どんなによい発問も、よい指示があって初めて意味を持つ
ほとんどの教師は、発問したら「挙手、指名」という方法で授業を進めています。
私は、その授業展開には大きな問題があると主張してきました。
発問した後、教室を見渡すと、手を挙げた子は教師の視野にはいりますが、手を挙げない理解の及ばない子、戸惑っている子は相手にされないまま、授業が進んでしまいがちです。
発問した以上、クラス全員に「自分なりの解」をもたせ、答えさせなくてはなりません。
「この問いの答は、〇ですか、×ですか」
「4つの選択肢のうち、自分の考えに最も近いものはどれですか」
というふうに、問いを単純化します。
私が実践しているのは、まずノートに「解」を書かせてから、手を挙げさせる方法です。たとえば、
「兵十のせりふの『か』は、疑問ですか、それても詠嘆ですか」
と問いかけたら、続けて
「自分の考えをノートに書きなさい」と、指示を出します。
しばし時間をとり、ノートに書かせたうえで、
「疑問と書いた人は、手を挙げなさい」「詠嘆と書いた人は、手を挙げなさい」と、指示するのです。
この指示方式ならば、全員に判断が徹底し、子どもは必ずどちらか一方に手を挙げます。その結果、全員が発問に対する解をもち、全員が授業に参加するようになるのです。
ノートに書く内容は、子どもたち全員が迷わず取り組めるように、〇や×だったり、核心となる言葉だったり、基本的に単純なことにします。
そして「まだ書いてない人は手をあげなさい」「さっさと書きなさい」と、促します。自分の立ち位置が決まると、子どもたちは傍観者にとどまっていられなくなります。
「ぼくは〇と書いたけれど、隣の子は×だ。どちらが正しいのかな」というように、興味をかき立てられます。そこで「では、正解を言おう」と切り出すと、全員が引き込まれ、本気になって耳を傾けるのです。
「〇か×か」を書かせるだけの短時間の作業でも、立派なノート作業なのです。
発問し、ノート作業を指示したら、次は机間巡視をおこないます。
机間巡視の目的は、
1 言われた通りの作業をしているか確認をする
2 誰がどんな解を書いているか、どれくらいの子がどのような解を考えているか
3 誰の解と、誰の解を対立させ、討論させたらいいかを決めて、どんな順序に指名するかを計画します。
4 既定の方針通りの進行でいいか、修正したりする事項はないか、検討する。
5 個別指導をする。
机間巡視をスムーズに行うには、ノート作業を単純化することが必要です。
短い時間でクラス全体の傾向を把握するために、子どもたちには、ずばり一言で、核心を書かせます。
机間巡視を終えたら「〇と書いた人は手を挙げなさい」「×と書いた人は手を挙げなさい」と問いかけて、子どもたちの解が分かれていることを明らかにします。
立場の違いをきわだたせたら、次に討論に進めます。
単純なノート作業を起点として、価値ある討論を導き出し、理解を深めさせるのが、教師の力量です。
(野口芳宏:1936年生まれ、元千葉県公立小学校校長、植草学園大学名誉教授。千葉県教育委員会委員長職務代理者、日本教育技術学会理事・名誉会長、授業道場野口塾等主宰)
| 固定リンク
「授業の展開・演出」カテゴリの記事
- 授業で、子どもの「やる気が出ない」のは子どもの責任ではなく、教師の責任である(2020.09.29)
- 教師に不足する授業力と、子どもたちが意欲的に授業に参加する方法とは(2020.04.11)
- 教師は授業の「はじめ、中ごろ、終わり」は、どのように話せばよいか(2020.03.06)
- 授業に無関心な子どもを、どのようにすれば引きつけることができるか(2020.03.04)
- どんなによい発問も、よい指示があって初めて意味を持つ(2019.11.20)
コメント