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ユニット学習で授業をすると、子どもたちは落ち着き、どんどん力を伸ばしていきます(その1)

 西村 徹先生が小学二年生を担任したとき、子どもたちがなかなか落ち着いて勉強できずに困りました。
 ある時、東京の杉渕鉄良先生に「ユニット学習」を教えてもらいました。
 この方法で授業をすると、すぐに落ち着き、子ども達がどんどん力を伸ばしていきました。
 ユニット学習とは、45分の授業時間をいくつかの小さな学習で構成するということです。
「ユニット学習、おもしろい」と、子どもたちは思います。
 やっていただくと「やってよかった」と思われるでしょう。具体的に紹介していきます。
1 ことわざ
 公文式の「ことわざカード」を買いましょう。ことわざが62載っています。
 さまざまな教訓に満ちていることわざを覚えることは、日本語の語彙を豊かにします。
 このカードを使って、ユニット学習を始めてみましょう。
 やり方は簡単です。次のようにします。
教師「ことわざ学習をやりましょう。最初の言葉を言いますから、続く言葉を言ってください」
教師「犬も歩けば」と、カードを見せながら言います。
子ども「棒に当たる」と、子どもたちは言います。続けて10ほど、ことわざを言います。
 初めですから、簡単なことわざを選びましょう。
 大切なポイントは、ことわざ62全部を一度にしないでください。
 これをすると、教師も子どもも一度でユニット学習が嫌になりますから。
 つまり、1日に5つから10までのことわざにすることがポイントなのです。
 これだと1分で終わりますね。「もうちょっとやりたい」ぐらいで終わるのです。
 1週間、毎日、同じことわざを教えます。
 次の週は、違うことわざです。6週間かけると62のことわざが終わります。
 1回に1分。1週間では5分指導していますから、それを6週間すると30分です。わずか30分で62のことわざが覚えられるのです。
2 慣用句
 公文式のカードには「慣用句カード」もあります。62の慣用句が紹介してあります。
 慣用句の場合、意味を言ってから答えさせます。意味を言わないと答えにくいからです。
 たとえば「耳を」と聴いて、後に続く言葉はいくつか思いつきます。
 答えは「すます」なのですが、「うたがう」でも正解です。
 まず、教師が慣用句の意味を言います。
教師「声や音がよく聞こえるように、注意を集中して聞くことです」 そこでカードを見せて、
教師「耳を・・・」と言います。子どもたちは「すます」と言います。
3 四字熟語
 四字熟語の指導も公文カードを使います。
 字が小さいので教室の後ろまでよく見えるように、公文カードを元に、大きめで厚めな紙でカードを作ります。
 次のように指導します。四字熟語カードを見せます。
教師「弱肉強食」
子ども「じゃくにく、きょうしょく」と子どもたちが読みます。これを10ほど続けます。
4 難読語
 難読語の指導も公文カードを使います。
 これも字が小さいので教室の後ろまでよく見えるように、公文カードを元に、大きめで厚めな紙でカードを作ります。
 難読語カードを見せます。
教師「烏」
子ども「からす」と、子どもたちが読みます。これを10ほど続けます。
5 対義語
 対義語は受験参考書から取ってきます。
 これも字が小さいので教室の後ろまでよく見えるように、大きめで厚めな紙でカードを作ります。
 表に熟語、裏に対義語を書きます。それを続けて言わせます。
 熟語とその対義語をワンセットで覚えさせます。次のように指導します。
 対義語カードの表を見せ、すぐに裏を見せて言わせます。
「主観客観」と子ども達が読みます。これを10ほど続けます。
6 季節の言葉
 梅雨の頃は、雨に関する言葉を、冬には雪に関する言葉を覚えさせます。
 難読語の指導と同じです。教室の後ろまでよく見えるように大きめで厚めな紙でカードを作ります。
 季節の言葉カードを見せます。
教師「時雨」
子ども「しぐれ」と子ども達が読みます。その後で、
教師「秋から冬にかけて通り雨のように降る雨」と意味を言います。これを10ほど続けます。
7 復習する言葉
 各教科の中には、単純に覚え込めばいい言葉があります。
 しかし、教科書で一度学習した後は、復習しませんから子どもたちは忘れます。
 それを、カードにしてユニット学習で何回か言わせると覚えることができます。
 やはり、少し厚めの紙に書いてください。次のように指導します。
 教師が復習する言葉カードの意味をいいます。
教師「遠くの海に出かけ長い期間行う漁は?」
子ども「遠洋漁業」と子ども達が読みます。 これを10ほど続けます。
 ユニット学習を経験して、ある5年生の女子は、次のように述べています。
「私は、カードユニットを続けていて、初めは読めなかった漢字でも大きな声で毎日読んでいると、自然に覚えていって、自然に身に付くんだと思いました」
「ことわざでも、初めは覚えていなかったけど、ことわざカードをやり始めると、初めよりたくさん覚えていきました」
「そして、スラスラ言えるようになり、こんなに言えるんだーと思いました」
「私は、ことわざカードユニットをやっているうちに、すぐ覚えられました。覚えようとしなくても、すぐ頭にうかんできました」
「そのうち、ことわざが、好きになってきました。難読語も同じです」
「それは、ほとんど毎日やっているからだと思いました。どのカードユニットでも、覚えようとしなくても覚えられるから便利です」
(西村 徹:1960年兵庫県生まれ、小学校在席6年間の校長は東井義雄先生。兵庫県公立小学校教師。「東井義雄の言葉 こころの花がひらくとき」(致知出版社)を出版。地元で、やぶ読書会・教育サークル「カセッタ会」、但馬掃除に学ぶ会・教育立志会を主催)

 

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