一斉授業から「学び合う学び」の授業に変えるには、どのような段階があるのでしょうか
「聴き合う関わり」から「学び合う関わり」へ、そして「協同の学び」への筋道を獲得することによって教師は「一斉授業」の呪縛から自らを解放し「協同的な学び」を創造することができる。
大切なのは教師の「聴く心」である。一斉授業からグループの協同的な学びへの変換を行い、教師は「教える人」というよりも学びの「デザイナー」になるべきである。
学び合う学びへの段階は、次のような4段階が考えられる。
1 第一段階:「聴く意欲を作る」、「安心して話せる雰囲気作り」
1) 聴く意欲を作る
「教師が魅力的な語りをすること」で、子どもが聴くことは楽しいと実感する。
「教師が、まず聴き方の見本を示す」ことで、子どもの聴く態度を育てる。
子どもの聴く態度のよいところを褒める。
子どもが話を聴くことによって,自分がのびることを実感するようになる。
2) 安心して話せる雰囲気作り
話せる子と話せない子を把握する。
答えやすい発問にする。例えば、目の前の子どもにあった発問、育ちに合わせた発問にし、答えやすい発問にすることで,子どもたちに話す気持ちがわいてくる。
2 第二段階:「聴き方を磨く」、「話す意欲と話し方を高める」
1) 聴き方を磨く
(1) 何かを発見する聴き方をする
例えば、自分の考えと似ている「共感する」、自分の考えと違う「比較する」
(2) 顔が見える机の並び方をする
例えば、机を「コの字型」にする。
なぜコの字型にするのか,子どもたちと話し合って考える。
前向き,班の形など状況によって机の配置を使い分ける。
(3) 反応をしながら聴く
まずは,教師がうなずくなどの見本を見せる。
反応しながら聴いている子を褒める。
2) 話す意欲と話し方を高める
1) どの子も話す
思ったことや感想の発表など,どの子も話せる内容で話をする。
2) 不必要な学習話型は使わない
「いいですか」「どうですか」など,最初は使ってもだんだんと減らしていく。
3) 自分の言葉で相手に分かる話し方をする
一言発言や,オウム返しから,自分の言葉で語れるようにする。
3 第3段階:「子どもの考えから出発する授業」
1) 聴き手に向かって話をする話し方に
誰に向かって語るのかを考える。
教師の机を子ども用の机にして,子どもと一緒の目線に降りる。
2) 個人学習の取り組みをする
自分の力で読めるように,学び方を教える。
自分の読みを,ノートに書けるようにする。
書いたことの発表会にならないようにする。
3) 連続発言
子ども同士で発言をつなぐ意識を持つ。
前の人の話につなげて発言する意識を持つ。
教師が話すのではなく,子どもが話すことを重視する。
子どもが話せることを,教師も,子どもも実感する。
4 第4段階:「話題からそれない話し合い」
かかわり合って発言できる。
1) 仲間発言
共感する。
2) 対立発言
比較する。小さな違いから学ぶ。
3) 応援発言
付け足し。手助け。
授業づくりは、「仮説検証型」ではない。「反省的実践」を繰り返しながら、その豊かさを実現していきたい。
協同的な学び(グループでの学び合う学び)を可能にする条件は、
1 何を追求するかという「課題」が明確になっていること。
2 グループでの学び合いに至る経過に必然性があること
3 子どもの考えから出発すること
4 子どもの考えや発見、つまずき等を敏感に把握すること
5 子どもの状況をとらえた上での「学びのデザイン」をすること
6 小グループによる学び合いの経験が十分にあること
7 グループ全員の考えの交流がなくてはならないという認識ができていること
8 わかることと同じくらいに、わからないことを大切にする認識があること
9 一つの結論を出すのではなく、互いの考えを豊かにするという認識があること
10 グループで考えたことが必ず生かされること
11 グループの学び合いから生まれたものを契機に学びを発展させることができること
12 「グループ」→「全体」→「グループ」→「全体」と、行きつ戻りつするケースもあること
(石井/順治:1943年生まれ、三重県内の小学校で主に国語教育の実践に取り組むとともに、氷上正氏(元・神戸市立御影小学校校長)に師事し「国語教育を学ぶ会」の事務局長、会長を歴任。四日市市市内の小中学校の校長を努め、2003年に退職。退職後は佐藤学氏と連絡をとりながら、各地の学校を訪問し授業の共同研究を行うとともに、「東海国語教育を学ぶ会」の顧問を務め、「授業づくり・学校づくりセミナー」の開催に尽力)
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