「もしかしたら、いじめかもしれない」と、とらえ観察することがいじめの早期発見と解決につながる
中学校1年生女子のいじめ対応が成功した事例を考えて見ます。
状況はつぎのようでした。
中学校入学直後の校外宿泊学習の際の様子がおかしいと思っていた担任が、何気なく読んだ掃除日誌に「私を汚いというし、一人で掃除をして悲しかった」と書いてあるのを見つけ、その女子生徒を呼び出して面談をしました。
すると、同じ小学校からきた女子生徒二人からいじめられていることを語った。
真面目でおとなしいこの女子生徒は、小学校3,4年で同じクラスだった加害女子生徒とは仲良しグループであった。
ところが、この女子生徒のみ中学受験を志していて、成績も良く、学級委員やクラス代表になるなど、クラスの人気者だった。
先生方からも一目置かれ、この頃から加害女子生徒2名からの嫌がらせが始まったらしい。
笑い方がおかしいと真似されたり、ノートを破かれたり、靴の中に虫の死骸を入れられたりした。
被害生徒は家族と担任に相談したところ「優秀だし、大丈夫でしょう」と言われ、具体的な対応はしてもらえなかった。
そのうえ、チクったと、ますますいじめがひどくなり、大人に話したことを後悔した。
中学受験に失敗して打ちのめされたうえ、加害者生徒のうち1名と公立中学の同じクラスになってしまった。
その子のクラスにもう1名がしょっちゅう遊びに来ては、嫌がらせが繰り広げられた。絶望的な気持ちのなか、なんとなく掃除日誌に書いたらしい。
いじめにどのように対処すればよいでしょうか。自分ならどのようにアプローチするかを考えてみましょう。自分の考えをまとめたら、次に読み進んでください。
担任は被害生徒に、保護者から話を聞くこと、学年の教師とスクールカウンセラーが情報を共有すること、守秘義務を約束することを話し、了承を得た。
被害生徒の保護者に来校してもらい、担任がいじめの経緯を聴いた。事実関係を学年の教師に伝えた。
学年の教師が観察したところ、たしかに加害生徒2名が被害生徒のクラスにいるところを見かけ、悪口を言っている場面に遭遇したので、口頭で注意をした。
その後、加害生徒2名を呼び出し、担任がいじめの話をした。
加害生徒は、被害生徒は頭が良く、人気があるのでムカついて意地悪をしたなど、事実は認めたが、やめてとは言わないので、悩んでいないはずだと語った。
担任とスクールカウンセラーが、加害生徒を呼んで、被害生徒の気持ちを代弁し、他者の気持ちを想像することや、コミュニケーションの持ち方など、加害生徒たちに考えさせる機会を数回持った。
被害生徒には、今回話してくれたのが良かったことを伝え、継続的に面接を行った。
そのうち、被害生徒はクラスの子どもたちとも話すようになり、また教師たちと話すうちに、この中学が好きになり始め、登校するのが楽しくなってきた。
加害生徒たちも、教師と話す機会を持ち、自分たちの良い部分を認めてもらえていることも感じるうちに、被害生徒への嫌がらせは消失した。
(原田眞理:玉川大学教授。専門は臨床心理学、精神分析)
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