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教師に不足する授業力と、子どもたちが意欲的に授業に参加する方法とは

 今泉先生の授業法には、いま、多くの教師に不足している二つの力をとらえ直すヒントを発見することができます。
1 教材を深く解釈する力
 一つは、教師自身の「教材を深く解釈する力」です。
 もちろん、教えるにあたっては指導書もあれば過去の先輩の蓄積もありますから、それに従えば授業を進めていくことはできるでしょう。
 けれども、生きる力に結びついていくような深い学びを導くためには、単元の系統的なつながりや本質を押さえたカリキュラムをつくる力が必要です。今泉先生は、その点を常に意識されている。
 この単元で「譲れないものはなんなのか」と、その「中核」を見極め、不要な部分を削っていくから、最も「本質的な部分にスパッと切り込む授業」が可能になっているわけですね。
 中核がきっちり押さえられれば、「素材も広く日常のなかに求めていく」ことができるし脱線してもポイントがぶれない。
「具体的な一つの点から、問いを立てて世界を見る」という授業展開に、なぜ子どもたちが面白く参加できるか。
 それが、教科書による理科・社会科の枠を超え「本物につながっていく」という実感があるからでしょう。
 その意味では、どんな手順で何回発問して…というような指導案にこだわる必要はないのです。
 自在に授業を組み立てる今泉流は高度な技ですが、そこから学ぶべきことは、「子どもが出してくる問いに徹底的につきあいながら教材を深めていく」姿勢です。
 素材は、教科書であってもいい。
 最初は年に一つでもいい。
 自分ではうまくいかなくても面白いと思う教材を同僚と共有しながら、その可能性に一緒に取り組んでいくのもよいと思います。
 同僚間の見せ合い、語り合いのなかで、授業での工夫が具体的に見えてくるでしょう。
2 子どもの発言を解釈する力
 もう一つは「子どもの声を聴く力」です。子どもの発言を解釈する力と言い換えてもいいですね。
 この力があれば、「子どもの言葉から背後にある考えを読み取って、教材に結びつけていける」のですが、この力が不足していると、教師が関係ないと聞き逃してしまう。
 子どもの声を聴く力がないと、授業場面でも、一問一答で少しでも指導案と違うところがあると切っていきます。
 本当は、指導案以上に「大切な思考や発言」が子どもの側から起きている。
 今泉先生はそこを見逃さないから、子どもが集中を切らさず参加できるのでしょう。
 子どもの声をよく聴ける先生というのは、子どもの言葉を安易に置き換えません。
 子どもが教師の問いを受けて、子ども自身の言葉で置き換えをしていく。
 今泉先生が実践されているグループ討議も、それが可能なやり方です。
 子どもが発言しやすくなるし、思いもかけない多様な意見が出てきます。
「問いを全員で共有」しながら、一緒に授業を練り上げていくことができるのです。
 声を聴くというのは、簡単な実践から始めることができます。
 私はよく「声のトーンを下げましょう」と言います。
 教師が一方的にコントロールし、しかも大きな声でしゃべるだけだったら、子どものつぶやきは出なくなるし、聴き取ることもできません。
 また、子どもが発言しやすい環境づくりも必要です。
 板書ばかりしていないで、例えば子どもと向き合えるよう、机の配置を変えてみる。
 そうしていくうちに、子どもがハイハイと手を挙げなくても自然につぶやいたり、発言をしたりできる関係ができていくのだと思います。
 子どもの学びが難しくなっているのが現代です。であればこそ、今泉先生が言われるように「子どもから学んで、一緒に追究していく」授業こそが大切なのだと思います。
3 子どもたちは、本来深く学びたいという願いをもっている
 一見、学びから逃避し、学ぶ意欲など微塵も感じられなかったような子どもたちでも、深く学びたいという要求をもっています。一定の取り組みをするなかで、状況は変わっていきます。たとえば、
「教材との出会わせ方を少し工夫する」ことで、反応がちがっていきます。
「自然や社会や人間をリアルにとらえられるような教材」のときには、むしろ意欲的に参加するのです。
 子どもたちとともに、授業を創造していく可能性があるように思います。たとえば、
(1)「子どもたちが、想像・推理しながら課題に迫る」ような授業
(2)「自分たちで知恵を出し合い、対話や討論しながら、物事の本質を解き明かし発見していく」ような授業
 体験から、私は「教えたいことは教えない」のが授業の本質ではないかと思います。
 子どもたちが創造や推理・対話や討論を積み重ね、体験や知恵を総動員しながら、課題や本質にたどり着くようにすることが授業であるととらえるようになりました。
 子どもたちが意欲的に参加する授業をするには「説得・誘導の授業」から「納得の授業」に転換すると、子どもたちの学習への集中や意欲が、まるで違ってしまう。
 教える意識が強すぎると、子どもたちの発言や発想に共感する上ではマイナスに作用する。
 発想や視点のちょっとのちがいで、授業が違ってくる。
(今泉 博:1949年北海道生まれ、東京都公立小学校教師、北海道教育大副学長(釧路校担当)を経て松本大学教授。「学びをつくる会」などの活動を通して創造的な授業の研究・実践を広く行う) 

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