新任教師が教室での戸惑いやショックを乗り越えるには、どのようにすればよいか
新任教師は、これまで学び手として経験している教室の風景と、教える側として経験する教室の風景は全く違っていることに戸惑います。
子どもたちのさまざまな学びの要求が渦巻く教室で、すべての学び手に配慮し、各々の学びを高めていくということは、決してたやすいことではありません。
さらに、新任教師がこれまで育ってきた文化と、子どもたちが今生きている文化の間には、世代的にも、ギャップがあります。
それをすり合わせながら、学びの空間をつくっていくことが教師には求められます。
教師は異文化の子どもたちからショックを受け、教師は自らの世界を広げることが必要なのです。
このことは、ひとつの危機であるとともに、教師になるための必要な最初のイニシエーション(通過儀礼)であるともいえます。
このショックを乗り越える方法は、2通りあるように思われます。
1つの道は、新任特有の親しみやすさを大切にして、たとえ拙くても、目の前の子どもたちと格闘しながら、ともに歩む道です。
そして、先達の教師たちの励ましの中で、これまでの子どもについての見方、教師の役割についてのとらえ方を見直しながら、自らを育てていくあり方です。
そして、もう1つの道は、子どもたちにナメられないよう、主観的に教師らしくふるまい、自分の、子どもについての見方、教師の役割のとらえ方に固執するあり方です。
このように、子どもたちや年輩の教師たちから学ぶ回路を閉ざしてしまうと、成長の機会を自ら失うことにもなりかねません。
つまり、主観的に教師らしくふるまうことが、子どもたちからの信頼を得られる「本当の教師らしさ」を育てることを妨げるというパラドックスが生まれるのです。
教師が自分の授業を確立し、常識より一段深い子どもの見方を身につけるには、多くの場合、15年から20年の歳月が必要です。
その間、量的な積み重ねだけでなく、質的なものの見方が変わることもまた求められます。
自分の授業を確立して、教育実践記録を綴っている教師たちの多くは、新任期から数多くの試行錯誤と格闘の経験をもっています。
新任期は、ショックという危機への対応をめぐって教職生活のひとつのターニング・ポイントを形成しています。
新任期における、教師の仕事、教師の役割のとらえ方の深さが、この後の教師としての成長の可能性を大きく規定しているように思われます。
(秋田喜代美 :1951年生まれ、東京大学教授。世界授業研究学会(WALS)副会長。内閣府子ども子育て会議会長)
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