深刻化するネットトラブルとは、学校としてどう対応すればよいか
ネットトラブルの背景には、
(1)お互いが顔を合わせなくとも交流できる
本来は相手の顔を見たら言えないことを書き込んだり、匿名だからバレないだろうとか、別人になりすましても大丈夫などの心理が働くことがあります。
(2)書き込んだ人の特定が難しい
掲示板やプログなどに書き込んだ人の特定が困難であることから、事実関係の把握を難しくしています。
(3)発信者と受信者が、相互にコミュニケーションができる
情報の発信と受信の両方が可能になり、見知らぬ人との送受信も可能となり、非行や被害が発生する要因の一つになっています。
インターネット接続が可能なスマートフォンが普及し、子どもが自室で深夜に利用することなどで、トラブルの発見が遅れる傾向があります。
ネット利用が低年齢層まで拡大し、トラブルが発生しています。たとえば、
メール・SNSで友人とけんか、他人の悪口や個人情報の書き込み、仲間外れ、ゲーム内でのトラブル、詐欺、迷惑メール、架空請求など
東京都のインターネットトラブル相談窓口での相談は
(1)架空請求
スマートフォンを利用してアダルトサイトに勝手に有料会員登録された。
(2)交際
ネットで知り合った相手に自撮り画像や個人情報を要求され渡してしまった。
(3)削除方法
SNS、掲示板、動画サイトなどの内容の削除
などが上位で、中学生(526件)、高校(455件)が多く、全体の87%を占めていました。
ネットトラブルが生じ、その結果として心身への影響や被害・加害の問題が発生しています。その現状を分野ごとに見ていくと、
(1)家庭
高額課金(ゲーム依存)、クレジットカード無断使用、ネットショッピングトラブル(詐欺)
(2)友人
スマホ・ケータイ依存、ネットいじめ(LINE外し、既読スルー、メール・プロフの悪用)、なりすまし投稿(誹謗中傷)など
(3)個人情報
個人情報の漏えい(氏名、住所、携帯番号、家族情報)、自撮り画像、性的脅迫、盗撮画像、SNS(なりすまし、誘い出し)
(4)有害情報との接触
薬物、暴力、危険物、アダルト、ギャンブルなど
(5)著作権侵害
動画、音楽など違法ダウンロード、肖像権、プライバシー侵害
(6)犯罪予告
などがみられます。
これらのトラブルが原因となって生じる問題として
(1)日常生活
睡眠不足、金銭浪費、遅刻、怠学
(2)感情コントロール、コミュニケーション能力の低下
(3)被害や加害の発生
いじめ、詐欺、性被害、盗撮など
ネットの加害者は悪意のもった者から、軽い気持ちによる者まで広範囲にわたる。
被害に遭った子どもは、自分が交流している相手を善意の人とうけとめ、悩みや相談ごとを繰り返し行うため、悪意を持った相手にとっては格好の標的となる危険があります。
学校に求められる取り組みとしては、子どものネット利用の実態について継続的にアンケートを実施し、その結果を学級だよりなど家庭向け情報発信や定期的な家庭向け・教員向け研修会の開催、学校でのネットにかかわる取り組み方針(ガイドライン)の策定などがあげられます。
また、危機管理の観点からトラブル発生時には、警察をはじめとした関係機関への相談をためらわない姿勢が求められます。
問題が進展すると解決策が限定的になり、書き込まれた情報が瞬時に拡散してしまい、取り返しがつかなくなることにも注意を要します。
トラブルの背景の一つには、見えない相手とのコミュニケーションの問題があります。
トラブルを乗り越えるには、日常での「対面コミュニケーションスキル」が必要で、そのためには子ども同士の「人間関係づくり」に視点をおきながらスキルの向上を図ることがボイントになると言えます。
(石橋昭良:元警視庁少年育成課副参事、文教大学教授。臨床心理士)
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