魔法の言葉「AさせたいならBと言え」は、子どもたちの心を「自主的にさせる」指示である、どのようにつくればよいか
「おへそをこっちむけてください」
子どもたち,特に低学年の子供たちを教師側に向けさせる,有名な指導言だ。
「熱いジャガイモをほおばるように口をあけて,声を出しましょう。」
全校合唱を指導した時に,こう指導すると,子どもたちの歌い方がガラッと変わった。
これもまた有名な指導言だ。力のある教師たちはこれまで経験の中で,このような指導言の効果を実感し,教室で使ってきたのである。
そうした指導言を知らない教師が、こうした指導言によって子どもたちが動き出す光景を見ると,これらの指導言は「魔法の言葉」となるにちがいない。
私たちは,こうした先達の素晴らしい実践を学び続ける必要がある。
「先生の方をむいてください」と指導するよりも「おへそをこっちにむけてください」と指導した方が効果的であること。
「大きな口をあけて歌いましょう」と指導するよりも「熱いジャガイモをほおばるように口をあけて…」と指導したほうが効果的であること。
「○班静かにしてください」と指導するよりも「△班の聞き方が素晴らしい。みんなにまねしてほしいな」と指導した方が効果的であること。
これらの様々なパターンの「魔法の言葉」を明確に方向付け,価値付けをした第一人者が岩下修氏だ。
岩下氏は,この「魔法の言葉」を「AさせたいならBと言え」と原則化し,多くの教室の教師の言葉指導を変えていった。
「魔法の言葉」の仕組みを岩下修氏は「AさせたいならBと言え」の中で次のように述べている。
子どもたちの心を「自主的にさせる」指示の開発こそが必要なのである。
「AさせたいならBさせよ」は、まさに子どもたちを自主的にさせるために設けられた原則なのである。
子どもへの指示は直接的なものより,間接的なものの方がよいということだ。
これを意識するとしないでは,学級経営,授業運営も大きく変わってくるはずだ。そして,子どもの力も変わってくるはずだ。
例えば、リコーダーの指導で「もっときれいな音でふきなさい」と指導しても、どうしていいかがわかりません。
きれいな音とはどういう音なのか、イメージできていないからです。
見本を見せればいいのです。イメージができます。
聴かせればいいのです。まずは「きれいな音とはこういう音だ」ということを教えなければいけません。そうすれば、きれいな音というのがイメージできます。
次は、具体的な方法です。
きれいな音のイメージができても、それだけではダメです。
どうやったらきれいな音が出せるかがわからないからです。
たとえば、次のように指示します。
「シャボン玉を割らないように、そっとそっと少しずつふくらますようにふいてみよう」
音がきれいになります。
シャボン玉をふくとき、一氣に強くふく人はいませんね。そんなことをしたら、すぐに割れてしまいます。
「すーっ」というようにそっとふきます。このふき方が、リコーダーのふき方と似ているのです。
子どもたちが経験したことがあるもの、つまり
「子どもたちにとって身近なものに例える」と、子どもは変化します。
技術的なことも教えます。タンギング、運指(指使い)、息の入れ方。
「例え」を使うのもよいです。
(1)跳び箱運動、着地の指導をするとき、次のように指示します。
・「忍者のように降りなさい」
・「猫のようにふわーっと降りなさい」
子どもたちの着地は、ドンからスッへ。音をたてない、柔らかい着地に変化します。
(2)「勉強しなさい」といいたいとき、
・「音読上手になったって、先生がいってたわ。お母さんに聴かせてね」
・「10マス計算、お母さんとどっちが速いかな。競争しましょう」
・「漢字カルタをやりましょう」
(3)「宿題をしなさい」といいたいとき、
・「終わったら、いっしょに『○○○○』(テレビ番組名)を見ましょうね」
・「終わったらおやつですよ」
・「今日は、何分でできるかしら」
・「わからないところは、聴いてね」
・「どんなお話しか、教えてね」
(4)「はやくしなさい」といいたいとき、
・「ビデオ、早送りー」
・「制限時間、あと5分です」
・「雷が落ちるまで、あと3分!」
指示の仕方一つで、子どもはがらっと変わります。いろいろ考えてみてください。
(岩下 修:名古屋市生まれ、公立小学校教師、立命館小学校教師、立命館大学非常勤講師を経て、名進研小学校国語顧問教師、立命館小学校国語教育アドバイザー)
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