車を運転していて渋滞で止まってしまうと、急に冷や汗が出て車外へ飛び出したくなることさえ、あったくらいです。
追い詰められた自分から脱出するには、いろいろな方法があると思いますが、私の場合には、現状について「しょうがない」と思うことで、脱出への糸口を見つけました。
私事で恐縮ですが、30歳代初めに命の危機に見舞われて
「どうして自分だけがこんな目に遭わなければならないのか」
「この先、どうやって生きていけばよいのだろうか」
と絶望のなかで必死にもがいている時期がありました。
そんな私を窮地から救いだしてくれたのは、恩師からの一言でした。
「人間には、自分の力や努力ではどうにもならないものがある」
「そんな時は、しょうがないと思うよりほか文字通り『しょうがない』」
と。
誰でもそうですが、病気を告知された当初は、個人差はあるにせよ、自分の状態について、頭(理屈)で理解できても、心(感情)が受け入れるには相当の時間がかかるものです。
しかし、一方で病気がありながら、病気になって良かったという人がいるのが不思議です。
多少時間を要しますが、病を受け止められるようになると、
「金儲けをしたい」「有名になって注目されたい」
等の雑念から解放され、自分が生きる意味を見出せた時、前を向いて再び進むことが出来るようになるのです。
その瞬間が「生き直す」スタートラインです。
誰かのために自分が役立っていることが、これからの生きるエネルギーになるのです。
「必ず、道はありますから」生かされていることに感謝です。
(土井一博:公立中学校教師を経て退職後、筑波大学大学院で健康教育学を学び、茨城県等でスクールカウンセラー歴任し、埼玉県川口市学校教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー。日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会理事長。専門は教職員のメンタルヘルス、学校健康心理学、教師教育)
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