« ルールに関する子どもの質問は個人的に回答せず、学級で確認することで指導に一貫性が生まれ、徹底できる | トップページ | どんなによい発問も、よい指示があって初めて意味を持つ »

荒れた生徒の保護者の事情を知ると、荒れた生徒が愛おしくなる

 荒れた生徒のことをよく知るには、その保護者のことも知ることである。わが子への願いは、どの保護者も同じです。
 保護者として、うまくいかない事情を知ると、荒れた生徒が愛おしくなります。
 私は校内暴力で荒れた時期に中学校の教師になりました。
 新任教師として荒れた生徒に出会った何年かは、荒れた生徒が憎くてたまりませんでした。
 授業よりも生徒指導が忙しく、
「こんな生徒がいては、まともに授業ができない」
「このような生徒がいなければ、どんなにか学校はよくなるだろう」
と思いました。
 十代の半ばにして、早くも人生を捨ててしまったかのような生徒たちと付き合うのは耐えられませんでした。
 新任教師で生徒指導を何も知らない私は、保護者の力を借りるしか頼るものがありませんでしたから、荒れた生徒の家庭訪問をよくしていました。
 回数を重ねるうちに、保護者の方から、家庭の事情や幼児期の子育てのことを語ってくれるようになりました。
 それは、私が育ってきた家庭環境とは違うが、どこか私の中学生時代と変わらぬ日常の一面が映し出されていました。
 それからでした。荒れた子どもたちが愛おしく思えるようになったのです。
 もし自分がこのような環境で育っていたら、間違いなく荒れただろうと思うと、荒れた生徒に責任はあるのだろうかと思うようになりました。
 幼児期から思春期の子どもたちには、無条件で愛してくれる、頼りになる保護者が必要です。
 この保護者がいるから、安心感が生まれ、ダメな自分をさらけ出しながら成長できるのです。不安がないから、家庭は一番居心地がいいのです。
 しかし、このような家庭で過ごせない子どもは「居場所」を家庭外に求めます。
 ですから、荒れた生徒に責任はありません。保護者に責任があるのかというと、必ずしもそうとは言えません。
 荒れた生徒の保護者の事情を知ることは、生徒指導には欠かせません。
「あの親の子どもだからダメだ」
「あの親ではどうしようもない」
などと、つい教師は思いがちですが、
「やむをえない事情でそうなってしまったのかもしれない」
という考え方をもち、粘り強く保護者との相談を繰り返してください。
(吉田 順:1950年生まれ 37年間横浜市立小・中学校に勤務した。担任32年、生徒指導部長16年、学年主任13年などを兼任した。生徒指導ネットワークを主宰。生徒指導コンサルタントとして全国の学校と関わる)

|

« ルールに関する子どもの質問は個人的に回答せず、学級で確認することで指導に一貫性が生まれ、徹底できる | トップページ | どんなによい発問も、よい指示があって初めて意味を持つ »

保護者の実態」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。