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教材研究をしっかりおこなうと、子どもの誤解するところがわかり、どう発問すべきか明らかになる、どうすればできるようになるか

 教師が理想の状態を具体的に把握していると、子どもの不備や不足、不十分に気づき、授業において何を指導すべきか、指導するべきことを的確に発見することができます。
 教科における「理想の状態」は「正解」を指します。
 当然のことながら、教師は「3+7」の正解が「10」であると把握しています。
 それがなければ子どもを指導できません。
 教師が正解を知っているからこそ、子どもが「9」や「11」と答えたときに誤りであると指摘し、指導できるのです。
 例えば、読み取りにおける「理想状態」とは「読み取りの理想」を意味します。
 教師が素材研究をしっかり行い「読みの理想」を確立すれば、
「子どもにはここの論旨がわからないだろう」
「ここで誤解するのではないか」
 と、予測できるようになります。
 それは、子どもの読み取りが抱え込んでいる不備、不足、不十分と呼んでもいいし、子どもの中にある「読みの理想」との乖離と表現してもいいでしょう。
 それらを補うことによって、子どもの読みを理想に近づけることが指導であり、補うための具体的な項目が、指導事項に当たります。
 どこを指導すべきかが判断できたら「何をどう発問すべきか」というということも、おのずから明らかになり「なんとなくの発問」ではない、価値ある発問を創案できます。 
 読み取りにおいては、事実は一つでも解釈はさまざまです。解釈とは、作品の価値をどのように見出だすかということであり、人によって視点も深さも異なります。
 素材研究の力量は、教師がそれまでどれだけ多くの本を読み込んでいるかにかかわっています。
 私は千葉大学附属小学校に勤務していた20年間、毎月、保護者と文学読書会を開いていました。
 日本の名作や芥川賞を受賞した作品などを読み合いました。20年の間には、約200点の作品を読み込んだことになります。
 保護者の中には、ドイツやイタリア文学を専攻していた人もいて、作品解釈の実力を高めるうえで大いに参考になりました。
 文学について大人の人と論じ合うことを避けていては、本当の深みのある授業はできないかもしれません。
 残念なことに、ほとんどの教師は、教科書に掲載された作品を読むだけで、幅広く児童文学や一般の作品を読もうとはしていないようです。
 教師が自分の教師としての実力をつけるために、私は次の5つのステップをお勧めしています。
1 サークルに属すること
 多くの本を読むと決めても、一人ではなかなか理想どおりに進まないものです。メンバーとしての義務が生じますから易きに流れずにすみます。
2 出かけること
 会合に出かけて、新しい刺激に出会うことです。私はさまざまな会に属し多くの刺激を受けています。
3 問うこと
 発言したり質問したりすることです。働きかけないと傍観者にとどまってしまいます。
4 まとめること
 会で得た情報を、自分なりに整理することです。
5 発表すること
 新しい知見を、他の人にもわかってもらえるように表現することで、その情報が確実に身につきます。
 こういったサイクルによって、自ら自分を律せざるを得ない場に、自分を追い込むのです。とても有効です。
(野口芳宏:1936年生まれ、元千葉県公立小学校校長、植草学園大学名誉教授。千葉県教育委員会委員長職務代理者、日本教育技術学会理事・名誉会長、授業道場野口塾等主宰)

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