学級でいじめを疑う状況があるとき、どう指導すればよいのでしょうか
集団生活にはトラブルはつきものです。
教師が頭ごなしに指導をしても、表面的に見えなくなるだけで、かえって潜在化し、陰湿で深刻になってしまい、いじめの特定も難しくなることがあります。
学級内のトラブルを深刻ないじめにならないようにし、成長の糧にすることが大切です。
日頃から、学級や部活動での子どもたちの人間関係や力関係を把握しましょう。
何かこそこそしていたり、教師が入って行くと、さっと雰囲気が変わったりするときは、あまり好ましい状態とは言えません。
授業中、特定の子どもの答に妙な反応が返ってくるときも要注意です。
いじめを疑う状態があれば、学級や部活動をしっかり観察することが必要です。
アンケートや子どもたちを観察するなど、早期発見に努めなければなりません。
担任だけでなく、養護教諭、専科や教科担任、部活動の指導者などから情報を集めるようにします。
被害者の生命にかかわる場合もあるので、迅速かつ正確な情報収集が欠かせません。
いじめ対応は早期発見が重要です。
いじめを発見した場合、重要なことは、的確に把握し、学校が一丸となって組織として指導態勢をつくり情報を共有します。
管理職や生徒指導主事への報告・連絡・相談体制を徹底し、いじめ解消のための具体的な方策を立てます。
被害者の保護を第一とし、本人や保護者からも事情を聴きます。
日頃からの信頼関係がないと、本当のことを話してもらえないことがあります。
確実な情報を把握せずに、安易に加害者を指導することは、加害者の心からの謝罪を引き出すことはできません。
大人の目に触れないところで、一層いじめがひどくなるなど、大きな失敗につながります。
いじめの構造を把握して、指導に役立てなければなりません。
いじめには、「加害者」「被害者」「はやしたてる観衆」「見て見ぬふりをする傍観者」の四重構造があります。
「被害者」から目を離さない指導体制を整備します。
登校から下校まで守り抜くという姿勢は、加害者ばかりでなく、傍観者にもいじめがどんなに卑劣な行為であるかを知らせることになるとともに、学校は必ず守ってくれるという信頼感を与えます。
「はやしたてる観衆」への指導がいじめ鎮静化の糸口になることもあります。
「傍観者」への働きかけも重要です。
いじめ「加害者」の心理は、ねたみ、以前の報復、支配したいという気持ち、遊び感覚、欲求不満のはけ口など様々です。
いじめを引き起こした「加害者」の心の中には、おさえきれない攻撃性が蓄積していることが多くあります。心理の把握に努めなければなりません。
親から暴力をふるわれていたり、家族間の葛藤があったり、その攻撃性や怒りを周囲のものにぶつけている場合が多い。
その子の切ない状況に寄り添いながら、その子がよりよく生きていくことを親身になって支えることにより、初めていじめが解消したといえます。
「加害者」に登下校中やネットなどこれ以上いじめをさせないためには、家庭や地域と密接に連携し、指導していくことが重要です。
警察の少年センター等との連携は加害者への抑止力になるとともに、家庭への指導も充実してくれます。
子どもたち一人ひとりの正義感が大切にされる温かな学級づくりがいじめ問題解決の最善策です。
(小澤美代子:さくら教育研究所長)
(美谷島正義:東京都公立中学校長)
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