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初任者時代の失敗を生かし「保護者に安心感を持たせる」ようにすると保護者との関係が良くなった

 初任者時代、大学を出たての私には、何の自信もありませんでした。しかし、ベテラン教師のように保護者とつながりたいと焦り、ベテラン教師の真似をしていました。
 ところが、
私の思いと保護者の思いがすれ違っていました。
 自分がこんなに頑張っているのに、うまくいかないのは保護者のせいだという姿勢が、保護者にも透けて見えていたのではないでしょうか。
 保護者のアンケートに、次のような言葉がありました。
・先生との懇談は疲れます。
・先生が何を考えているのか、わかりません。
・先生が子どもを大切にしてくださっているのが、伝わってきません。
 私は保護者と距離をとろうとしているのに気づきました。
 保護者との関係の失敗が、私のよろいを脱がせ、今の自分のあり方である「保護者に安心感をもたせる」ことで、保護者との関係が良くなるきっかけをつくってくれたのだと思います。その方法とは、
1 懇談会も授業参観も保護者と楽しむ
(1)個別懇談会で「担任バカ」をアピールする
 懇談会や授業参観に来られる保護者は、仕事をやりくりしたり、家事の段取りを考えたりと、様々な準備をされています。
 それなのに、その労力に見合わないことをしていては「行く意味がない」という印象をもたれてしまいます。
 せっかく直接会ったり、一対一でお話もできるという信頼関係を構築するためのビッグチャンスです。
 わが子のことも担任のことも知ることができ、楽しく、安心できる機会にしなくてはいけません。
 そこで、私は保護者があきれるくらい、次のように大好きアピールをしようと方向転換しました。
 まずは保護者が教室に一歩踏み入れたとき、戸口で「お母さん、来てくださってありがとうございます」と先制攻撃します。「ありがとう」と言われて怒る人はいません。
 保護者が着席すると「私、本当に〇〇さんが大好きなんですよ」と親バカならぬ担任バカを発揮します。
 私は個別懇談会では、毎日撮りためた写真をパソコンに映し、一緒に鑑賞します。視覚情報は説得力があります。
 掃除時間のよさを画像や動画で見てもらうと「がんばっていますね、信じられない」との保護者の感想に共感すると、一気に気持ちがほぐれます。
 次の日、子どもに親とどんな話をしたか伝えます。懇談会で見つけた保護者のよさを子どもにも伝えます。子どもの口を通して保護者に伝えるほうが、説得力があります。
 担任が、子どものことを大好きでいてくれて、さらに保護者のことも認めてくれているという保護者の意識が、安心感へとつながります。
 保護者の自己肯定感は、ゆくゆくは子どもの自己肯定感にもつながります。
(2)授業参加は保護者を巻き込む
 授業参観は研究授業ではありません。担任と子どもたちが織りなす授業で保護者は安心感を引き出します。
 つまらない授業でやる気を奪われている子どもたちの姿を見て、保護者の安心感は生まれません。
 授業参観では、保護者はわが子が楽しく受けているか、やる気に満ちて参加しているかを判断しにやってきます。
 私は、子どもたちと日々の授業を楽しんでいる自信はあります。
 今は、授業参観中、私も保護者もずっと笑顔です。授業参観では子どもだけでなく、保護者も授業に巻き込んでいきます。
「はい、じゃ、〇〇さんのお父さんに当ててもらいましょう」
「では、正解を発表しましょうか、△△のお母さん」
 など、突然保護者にふることもあります。
 慌てふためく親を見て、子どもたちも保護者の皆さんも笑顔になります。笑いを共有すると一体感が生まれます。
2 学級を見える化する
 ほとんどの保護者は「わが子の学校での様子を知りたい」と思っています。
 学校でどんなことがあったか、友だちとうまくかかわっているのか、担任はどんな人柄なのかなどが見えていると、保護者と担任の信頼関係をつくる近道になります。
(1)教師と子どものやりとりを見える化する
 子ども宛ての「ひみつレター」を不定期に書いています。
 放課後、その日に見つけた素敵な行動を書いて、その子の机の中に忍ばせておきます。それが保護者の目にとまることで、わが子のよさを日頃からみてくれているという安心感につながります。
 こっそり相談したい事がある子どもは「あのねカード」に書いて「ポスト」と呼ばれる空き缶に入れます。その一つ一つに返事を書きます。
 ふだん、面と向かって話せない子どもとは、ここでつながりをつくっていけます。保護者の目にとまり、わが子の悩みに耳を傾ける担任を身近に感じてもらえます。
(2)授業を見える化する
 学級通信に算数の授業でのやりとりを書いてみました。すると、保護者から今までとは違う反応が返ってきました。
 それからは、学級通信に掲載して積極的に授業を見えるようしてきました。時には板書を載せて、どんな話し合いをしたのかを記事にしました。自分が話した言葉をそのまま載せたものもあります。
 こうすることで、ふだんの授業が保護者にも見えるようになり、担任の指導を理解するとともに、同じ言葉でお家でも子どもに教えてあげることができます。
 普段着の授業を学級通信で、多く公開していくことが、保護者の安心感にもつながります。
 保護者と一緒に懇談会や授業参観を楽しんだり、学級を見える化することは、担任としての自分を自己開示していくことなのかもしれません。
(北森 恵:富山県公立小学校教師)

 

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