よい授業をめざすためには、どのようにすればよいのでしょうか
一般に教師になる人は、それまで自分が学校教育を受けた先生のことが強く印象に残っている。
だから、その先生の方法を真似してやっていこうとする傾向がある。
しかし、それではなかなかうまくいかない。
教師になってからもたくさんの授業を見て、たくさん感動し、そこから多くを学ぶ必要がある。そうすれば、おのずと授業のあり方が変わってくるものだ。
つまり、教師は「日々前向きに授業のあり方を考えていく存在だ」と承知すべきであろう。
同じことをし続けるようになってしまったら、成長はなくなるのだ。
私の場合、新任教師のころに観た2つの授業が心に残っている。
一つは算数の「式の表示」に関する授業であった。
子どもが黒板の前に出て、その考えを説明している。
先生は窓側に立って子どもの話をにこにこしながら聞いている。
私には、当時、先生は教卓の所にいて、子どもの方を向いて説明するのが授業だという固定観念があった。
それがくつがえされ、忘れられない授業となった。
以後、私もそれを真似しだしたのである。
子ども同士で授業が展開するようにした。
今にして思うと、それが私の授業観の原風景にもなっている。
もう一つは算数の「合同の概念」を扱った授業であった。
大きな模造紙にいくつかの図形が描かれ、それを黒板上に貼りだした。
その中に描かれたモデルの図形と「同じものはどれか?」と教師が尋ねた。
すると、一人の子どもが「これが同じだ」という。
教師は「なぜ、そう思ったのか」と問い返す。
子どもは「重ねれば同じになるはずだから」と言う。
そこで、教師が「実際にやっていないのに、それはわからないだろう。やってごらん」とたたみかけた。
その子は、模造紙を切ってはまずいのではないかと躊躇した。
ところが教師は「心配することはないから、切って、重ねてごらん」というのである。
子どもはおそるおそるそれを切って、図形に重ねていた。
この様子に、私は、ああ、子どもの側に立って、予定にはなくても実際にやってみることがとっても大切なことなのだなと強く感じたものだった。
当時の私にとっては衝撃でもあった。
そんな影響によって自分の授業が少しずつ変わってきた。
(坪田 耕三:1947 -2018年、東京都生まれ、東京都公立小学校教師、筑波大学附属小学校教師、副校長、筑波大学教授、青山学院大学特任教授。全国算数授業研究会会長。ハンズオン・マス研究会代表)
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