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大人との出会いで子どもは変わっていく

 山口良治先生は、赴任からわずか数年で無名だった京都の伏見工業高校ラグビー部を全国優勝させた。
 山口先生は「自分に矢印、自分に矛先を向けられる、勇気ある人間を育てたい」という思いを持っていた。
 何か自分の身の回りで起こったとき、人のせいにしたり、自分に関係ないことと思わない。
 まず、自分を見つめ、どうしたら良くなるのか、どうしたら強くなるのか、どうすれば正しいのかを自分に問う、勇気を持った子どもに育てる。
 その方法はと聞かれれば、答えは一つ「私たち大人がそういう見本になる生活をすれば良い」のだと思いますと。
 山口先生は、教師ですけれど、まだ子どもたちに、
「先生のようになってみろ。そして追いついて、今度は先生より大きくなってみろ」
 とは、まだまだ言えるだけの実践も積んでいないし、見本になれる人間にはなれていません。
 保護者のみなさんも、そうではないでしょうか。
「お父さんのようになりなさい」「お母さんのように生きなさい」
 と言える大人が、どれだけこの今の日本にいるでしょうか。
 まずは、私たち大人が、自分に矢印を向ける勇気を持たないと、これからもっと荒廃が進むことでしょう。
 やはり、今です。今…。
「誰かのせい」、「自分は正しい」と、そんな狭い視野で、自分自身の成長の芽を自ら摘み取っていたのです。
「なんと愚かな俺」と、心からそんなふうに思いました。
 また、いくつか心に突き刺さる言葉がありました。
「本気で思わなければ、実現しない」
「組織で一番大切なことは、全員が心を一つにすること」
「小さなことを、見逃していないか」
「相手の視線で、物事をみているか」
 山口先生は、教育の本質を「人と人との間」にあると「出会い」を大切にしている。
 教育者の中には「子どもに期待をかけすぎてはいけない」と、いう言い方をする人もいる。
 だが、必ずしもその意見には賛成できないのである。
 周囲からの期待を、プレッシャーなどと表現する人も多いが、期待というのは重圧になるばかりではなく、大きな力にもなる。
 大切なことは、自分の存在に対する、多くの人の期待をどう受け止めるか、感じとれるかなのである。
 それを感じとれる子どもが、その期待を力にして頑張って力を発揮できるのだ。
 そうやって期待に応えようとする中で、見いだす「やりがい」や「期待に応えられたときの充足感」が、人間として大きな幸せになるのではないだろうか。
 だからこそ私たち大人は、子どもが周囲の人からたくさんの期待をかけられていることを、感じとれるような感性を、しっかりと植えつけてやらなければならない。
「負けを知らない、勝利者はいない」「失敗をしない、名選手はいない」「信は、力なり」
 自らの幼少時代から現在までを振り返り,苦しかったとき,辛かったとき,自ら動くことが大切だと気づき,これが自分を変える原点になった。
「感性のない人は不幸。自分より弱い立場の人に優しい声をかけられる人になり,それぞれが将来他人に喜ばれ必要とされる人になって欲しい」
「自分を愛せない人は、人を愛せない」
「目標に向かい、その目標がクリアできるようになるには、何が必要か考えて努力する」
「自分が何をやってきたか問え」「言い訳を探さない」「自分のめざすものを本気でめざせ」「自分の人生を鮮明に描けたらいい」「一つでも多くの感動を自分から作って欲しい」
 山口先生は、ラグビーの元全日本代表選手。現役を退いた後は教師として青少年の指導育成に力を注いだ。
 校内暴力が社会問題だった70年代。不良生徒がいた京都市立伏見工業高校に赴任。
 見るも聞くも、許せんことばかりやった。でも、許せんかったのは、生徒ではなく、注意しない教師やった。
 何ができるかを自問した。
 生徒たちには誇りが必要だ。
「伏見高校がラグビーで一番になったら喜ぶやろうなー」と、そう思っただけでも体が熱くなった。
 赴任からわずか数年後、無名だったラグビー部を全国優勝させる。
 その道のりは決して平たんではなかった。
「泣き虫先生」は、生徒たちと向かい合い何度も泣いた。
 山口先生は、講演中も感極まって涙をぬぐう。
 その熱血教師ぶりは、テレビドラマ「スクール・ウォーズ」のモデルとなり、NHK「プロジェクトX」でも取り上げられた。
 生徒たちを見ていて、寂しいんやろうなと思った。構って欲しい、見て欲しいと思っている。
 大人との出会いで、子どもは変わっていくもの。
 今の日本に欠けているのは、
「仲間や社会、子どものために自分に何ができるか」と思う気持ち。
 皆がその気持ちを出し合えば良い社会になる。
 その「出会い」をがんばる「力」にして、目標をもって頑張る。
 いかなる障害にも
「自分でやったことしか、自分の力にならない」
 そして、自問しながら、自分で決めて、自分で判断する力をつけていく。
 自分にベストを尽くすとは、そういうものなんですね。
(山口良治:1943年福井県生まれ、日本のラグビー元日本代表。京都市立伏見工業高等学校ラグビー部監督、京都市役所、伏工ラグビー部総監督、京都アクアリーナ館長、浜松大学教授・ラグビー部特別顧問を経て環太平洋大学の総監督。1984年TBSテレビドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルとなった)

 

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