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「遊び」の効用は限りなく大きい、遊びを活用して「元気はつらつとした子ども」を育てよう

 平成の初め、全国的に都市型過疎化が進行し、東京都台東区に統合して新しい小学校がスタートすることになった。
 そのとき学校が心配したのは「校区が広くなって子どもたちが登校をしぶるのではないか」ということであった。
 そこで、子どもにとって「魅力的な学校を創る」ことをテーマに掲げて、地域人材を活用する授業展開を様々に試みた。
 そうした活動の中で、子どものやりたいこととして選んだのは「遊び」の導入であった。
 毎朝15分間、子どもが好きな遊びを選んで行う。
 ただし、校庭が狭いことからサッカーのようなチームゲームは禁止し、1人で遊べることに限定した。その遊びの種類は、
 マラソン、鉄棒、なわとび、バスケット・シュート、お手玉、折り紙、読書、けん玉、あやとり、竹馬、一輪車、パソコン、自由研究である。
 実はこれらの遊びはすべて「腕が上がる」ようになっている。
 遊びを導入した結果、学校に新しい雰囲気が生まれたのである。
 学校で「好きな遊びができ、遊びを選ぶことができ」「遊びで腕を上げることができ」 「遊びで仲間ができる」という雰囲気が生まれた。
 腕をあげるために、子どもは次にここまで上達したいと「めあて」を決め、学級のボードに「見て見てカード」を掲げる。
 その遊びの時間を「チャレンジ」と名づけている。
 保護者も参加していいが、教えない。子どもが見よう、見まねで上達するのを見守る。
「魅力ある学校づくり」は効果があり、上野小学校に不登校児童がいない状況が何年も続いたのである。
「遊び」の効用は大きかった。遊びの効用とは、
(1)遊びには面白さとともに開放性と自由性があり、夢中になれる
 そのため心身がリフレッショする。朝の遊びは目覚めを促し、気持ちをシャンとさせ、情緒が安定する。
(2)遊びで仲間内での約束やルールを学び、社会性が身につく
 勝ったり負けたりすることで敗者復活の対処の仕方を身につける。
 だから、勝敗にこだわらなくなり、自他の力関係を客観的に判断できるようになる。社会性が自然に身につく。
(3)遊びは練習し、頑張ればできるようになるので忍耐力が身につく
 上達するためには繰り返し練習する必要がある。好きな遊びだから練習が苦にならない。
 自然な形で練習の大切さと、頑張ればできるようになる、という忍耐力や生き方の基本を身につけることができる。
(4)遊びは全身を鍛える
 けん玉や竹馬は全身のバランス感覚が得られる。手先と体と頭が一緒になった運動である。
 巧緻性が高まり、集中力が生まれる。体を動かすことと、精神を働かすことの統合が起こる。
(5)遊びを選ぶことの教育的効果も大きい
 きょうは何で遊ぶか、という「自分のやりたい」ことを選ぶことは子どもの主体性や個性を育てる。
 それは子どもの個々の生活感覚や学習への態度を豊かに形成する。
 小学生の暴力行為が増加しているが、子どもの遊びの減少が背景にあるのではないか。学校は遊びを積極的に生かすべきである。
 東京都品川区のある小学校の朝、登校すると15分間子どもたちは校庭で思いっきり遊ぶ。「生き生きタイム」の時間である。
 どの子どもも元気はつらつとした表情で明るい。「朝ごはんを食べてきたから」と口々にいう。
 校長は「子どもの目覚めが悪いことに気づいて、目覚めを促すために外に出て遊びをさせた。その結果、朝ごはんを食べてくるだけでなく、10時前就寝も多くなった、学力も高まった」と語っている。
 また、高学年担任の教師は、
「これまで朝の授業は反応がなかなか返ってこなかったのが、生き生きタイムを実施したあとは、いい反応が返るようになった」と言う。
 最近の子どものテレビ漬けや夜更かしはかなり深刻な状況であるが「早寝・早起き・朝ごはん」を提唱するだけでは十分でない。それができるための仕掛けが必要である。
 子どもの心に「早起きしなければ」と思わせる動機づけが必要である。「生き生きタイム」はそのための仕掛けである。
 最近の子どもは体全体を動かす遊びが足りない。子ども同士が群れになって行う遊びが少ない。
 遊ばないと、勝ったり負けたりの敗者復活の経験ができない。
 遊びはストレスを発散させる特効薬だが、その薬を与えられないため、すぐキレる、暴力を振るうなどの短絡的な行動に走る。
 遊びだけではない。多くの面で「子どもらしさ」が失われているのではないか。
 将来的には「人間力」形成は重要だが、今の子どもに必要なのは、元気はつらつとした「子ども力」ではないかと考える。
 その意味で、朝の15分間の「生き生きタイム」はどこの学校でも真似してほしいことである。
 それは子どもが1日通して学習も生活も有意義に過ごせることが最も重要だからである。「遊び」は活力の源なのである。
 しかし、最近の子どもはテレビゲームのような室内遊びに熱中するが、戸外で遊ぶ姿を見ることが少なくなっている。
「遊び」の効用は限りなく大きいのである。
(高階玲治:1935年樺太生まれ、北海道で小・中学校教師、北海道立教育研究所副部長、盛岡大学教授、国立教育研究所室長、ベネッセ教育研究所顧問、ベネッセ未来教育センター所長、教育創造センター所長を務めた。専門は、教育経営、学習指導、特別活動など、講演と幅広く活躍した)

 

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