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親がわが子を勉強好きにし、学力を身につけさせたいと願うとき、どのように働きかければよいか

 私の実感では、子どもたちの勉強や学力における家庭の影響は圧倒的である。
 勉強や学力の樹の根っこを育んでいく最初の場が家庭だからである。
 したがって、子どもたちに勉強する習慣や学力を身につけさせたいと願うなら、まず家庭教育を点検しなければならない。
 家庭が、子どもたちの学習活動を促進し、着実な学習態度を育成するような環境になっているかどうかということである。
 その際に強調しておきたいのは、親の意図的な働きかけを通じてというよりも、ある環境のなかで子どもが「自ずと」学びとっていくという性格がつよいもの、ということである。
 たとえば、伝統芸能の世界では、師匠である親が「やれ! なれ」と言うからでは決してない。
 家のなかや周囲の環境全体が子どもを跡取りにしようという形になっており、そのなかで本人が時間をかけて必要な能力や意志を育んでいくからである。
 子どもは、親が「言ったように」ではなく「したよう」になっていくものである。
 私は、勉強や学力形成についても、基本的に次のように同じことが言えると思う。
(1)子どもが家で勉強できるような環境をつくっておかなければならない。
 たとえば、家に帰ったら一日中テレビがついているような家庭では、子どもは落ち着いて宿題などができるわけがない。
 一日一時間は机につく、その間はテレビを消しておくといった環境づくりを、親は心がけなければならない。
(2)親が自分の勉強をする姿を子どもに見せるというのも効果的だろう。
 本を読むことでもよいし、趣味に打ち込むことでもいい。
「お父さん、お母さんは、一生懸命やっている!」という感覚を子どもに持たせることが重要である。
 子どもが、そうした周囲の大人の姿を見て、それを真似ようとする過程を通じて、子どもたちは学習しようと方向付ける性向を自分の体のなかに形成していくのである。
(3)親が子どもと「一緒に勉強する」という機会をつくることができれば、よりよいであろう。
 たとえば、学校の宿題を一緒にすることなどは比較的簡単に実行できる。小学校の三・四年ぐらいまでであれば可能である。
 子どもの勉強を一緒に見てやり、ともに喜んだり楽しんだりすることができる親の存在は、子どもの、学習に対する動機づけを大いに高め、学力形成に積極的なインパクトを与えることができるだろう。
(4)基本的生活習慣を整える
 「朝ご飯をしっかりと食べれば、学力がアップする」ということが言われているが、私たちの調査からも、ある程度うらづけられる。
 その他にも、朝決まった時間に起きる、テレビやゲームをする時間を範囲内におさめる、宿題をやる、翌日の学校の準備をしておく、などができている子の学力は統計的に高くなっている。
 ポイントは、生活のさまざまなことを自分で律することができているかどうかである。
(5)親子の言葉のコミュニケーションをできるかぎり密に行う工夫をする
 テレビ番組や、本の内容、学校であったことの会話を頻繁に持ちたい。
 子どもを叱るときも、申し開きの機会を与え、親が叱る理由を子どもに納得させるようにしたい。
 子どもが、自分の気持ちを的確に伝えることもできるし、相手の行動や意見を適切に理解することができるという感覚を持つようになれば、しめたものである。
(6)文字との接触の機会をたくさん持たせる
 学校は文字文化が支配する場所であり、勉強の基礎に「読み書き」がある。
 本好きな子どもに育てることができれば、勝負は決まったようなものである。
 折を見て、一緒に絵本や本を読んであげたい。一緒に宿題をしてやることも有効である。
 親が「勉強しなさい」と繰り返すだけでは絶対ダメである。それは、子どもの反発心を招いて、かえって逆効果になることの方が多いだろう。
(志水宏吉:1959年兵庫県生まれ、大阪大学人間科学研究科教授。専門は教育社会学・学校臨床学)

 

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