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学力向上の秘けつとはなにか

 広島県尾道市立土堂小学校は、2003年4月に新しい校長先生を迎えました。
 陰山英男さんです。陰山さんは、以前勤めていた兵庫県朝来町立山口小学校で子どもたちの学力向上を成し遂げ、全国の親や教師から注目を集めた先生です。
 陰山先生の実践の要は、学習の基礎・基本となる「読み書き計算」の徹底反復。
 特に計算練習として全国で行われている「百ます計算」(岸本裕史氏が考案)は、陰山先生の実践をきっかけに一躍有名になりました。
 そして、校長となった土堂小学校でも、陰山校長は「基礎・基本の徹底反復」をカリキュラムに取り入れました。
「モジュール・タイム」は、週に3時間、基礎・基本の反復練習を集中して行う授業です。
 この授業の導入から1年、土堂小学校の子どもたちは、ぐんぐん力を伸ばしています。
 多くの学校で活用されている標準学力テストの結果が、これまでにない伸びを見せました。
 土堂小学校名物「モジュール・タイム」のスピード感いっぱいの授業を紹介します。
 まず訪れたのは1年生の教室。大きな声で「あえいうえおあお!」と、発声練習から始まりました。
 土堂小学校では「授業中は大きな声で話す」ことを大切にしています。
 発声練習は、恥ずかしがらず大きな声ではっきりと話すための練習です。
 他にも「百珠」による数の基本の確認や、カードをつかった暗算、百ます計算の入門編として行われる「十ます計算」など、次々に移り変わるメニューを元気にこなしていく1年生の集中力には驚かされます。
 5年生の授業では、漢字練習、文学作品の暗唱、「百ます計算」、「百割り」などを紹介します。
 圧巻は「百割り」。これは計算練習の一つで、B4のプリントいっぱいに並んだ割り算100問をタイム計測しながら行います。
 余りが出る面倒な割り算100問をクラス全員が3分以内で解いてしまいます。
 子どもたちの様子は、ゲームでもしているように楽しげです。とても計算練習に取り組んでいるとは思えませんでした。
 こうした基礎・基本の反復練習は、子どもたちの集中力や記憶力、そして何より学ぶ意欲を育てます。
 計算時間が日に日に短くなったり、昨日できなかった問題が今日は出来るようになったり、そうした小さな達成感を積み重ねることで、子どもたちは「やればできる」ことを学ぶのです。
 小学生のうちにたくさんの達成感を味わうことが、人生に負けない自信を育てるのだと、陰山校長は考えています。
 学力向上を目指し陰山校長が行ったもう一つの取り組み、それは子どもたちの「生活改善」です。キャッチフレーズは「早寝、早起き、朝ご飯」。
 各家庭の協力のもと、子どもたちの生活を徹底的に見直しました。学力向上にはその土台となる健康が欠かせないという考えからです。
 その際、子どもたちの生活を知るため役立てたのが「生活改善アンケート」です。
 このアンケートは年1回、全校で一斉に行われます。
「寝る時間は何時か?」「起きる時間は?」
「朝ご飯は何をたべたか?」「朝うんちは出たか?」
「夕飯は誰と食べたか?」「家族と話す時間はあるか?」
 など、子どもたちの生活を細かく調査します。
 今では、土堂小学校の子どもたちのほとんどが、朝7時前に起き、朝ご飯をきちんと食べて学校に来るようになりました。
 こうした変化は、保護者を始め、地域の大人たちの協力があってこそ。
 学力向上は、学校を中心とした地域ぐるみの取り組みなのです。
「子どもが、伸びることに病みつきになって、ここまできた」と語る陰山校長。
 校長の意図をくみ取り、真摯に授業に取り組む先生たち。
 他の学校ではなかなか見ることのできない、活気あふれる授業となっています。
 学力とは「脳の元気」です。
 一定時間にどれだけの情報をより的確に処理できるか。そのために効果的なのは百ます計算に代表される読み書き計算の反復練習です。
 反復練習で脳の神経が太くなり、一つの課題に対して多様な判断ができ、的確な判断ができるようになります。
 今の教育は、基礎ができていないのに、応用力を身につけさせようとしており、うまく機能していないと思われます。
 教育を難しくしているのは、誰も現場をよく知らない。教師に求められる課題が多すぎる。地域が教師を立てない、教師を誇りに思っていないことなどです。
(陰山英男1958年生まれ、元兵庫県公立小学校教師、広島県公立小学校長を経て、立命館小学校副校長、立命館大学教育開発推進機構教授。元大阪府教育委員会委員長)

 

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