教師をギャフンといわせたいクレーマーには、どう対応すればよいか
教師を打ち負かすことで、自らの存在を証明したいという欲求を持っている保護者がいます。
「何か教師や学校に落ち度はないか」と、攻撃の機会をねらっているのです。
やっかいなのは、その計画性としたたかさです。よく周囲の様子を観察したり、自分に絶対的な分があるとき、怒涛の攻めをしてくるのです。
自らの優位性を示すために準備をしてくるからこそ、対応が難しいといえるでしょう。
現在、圧倒的に増えているのがこのタイプです。
教師が対応に苦慮したり、苦痛に顔をゆがめたりする様子を見て、自己肯定感を持つのです。「間違った相手を退治してやった」くらいの感覚です。
「うちの担任ったら、こんな対応をしたのよ。信じられる。まあ、ガツンと言っておいたから、みんなも気をつけてね」
などという調子です。
以前、教師の心の傷の程度を調べたことがあります。(神奈川県小学校教師524人)
「とても傷つく」という割合が多かったのもこのタイプです。
「精神的にまいってしまい気分が晴れない」と訴える回答もありました。
弱みを見せれば増長し、強く出ればそれを逆手に被害を受けたと訴えてくる場合もあります。
クレームの内容も絶対的な答えが存在しない問題であることが多い。どうすればよいのでしょうか。
たとえば、何かその子が問題を起こしたとき、厳しく注意することがあったとします。
保護者「うちの子が悪いことをしたのは分かりますが、注意するにしても、もう少し言葉を選ぶことはできなかったのですか」
教師「悪口がひどかったものですから、今後のことも考えてしっかり指導していくことが大切だと考えました」
保護者「他の言い方はなかったんですか。あれじゃ、先生がうちの子に悪口を言っているようなものです。うちの子に謝罪してください」
言い過ぎかどうかは、個人の感覚によるもので、絶対的な答えはありません。言った者が勝ちなのです。このような保護者に対する対応術は、
「問題の本質に目をむけさせ、一人では対応せず、保護者自らが線引きしたと錯覚させる」ようにします。
話し合いは、ここは譲れる、ここは譲れないといった線引きが必要です。
そこで、あたかも保護者自身が線引きしたかのような錯覚をさせるのです。
教師「そもそも問題の根本は何でしょう?」と、反対に問いかけるのです。ここから先は教師に主導権が移るのです。
主任教師「担任に後で私の方から言っておきます。ここで重要なのは、なぜ子ども同士のもめ事になったのかどうかです。お母さん、思い当たることはありますか?」
主任教師「どうすれば改善できるとお考えですか?」
保護者「私たち大人の姿勢が大切なのではないでしょうか」
教師が言いたいことを保護者に言わせるのです。
保護者は自ら口にした線引きは守らなければならず、それ以上教師に悪態をつくことは遠慮するはずです。
(齋藤 浩:神奈川県公立小学校教師。日本国語教育学会員、保護者対応に詳しい)
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