保護者の怒りを誘発する教師や学校の対応とは
学校の危機管理の一つに保護者対応があります。学校側の対応が悪いと保護者は学校不信になります。
先日、ある小学校の教頭から私に連絡がありました。
用件は、小学校4年のBくんが不登校になってしまった。その原因は母親の話によると、養護教諭の何気ない一言や学校側の対応のまずさにあったということです。
学校と保護者の関係が最悪の状態になっているため、一度その保護者の話を聞いてもらえないだろうか、ということでした。
直接、教頭とお会いして詳細を聞きました。
健康診断をしている時、忙しくしている養護教諭がBくんに向って脅すような口調で、
「うるさくしているんじゃねえよ」
と言い放ったそうです。
それを聞いたBくんは、これがきっかけで養護教諭と顔を合わせるのも怖くなり、学校に登校しなくなったそうです。
心配になった保護者は学校に乗り込んできて、説明を求めましたが、その時の学校側の対応が不誠実で、かえって火に油を注ぐ結果になってしまい、それ以来、家庭と接触できない状態だそうです。
数日後、Bくんの母親と私は面談することになりました。
「学校側の対応で、どんな点が不本意だったのですか?」
と聞いてみると、
「自分たちの都合(言い訳)ばかり言っていて、お子さんの方に問題があるのでは、というように聞こえて仕方がなかった」
と興奮しながら話してくれました。
教頭は、保護者に誠意をもって対応したにもかかわらず、納得しなかったと話した。 しかし、私は保護者が納得していないので、教頭の話の聞き方に疑問に感じた。
私のような心理教育職の人間は、相手の話を聴くさいには、
相手の話が理不尽なものであったり、わがままな内容であったりしても、うなずいたり、あいづちを打ったりしながら、ひたすら最後まで話を聴きます。
この時、忍耐力が大事ですが、これがなかなか難しい。相手によっては一度で話し足りない人がいますので、二度三度と繰り返し話を聴く機会を設けます。
そうしているうちに、
「私の話をこれだけ聞いてくれたのだから、相手の話も聞こうかな」
というように変わってきます。
その時に初めてこちら側の思いをストレートに伝えるのです。
教師が話を聴く場合に問題なのは、相手の話を聴いている途中で
「しかし、お母さんね」
「おっしゃることはわかりますけど」
というように相手の話をさえぎって、自分たちの思いを先に伝えようとするから、うまくいかないのです。
相手としては、自分の話を最後まで聞いてもらったという感じがしないので、納得できないままで、誠意が伝わらないことが多いのです。
保護者との関係は「うまくいかないところからがスタート」です。
ふだん、何気なく使っている言葉でも、受け取る側によっては、思いもよらない誤解を招くことがあります。
カウンセラーの口数が多くないのは、自分がこれから相手に語りかける言葉が、相手にとってどのような受け取られ方をするか熟慮したうえで言葉を選びます。
外から見ていると口数が少なく、慎重に話しているように見えるかもしれません。
(土井一博:公立中学校教師を経て退職後、筑波大学大学院で健康教育学を学び、茨城県等でスクールカウンセラー歴任し、埼玉県川口市学校教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー。日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会理事長。専門は教職員のメンタルヘルス、学校健康心理学、教師教育)
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