« 教師に不足する授業力と、子どもたちが意欲的に授業に参加する方法とは | トップページ | 一斉授業から「学び合う学び」の授業に変えるには、どのような段階があるのでしょうか »

授業力アップの秘訣とは

 学力低下などの問題がおこっているのは、教師が「これだけは何としても教えたい」という強い願いをもって、子どもを指導していないことからおこっているといってもよい。
「これだけは何としても教えたい」という教師の「ねらい」を、子どもたちが学びたいと思って、学ばなければ授業とはいえない。
 教師が教えたいという「ねらい」を鮮明にもつことだ。しかし、教えてはならない。
 子どもが「学びたい、調べたい、追究したい」という気持ちに転化させることが授業だ。
 授業力アップの秘訣の根本は、なんと言っても教師の人間性。技術と人間性のバランスがとれていなけりゃ、いい授業はできない。
 授業力をあげるための心得は、
1 あのような授業をしたいという強いイメージを持つ。
2 遠い目標と、近い目標をきちとんと持つ。
3 教材研究をしっかりやる。教材を自分のものにする。
「これだけは何としても教えたい」という内容を鮮明につかむには、教材研究をしっかりする必要がある。
 教科書を使うことが多いが、教科書に書いてあることを「どのように」教えるのかが問題である。
 教科書を教えるには、20~30回くらい読むことだ。そうすれば教えなくてはならないポイントやキーワード、内容の中心などがみえてくる。
 いきなり「指導書」を読むのはよくない。自分なりの「考え」をもってから読むようにすると、考えの幅も広がり、深さも深くなる。
 何と言っても、面白くて深い内容のある教材が必要であり、これを見つけることが教師の大切な仕事でしょう。
 教科書を教えても、教師が自分の内容にしておれば、面白くでき、子どもを惹きつけることができます。
 教えたいことが鮮明になってくると、これをより効果的に教えたいと考えるようになる。その時、最も効果的なものが「現物」である。
 現物がないときは、レプリカや写真などでもよい。教科書だけよりはるかに大きな効果がある。
4 ヒットでよい。ホームランをねらわない。
5 毎日1時間だけでよいので、授業を考える工夫する。
 ノートの左に工夫をかく。右側にその結果をかく。毎日、向上の記録を残す。
6 いい授業をしたら学級はよくなるはず。学級づくりをきちんとする。
 授業力アップために大切な5つの技術とは
1 教材・発問・指示
(1)教材
 提示される教材は、はっと思う内容である上に、しかも身近にその事実があるもの。
 教材は「おもしろいこと」「基礎基本的なことが含まれていること」「学習方法がよくわかること」
(2)発問・指示とは
 発問というのは「これだけは何としても教えたい」という「ねらい」にそって考え、「問い」という形でさり気なく子どもに知らせ、子どもから多様な反応を引き出す触媒のようなはたらきをするものをいう。
 授業は、多くの子どもを対象とするので、発問で多様な反応を引き出し、それを「集約・焦点化」するのが教師の授業技術である。
 指示は、命令に近いもので、1つのことを「このようにしなさい」と、指し示すことである。
 たとえば「ノートに書きなさい」「3回音読しなさい」などと、明確な活動のしかたを示すことである。
 指示の多い授業は、民主的な授業とはいえない。
 発問も指示も、ブレないことが大事である。何回いっても同じでなければいけない。
(3)教材研究から発問・指示を
 いい発問・指示は、教材研究をしているときに考えつくものである。というより、「発問・指示」を思いつくまで教材研究をすることである。
「教材研究をする」ということは、「発問・指示」をさがし求めるといってもよいのである。
 授業のうまい人は、発問・指示がうまいので、記録をとってみたりしながらよく見ることである。例えば、
 A「バスの運転手は、どんな仕事をしているでしょう?」
 B「バスの運転手は、どこを見て運転しているでしょう?」
 AとBの発問は、どちらがよいでしょうか。
 Aは、優秀児しか答えられない。大人でも答えに困る。
 Bは、全員挙手できる。つまり全員反応できる。前も、後ろも、横も、バスの中も、見ていることに発展するから Bのような発問を考えることである。
2 板書
 板書をきちんとし、子どもにノートをきちんと書かせて欲しい。 
 子どもの反応を集約・焦点化する。チョークの使い方にも基礎・基本あり。
3 資料作成の工夫
 作り方、見せ方の工夫を。手がかりをつけさせる。
4 話し合い
 明確な話題。共通基盤を持つ。
5 話術・表情
 内容のある話術・表情・パフォーマンスが大切です。内容のないパフォーマンスだけでは、子どもを惹きつけることは出来ません。
 教師がゆとりを持ち、もっと楽しく、笑いのある授業を。
(有田和正:1935-2014年、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた)


|

« 教師に不足する授業力と、子どもたちが意欲的に授業に参加する方法とは | トップページ | 一斉授業から「学び合う学び」の授業に変えるには、どのような段階があるのでしょうか »

授業の技術」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。