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学級崩壊になったクラスを何回か任されて分かった学級が崩れる要因と、対応の「ツボ」とは

 私は何回か学級崩壊に陥ってしまったクラスを任されたことがある。
 そこで、子どもたちと格闘しながら分かったことがある。
 それは、次のような、「学級が崩れやすくなる時や要因がある」(難所がある)ということ。そして、それに対応するさいの「つぼ」があるということである。
1 学級が崩れやすくなる時や要因がある」(難所がある)
(1) クラスの子どもに問題がある
 クラスの子どもの側に問題がある場合は次の二つのパターンがある。
(イ)暴れん坊の子どもが数人いるとき
 力量のある教師でも学級経営が難しくなる。原因となる子が明らかな場合は急所がはっきりしているので、その子に何らかの手を打てばよいのである。
(ロ)原因となる子どもがはっきりせず、どうしてあの子がと思われる子まで荒れてしまう場合
 この場合は簡単にいかない。原因が何か、一つ一つ解明する必要があり、急所はつかみづらい。
(2) 担任が原因となる
 担任が原因となる場合も少なくない。
 担任が難所の原因である場合は、担任する学級が毎年同じようなトラブルが起きているはずである。
 そこを分析すれば「急所」は明らかになる。
(3) 保護者が遠因となる
 学級崩壊の遠因となるのは保護者である。
 担任にとって一番の味方にもなり、敵にもなるのが保護者である。
 是非とも味方にして共通の歩調で課題にあたりたい。
2 学級崩壊に対応するさいの「つぼ」
 学級崩壊を攻略するためには、子どもの思考に沿った対応が必要になる。
 子どもの思考は柔軟で、あらゆる方向に向かっていくが、その方向の幅を決めなくてはならない。
「だめなことはだめ」と、きっちり教え、その後に自主的な活動を促すようにすることが肝心である。
 攻略の手順は
(1)「押しつけ」は「しつけ」の第一歩
 子どもは時には残酷である。
「絶対に許されないこと」(安全や人権)は初めにしっかりと示すことが大切である。
 これは納得させるものではない。「だめなものはだめ」と問答無用でしっかり押し付けるのである。
(2)子どもの声に耳を傾ける
「だめなものはだめ」としっかり押し付けて子どもに「これはまずい」ということを分からせたら、次はじっくり子どもの言い分に耳を傾けよう。
 問題を起こす当事者は「子ども」である。当事者の意見が一番重視されるはずである。
 どんなに一方的なトラブルがあったとしてもきちんと話を聞くということ。これは「急所」である。
(3)子どもを信じて任せる
 トラブルをそのまま放置してしまったらとんでもない結果となる。
 しかし、真の問題解決は、子どもたちが自分たちの力でやるしかない。
 教師は、手助けができるだけである。
 しっかり押し付けるべきものを押し付け、子どもの話をじっくり聞いたうえで解決する方法を考えたら、後は子どもを信じて任せるべきである。
 もちろん、任せっぱなしではなく、要所、要所での指導は必要である。
 学級崩壊の対応例を次に示します。
 私は2学期から、いわゆる学級崩壊をした6年生の学級を受け持ちました。
 私は、子どもと接するときに最も大切にしてきたことは、丸ごと受け入れ、何がしたいか引き出すことです。
 まず子どもたが何をしたいのか、その声に耳を傾けました。しかし、子どもたちの目線はバラバラで宙をさまよっていた。
 そこで、毎日1時間、授業時間に机を教室の後ろに寄せて車座になり、どんな学級にしたいかを話し合わせました。
 子どもが何を考えているのかを引き出し、自分に何が出来るのかを探ろうとしたのです。
 子どもたちは、 始めは「協力する」「仲良くする」と表面的な言葉ばかり言いました。
 私は「本当にそう思っているのか」と何度も問い返すと、次第に思いを口にしていきました。
 最終的に学級のめざす姿を決めることになり、「チャーハン」と「ミックスジュース」のどちらかを、学級の目指す姿に決めることになりました。
 それぞれへの支持が拮抗する中、ある子が「チャーハンは元の材料がよく分かる。でも、ミックスジュースは元が何か分からないから嫌だな」と発言。途端に、満場一致で「チャーハン」に決まったのです。
 話し合いを重ねるうちに、学級が更に一体感を持つようになりました。
「チャーハン」という目標から「集まろう、一粒、一粒おいしいクラス」とキャッチフレーズが決まり、授業にも落ち着いて取り組むようになりました。
 子どもたちはやりたいことがわからない苛立ちを発散させていたのだろうと思います。
 子どもに寄り添い、何をしたいのかを引き出し、その実現を支えることが教師の役割なのだなと、改めて感じました。
 生身の子どもたちが何十人も集まる学級である。子どもにとっては実社会そのものなのだ。
 学級は、何事もなく一年が過ぎるはずがない。難所があって当然なのである。
 要はその難所とどう向き合い、どう対応するかである。
 難所は子どもたちにとっては「最も踏ん張らなくてはならないところ」、「最も教師を必要としているところ」なのだ。そこを学級経営に生かさぬ手はない。
 子どもを導く者の第一は教師である。教師が正しく難所を認識し、急所を適切につかんで対応すればほぼ9割方解決することができるはずである。
 難所はどのクラスにも確実にある。そしてその難所は学級が飛躍する大きなチャンスにもなるのである。
(今村信哉:埼玉県さいたま市立小学校長、教育委員会課長を経て共栄大学客員教授)

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