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子どもの心に響く対話は一対一で、覚醒剤をやめさせるには真剣に向き合うこと

子どもの心に響くためには、子どもの視線に合わせて、一対一でほめ言葉で接するようにする。
 上から目線に構えて説教しないこと、他人数の相手に話さないことである。多人数の相手に語りかけても何も伝わらないし、心にも響かない。
 荒れる学校現場で、騒いだり授業をさぼったりする常習犯の子どもが、隠れてタバコを吸っている現場を見つけたとする。
 そこで、「何してるんだ! 馬鹿野郎!」と怒鳴って、力ずくでタバコを取り上げるのはいけない。
「おお、こんなところでタバコか。もうちょっと考えろよなあ」
「最近はどうだ、楽しいことはあるか」
 と切り出し、あれこれ話を聞いた後で
「これは預かっておいていいな。体に悪いぞ」
と了解をとると、たいていの子どもは黙ってタバコを手放すものだ。
 覚醒剤のような常習性のあるものは、一斉にやめさせることはできない。なぜあんなものに子どもたちが魅入られるのか。
 家庭では「おまえのような子どもは産まなきゃよかった」と言われ、先生には白い目で見られ、友だちには無視され、なにもかもおもしろくない。
 そんなとき、覚醒剤は、快感を覚え一時的にでも彼らに嫌な現実を忘れさせてくれる。
 幻想の世界に心を遊ばせていなければ、心のバランスを保てない彼らの気持ちもわかるような気がした。
 このような生きる喜びを知らない子どもたちには、一人ひとりと真剣に向き合わないと、効果は絶対に表れない。
 ある子どもの例では、延々十時間、手を握って話し込んだ。
「いつでも君の味方になってあげたい。応援しているから、何かあったら相談に来てほしい」
 私は、人間というものはさまざまな不本意な思いを心に抱かえながら生きていかねばならぬこと。
 その中でよりよい生き方を、最後の死の瞬間まで求め抜いていくことの価値を訴えた。
 するとようやく「先生はとっても優しいんだね。わかった、もう明日からやめるよ」と約束してくれた。
 やはり子どもはいつも「ぬくもり」を求めているのだということが身にしみた。
 触れ合いたがっている子どもを拒絶すると、とんでもない方向へ曲がってしまうこともわかった。
 子どもにとって、自分が必要とされているという気持ちは、善悪を問わず、何ものにも代えられないものである。
 子どもを見守る親は、「あなたが大切だ」という心の抱擁を、ぜひとも忘れないでほしい。
(濤川栄太 1943年~2009年、東京生まれ、横浜の小学校で19年間教育実践、カウンセリングを行い、横浜市の教育センターの研究室で終わる。独立して、カウンセリング、教育相談を中心に日本教育文化研究会を設立。講演も多いときは年間550回行う。作家。濤川平成塾塾長)

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