子どもを育てるには、子どもにどのような対応をすればよいか
子どもと同じ速度で走ると子どもが見えてくる。
子どもの姿を見逃さないためには、子どもと同じ速度で隣を走らないと見えてこないものがあることを覚えておいてほしい。
時速60kmの速さで運転されている列車に子どもが乗っているとする。このとき子どもを見守るためには、親も同じ速さで並走しなければ、子どもの表情を確認することはできないのだ。
親はけっして止まらずに、あきらめずに、子どもにつかず離れず寄り添い続けるべきだ。
現代は、子どもの教育を学校に任せたり、塾に通わせていれば安心という親が増えている。お金と他人任せの子育てでは、いつか大きなしっぺ返しがくることを覚悟できているのだろうか。
ほめ言葉をかけられると、人は心を動かされる。
子どもたちが立ち直っていくのも、能力を発揮するのも、うまいほめ言葉がきっかけになる。
目と目をしっかり合わせて会話が成り立つようになったら、まずほめよう。美点の狩人になろう。
しかし、愛情の押し売りはいけない。わずかでも嫌がるようなそぶりが見られたら、それ以上は控えるほうがよい。
自分では愛だと思っていても、思い上がりであったりすると、子どもはその鋭い嗅覚で「こいつは口だけだ」と一気にさめてしまうからだ。
受け答えの構えがしっかりできている親に育てられた子どもは、知的能力をどんどん伸ばす。
そうでない親に育てられた子どもは、自己肯定心が成熟せず、自分の何を誰に必要とされているのか、何をなすべきなのかがわからず、自立心も自信もないまま、周りとも協調できずに孤立してしまう。
保護者のホールディング力こそ、教育の決め手であると言っても過言ではない。
たとえば、「雪ってなんで白いの」と子どもが質問してきたとき、「白いものは白いのよ」と答えにならないような返事をしてはいけない。
「ママ、忙しいのよ。あとにしてくれる?」これもいけない。頭ごなしの言葉は、意欲をそぐ。
「うーん、なんで白いのかなあ。難しいね。パパがよく知っているかもしれないから、今日のばんごはんのときに聞いてみようか」
このようなやりとりのできる母親ならば、たとえその場ですぐに解答を得られなくても、子どもは納得できる。
子どもが何かに心を動かされたときは、「本当。とってもきれいだね」としばし感動を共有してやることが大事である。
自分の気持ちを受けて、母親が一緒に感動してくれることが、子どもにとっては感性をグンと広げる大きなステップになる。
肯定的に受容してくれる母性が必須なのである。
初等教育は「励まし」が大事である。
「励ます」ことは、よい将来を期待して元気づけることである。だから、より力を伸ばそうとするなら、「君ならきっとできるよ。頑張ってね」という励ましが大事になる。
ほめてばかりだと、「ほめられたいからする」という事態にもなりかねない。初めから「ほめられること」をねらってすることは価値が低い。
小学校低学年では、「励まし」こそが大きく伸びるエネルギーになる。
「励まし」は、幼い子どもの可能性をみるみるひろげる。この頃は、自分の能力に限界をつくらないから、純粋に頑張ることができる。
もう少し上の年齢になってくると、「励まし」ばかり続けていても、自分の能力と照らし合わせて「これは無理だ」と簡単に限界を設定してしまうことがある。
その限界をつくらない子どもにするためにも、また、高い目標をいつもめざす子どもにするためにも、初等教育は「励ます」ことを、親も教師も忘れてはいけない。
とくに学校の教師は、子どもの不出来を家庭のせいにしないことである。
「本当にしつけがなってないなあ」と言う前に、「励ましで私が見違えるようにしてみせる」という教師としての自信と誇りを持ってほしい。
私は朝晩、短時間ながら、自分のあり方をふり返る時間を持つようにしている。
夜は入浴しながら、「今日はああすればよかったな」「これはまずかったな」という反省と、「今日も頑張った」「このやり方はよかったぞ」という自己肯定を欠かさない。
自分で自分をほめるのは、ある程度のうぬぼれと自己陶酔がないとやりにくい。これができるようになれば、心から自分を好きになれるし、自分を客観的に評価できるようになる。
「自分を癒すこと」は必須の行為である。幸せな人は、周りも幸せにできるものだ。
(濤川栄太 1943年~2009年、東京生まれ、横浜の小学校で19年間教育実践、カウンセリングを行い、横浜市の教育センターの研究室で終わる。独立して、カウンセリング、教育相談を中心に日本教育文化研究会を設立。講演も多いときは年間550回行う。作家。濤川平成塾塾長)
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