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「もう終わり?」という声がでる授業をするには、どうすればよいか

 筑波大学附属小学校の研究授業を見ることができた。
 久しぶりにすごい授業を見た。特に算数の田中博史先生の授業。
 田中先生と目の前にいる子どもたちは毎日こんな授業を行っているのだろうか。いわゆる名人芸。とにかくすごい。
 授業スタイルは昔ながらの教師一人と子ども全員との一斉授業だ。
 ワークショップ型だなんだと、そんなことを考える必要もない。
 教師の圧倒的な力は、授業の雰囲気を動かしてしまう。
 子どもの発言をそのまま受け取り、それを子どもに返す。
 気づくといつの間にか本時の学習問題になり、知らぬうちに解決場面へと導いてしまう。
 60分もやっていたのに「もう終わり?」「まだ話したいことがあったのに」という声が聞かれたのが何よりもスーパーな授業だった証拠だろう。
 田中先生は「先生のための夏休み充電スペシャル」と題し、お笑い芸人とのトークイベントを毎年開催している。その目的は、
「これは、お笑い芸人が、ライブで観客の心をつかむためにしている工夫や技術を授業の中で応用してもらうために始めたことです」
 実は学校や家庭で子どもに教える時も、お笑いの人たちの技術は使える。
 彼らは、観客の反応を見ながら「今日の客はこの話だとノリがよくないな」と思うとネタを変えている。
 学校の先生、そして家庭学習でのご両親は、その工夫をしないことが多い。
 本来は、今自分が説明しているここで、子どもがつまずいているなと思ったら、そこで立ち止まって軌道修正をしなければならないんです。
 しかし、多くの先生や保護者は、とにかく「ここまでやらせなければ、わからせなければ」で突き進んでしまう。
 せっかく子どもの顔が見られるのに、もったいない。台本通りやるのはつまらないです。
 とくに中川家の礼二さんの相方が兄弟ということもあって、台本をまったく書かず、その場の雰囲気でシナリオを決めることが多い。アドリブの達人です。
 礼二さんは、学校の先生も、目の前の子どもが眠そうにしていたら「これじゃ面白くない、問題変えようか、と動きながら授業をしたらいいのにな」と言っていました。
 子どもがボケてたらツッこむ。そんなお笑い芸人的な技術が備わったら、先生の授業力も一ランクあがったと言えるのではないでしょうか。
 家庭でもどうか、子どもの顔をよく見てツッコミを入れてください。子どもをいじる、時には親が間違えることで、子どもの注意を惹きつける。
 こんな親子の勉強のひとときは子どもにとって楽しい時間になりますし、説明役をたくさん引き受けた子どもの学びは、実のあるものになります。
 学校や家庭で、相手のタイプや状況に合わせてコミュニケーションの方法を変えることは重要な気がする。
「子どもの表情に合わせて、次に何をしゃべるか考える練習が必要なのは、学校の先生、家庭学習での親も同じです。さらに言えば、ビジネスでも同じだ」と思います。
 一つ、意外な秘技をお教えしましょう。家で職場で、子どもや部下にフィードバックする時、思っていることを表情に出さない。ポーカーフェイスを心がけてみてください。
 少なくとも「ここはどうして足したの?」と聞いた途端、子どもが書いた答えを消すのを見たら、あ、表情に出してはいけないんだな、と気づいてアクションを修正する。
 そうでないと、消して引き算に書き直して正解を出せたとしても、その子の本質的な学びにはつながらないんです。
 あくまでも表情に出さず、中立を心がけて「まずは顔色をうかがわせず、自分なりの考えで進めさせる」ことも重要でしょう。
 逆に自分の軸があって、基本的に自分で決めてやれるような部下の場合は、早いタイミングでアドバイスしても一向に構わないと思います。
 やり方は一通りではない。人の性格や個性によって付き合い方を変えないと、ポテンシャルを引き出せないんです。
 私は「初めての単元などで間違えるのはあたり前」とつねづね言っています。
 間違える回数が多い子どもの方が、幅が広がる。経験が増える。
 次のチャンスで、失敗を思い出して「あれをやって失敗したことがある、今回は避けよう」と応用がきく。
 いつも一発正解だと、限られた経験しかできないから、何をやったら失敗するかを学べないと思います。まちがいの経験が重要である。
 例えば、子どものまちがいのままに進めてみる。
「なぜ、30分は0.3時間じゃないの?」という、子どものまちがいにはどう対応したらよいか、を考えてみよう。
「なぜ、30分は0.3時間じゃないの?」という子どもの声に答える時に大切にしたいのは、まずは子どものまちがいの道筋を一緒にたどってみるということ。
「0.3時間と答えた子どものまちがいのままに、いったん先を進めてみる」ということです。
 私は、子どもが持っていたテスト用紙をいったん脇によけました。
 そして、手近にあった白紙の用紙を机にひろげ、
「なるほど。30分は0.3時間なんだよね」と子どもにたしかめてから、その紙に30分=0.3時間と書きました。
 そうしておいて、子どもに「じゃあ、40分は?」とたずねると、子どもはすぐに「0.4時間」と答えました。
 私は先ほどの式に続けて40分=0.4時間と書きました。
 つづけて「なるほど。じゃあ50分は?」と聞くと、「0.5時間」
「60分は?」「0.6時間」
 その子どもの言葉をひろって、私が「60分=0.6時間」と紙に書いたと同時に、その子どもは「あれ?」と声をあげました」
 そして、この後、この子どもは「60分は1時間なのに、0.6時間じゃたりない!」と自分で気づくのである。
 田中先生は言う、
「子どもには、まちがった答えを出すに至った考えがあり、根拠があるわけです」
「大人の説明が子どもに伝わらない、そういうときは、子どものまちがいのままに進めてみること」
「そうすれば、子どもが自分でそのつじつまの合わなさに気づく瞬間が来るんです」
(田中博史:1958年山口県生まれ、山口県公立小学校教師、筑波大学附属小学校教師を経て同副校長。全国算数授業研究会理事・日本数学教育学会出版部幹事,隔月刊誌『算数授業研究』編集委員、基幹学力研究会代表・算数ICT研究会代表。また「課外授業 ようこそ先輩」を始め、多数のNHK教育番組に出演。)

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