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授業で教えたいものを教師がつかむにはどうすればよいか、授業での指導のコツは?

 授業とは「これだけは何としても教えたい」という内容を、子どもが「学びたい、調べたい、追究したい」というものに「転化」することである。
 教師の何としても教えたいもの「ねらい」を、子どもたちが学びたいと思って、学ばなければ授業とはいえない。
 学力低下などの問題がおこっているのは、教師が「これだけは何としても教えたい」という強い願いをもって、子どもを指導していないことからおこっているといってもよい。
「これだけは何としても教えたい」という内容を鮮明につかむには、教材研究をしっかりする必要がある。
 教科書を使うことが多いが、教科書に書いてあることの「何を」「どのように」教えるのかが問題である。
 教科書を教えるには、20~30回くらい読むことだ。
 そうすれば、教えなくてはならないポイントやキーワード、内容の中心などがみえてくる。
 いきなり「指導書」を読むのはよくない。自分なりの「考え」をもってから読むようにすると、考えの幅も広がり、深さも深くなる。
 教えたいことが鮮明になってくると、これをより効果的に教えたいと考えるようになる。
 その時、最も効果的なものが「現物」である。
 現物がないときは、レプリカや写真などでもよい。教科書だけよりはるかに大きな効果がある。
 例えば、コンセントの「プラグ」を準備する。なければ、絵を描くことだ。この場合は、絵の方がいい。
 教師は、3枚のプラグの絵を描く。
 1枚目は、A:さし込みの部分に「穴があいてない」もの。
 2枚目は、B:「片方だけ穴があいている」もの。
 3枚目は、C:「両方とも穴があいている」もの。
 である。
 教師の「ねらい」は3枚目のCであることをつかませ、その理由を考えさせることである。
 指導のコツは、教えることは、鮮明であるが、大事なことは「教えてはならない」ということである。
教師:「コンセントのプラグ知ってますよね」
 といいながら3枚のコンセントのプラグの絵を提示する。
子ども:「あれっ?どれが正しいの?」と、もう考え始めている。
 子どもたちは、AだBだCだといって、なかなか決まらない。
 ふだん、いかにモノをよく見ていないか気づく。
 ここで、もったいぶって実物を見せる。集中力抜群の場面である。
 Cが正解だが
教師:「なぜ穴が2つもあいているのか?」
 と、またもめる。
「鉄の節約のため」といった大人(教師)もいるくらいである。
 ここで教師が知ったかぶりをして教えるか。それとも
教師:「先生も理由がよくわからないんだよ」
 と、とぼける役者ぶりを発揮するか。
子ども:「先生も知らないの!」
 と、馬鹿にされても、軽蔑に耐えることがコツである。
 じらしておいて、
教師:「先生は、コンセントにヒントがあるような気がしてるんだけど、どうだろうな?」
 と、ヒントをさり気なく出し、あとは子どもに追究させることだ。
(有田和正:1935-2014年、筑波大学付属小学校,愛知教育大学教授、東北福祉大学教授、同特任教授を歴任した。教材づくりを中心とした授業づくりを研究し、数百の教材を開発、授業の名人といわれた)

 

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