授業を成功させるために、教材の解釈と授業の展開は、どうすればよいか
授業の展開を成功させるためには、授業が明確な方向性を持ち、単純化されていなければならない。
それではじめて授業は力を持ち、リズムとドラマを持つ。
根本的には、教材の方向性と授業の方向性をどこで一致させるかということが、授業展開を成功させる条件である。
授業展開の方法を考えるには、
(1)教材の方向性を考える
(2)自分の方向を考える
(3)現実の子どもを考える
(4)子どもに実現したいことを考える
(5)教材のなかからもっとも適切なものを抜き出し拡大する
一つの教材によって方法論を持つことが、授業での教師の方向性であり、授業に方向性があることである。
授業展開を単純化しようとする場合は、何をどう切り捨てるかということが大事になる。
授業の展開を成功させるためには、
(1)教材の解釈
教材を一般的にわかるとか説明できるということではない。
教材を分析し、自分に問いかけたり、疑問を持ち、発見・創造したりする。
そのなかから新しい疑問、思考、論理とかを積み重ねていくことである。
全人間的に教材と対面し、専門家に近い読みと解釈、自分の考えを持つこと。
深く読みとることができるまでおこなう。
血の出るような思いでつかみとったことが、生きた知識となり、授業で生き生きと子どもにぶっつけることができる。
そういう解釈をするためには、すぐれた人生経験を持ち、職場に授業を中心とした研究体制ができていることが必要となる。
荒い一般的理屈だけの読み方を、みんなに否定される職場体制があること。
(2)授業を構造化する
教材の解釈を学級の一人ひとりの子どもとつき合わせ、かみくだいていく。
現実にいる学級の一人ひとりの子どもを頭に入れての教材解釈である。
子どもたちに何をどのように考えさせ、教えようとするか。
教師がひとりの人間として読み取り解釈したものを、学級全体や一人ひとりの子どもと具体的につき合わせ対策を考えていく。
具体的に教材が子どもとつながり構造化されるわけである。
何を教え込まなければならないかを、現実の学級を対象にして考え決定する。
「何を取り上げ、何と何は切りすてるか」を決定する。
教師が「読み取ったもの」「解釈したもの」「疑問に思ったもの」「発見したもの」のなかから、こんどの授業では「何を取り上げ、何と何は切りすてるか」を決定する。
授業の展開に方向性を持たせるために、単純化し明確にするために惜しげもなく切りすてる。
子どもに理解困難だと思われるところをみつけだしておく。
そして、子どもの状態に即して教えたり、考えさせたりすることができるようにしておく。
重要な問題について、子どもがどのような思考や解釈のあやまりをするか予想を立てておく。
それに対して教師としての説明の仕方とか、反ばくの仕方とかを考えておく。
この作業のとき、教師自身がそれまでの自分の解釈や考えを、もう一度疑ってみたり、幾つかのちがう考えや解釈をつくり出しておくことも必要である。
これにより、授業展開を豊かにしたり、子どもの考えを否定したり、反ばくしたりすることもできるからである。
(3)教材を分析
教材にはかならず授業展開の核とか中心とかになるものがある。
授業はそれを手がかりにして展開していく。
それを教師がしっかりとつかまえておかないと、授業展開はスムーズにいかない。
(4)授業展開のなかでの新しい発見
実際の授業展開で教材に新しい発見をするときがある。
例えば、教師自身が発見する場合、子どもの疑問を契機にして発見する場合、子どものすぐれた発言からの発見がある。
授業で新しい発見ができるのは、教材を媒介にしながら激しく教師と子どもが体当たりし合うからである。
そのことにより、教師や子どもを変えていかなければならないのが教育の仕事である。
それができるためには教師が、
1 ものを鋭くみぬく力を持っていること。
2 相手の心の内側にはいり、相手の心の動きを的確に追っていくことができること。
3 豊かで、大きく、強い追求力と実践力を持っていること。
(5)教材解釈と展開の関係
教材の説明と思考を区分けする。
教材の解釈と思考をする場合は、次の区分をはっきりする。
1 教師が教材を明確に説明することによって、既成の法則・原理・知識をはっきりと教え込む。
2 子どもに考えさせ・追求させる。
(斎藤喜博:1911年-1981年、群馬県生まれ。1952年に島小学校校長となり11年間子どもの可能性を引き出す学校づくりを教師集団とともに実践し、全国から一万人近い人々が参観した。退職後全国各地の学校を教育行脚、「教授学研究の会」を主宰した。多くの教師に影響を与えた昭和を代表する教育実践者)
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