« 子どもの心に届く、教師の話し方のポイントとは? | トップページ | リーダーはピンチになっても、常に前向きで明るくなくてはつとまらない、どうすればよいか »

問題行動をする子どもに注意しても聞かない、手に負えない子には、どう指導すれば変わるのでしょうか

 私たち大人は、子どもたちの言葉や行動といった、見えていることにとらわれやすい。
 問題行動は、いけないことで、早く改善しようと、善悪を教えて対処しようとする。
 だが、教えても変わらない子どももいる。
 そういう子は「言ってもきかない子」「手に負えない子」と、とらえて、どんどん大人と子ども両者がすれ違って、問題行動が悪化していく。
 通常のやり方で変わらない子は、大人の見方、やり方が合っていない、間違っているということである。
 大人が、その子の問題の本質を見抜けず、やり方の方向性を見誤っているのだ。
 その子の問題行動の意味がわかれば、対応も180度変わってくる。対応が変わると、子どもは、みるみる落ち着いていく。
 次のような事例について考えてみよう。
「何度注意しても聞いてくれなくて。もう、授業が成り立たなくなっているんです」
 小学2年のAくんの問題行動に、担任の教師は頭をかかえていた。
 授業中、落ち着かず、声を出すだけでなく、近くの席の子にちょっかい出してはケンカになる。
 注意しても聞くどころか、大声になったり、物を壊したりして、もっとひどくなるばかり。
 休み時間も、通りすがりにクラスの子を叩いたり、いやなことを言ったり、毎日トラブル続きで、子どもたちもいやがっていた。
 本の読み聞かせの時間も、じっとしていられず、うろうろして、奇声を発する。
「家庭でも注意されているみたいなんですが、一向に変わらなくて。他の保護者からも苦情が出始めていて、どうしたらいいんでしょうか」と、担任は、あらゆる手を尽くしたのに変わらない現状に限界を感じていた。
 事態が悪化する一途で、サポーターの私に依頼が来たのである。
 母親に「家庭での様子は、どうなんでしょう」と私が尋ねると、
「私は宿題につきっきりで『ここが違う』と、やり直させ、汚い文字も書き直させ、つい『バカ、何べん言ったらわかるの』と言ってしまうことがある」
「それでも、一年生の頃は文句も言わずにやっていたが、最近では『バカ』『うるさい』『だまれ』と互いに怒鳴り合うようになり、『こんな難しい宿題を出す先生が悪い』と、先生への不満につながっている」
「最近は『どうせ俺はダメなんだよ。俺なんかいなくなってもいいんだよ』と言うようになって」
 そう言って、お母さんは涙を流された。 
 暴言はそのまま教室でも使われ、友だちや教師を困惑させていた。
 家庭と学校で何度も同じ注意が繰り返される中、悪循環ができていた。
 その一方で、スキンシップを求めてくることも、家庭、学校とも共通していることがわかった。
 これらのことから、Aくん本人が、周囲に自分を受けとめてもらいたいと思っているが、それがうまくいかず、ジレンマの中で問題行動を強めているということが浮かび上がってきた。
 自分は自分でいいという基本的な安心感が乏しいうえに、人つき合いの言葉やルールが育っていないため、周囲から煙たがられることをして注意され、ますます自己イメージが悪くなっているのだ。
 私は、先生方、お母さんに新たな視点を共有することを提案した。
 それは、基本的な安心感と信頼感を育み、本人の自信をつけるという目標である。
 そのための方法として、私が家庭、学校ともに一つお願いしたのは、
「できていることに注目し、できていないことへの指摘、注意は最小限にとどめる」ということだった。
 家庭では宿題の間違いばかりが指摘され、がんばってできたという達成感がなく、いやになるばかりだ。
 間違いにつついては「これは?」とやんわり指摘するだけで十分である。できていることをほめることが大切である。
 できないことがわかるようになることが勉強になるんだという意味づけを与えることで、安心して間違えられる。
 学校でも、注意は、自傷他害の危険がある場合だけにし、その他の問題行動は無視する。
 良い行いのときは、その場面をとらえて、すぐにほめるようにしていただいた。
 母親も先生方も、非常に熱意を持って、私のアドバイスを実践してくれた。
 それから1カ月後、Aくんは別人のように落ち着いていいた。
 担任は「教室で目立たなくなった」と、お母さんは「学校が楽しいと言っています」と顔もすっかり明るくなった。
 Aくんに改善に必要だったのは、安心感と自己肯定感を取り戻すことだった。
 そのためには、まず母親が元気と安心を取り戻し、Aくんを余裕を持って受け止められるようになることが必要だった。
 また、先生方にも、何が起きているかを理解してもらい、Aくんが安心感や自己肯定感を取り戻せるように心がけてもらう必要があった。
 その場合に、有効だったのが、否定的な指導は最小限にして、肯定的な評価を増やすということだった。
「発達障害」という見立てでいくと、発達特性がこうなので、それを踏まえた対応が伝々ということになるのだが、実際には、そうした介入だけでは十分ではない。
 特に問題がこじれたケースでは、安心感や自己肯定感という部分で、深く傷ついており、その部分を回復する手だてが必要なのである。
(魚住絹代:1964年生まれ、大阪府教育委員会スクールソーシャルワーカー。1982年法務教官となり、以後、福岡、東京、京都の少年院に12年間勤務。非行少女の立ち直りに携わる。2000年に退官後は京都医療少年院で音楽療法の講師となるかたわら、2002年から、大阪府の公立小・中学校に、スクールサポーター、家庭教育サポーターとして勤務。子ども、家庭、教師の相談支援をしている)

|

« 子どもの心に届く、教師の話し方のポイントとは? | トップページ | リーダーはピンチになっても、常に前向きで明るくなくてはつとまらない、どうすればよいか »

問題行動の指導」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 子どもの心に届く、教師の話し方のポイントとは? | トップページ | リーダーはピンチになっても、常に前向きで明るくなくてはつとまらない、どうすればよいか »