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百ます計算は、どのような趣旨で生まれたのか

 百ます計算は、陰山英男先生が百ます計算を活用し、小学生の基礎学力向上に成果を見せたことにより話題となった。
 百ます計算は、縦10×横10のますの左側と上側に、それぞれ0から9の数字をランダムに並べ、1けたの数字の足し算、かけ算などのスピードアップを競う。
 教育現場に登場したのは1960年代。考案者は、神戸市で40年間の小学教師経験のある岸本裕史先生だ。
 68年の学習指導要領改訂で「詰め込み教育」が進み、岸本先生は「授業についていけない児童が多数出る」と、百ます計算を授業に組み込んだ。
 百ます計算のブームは、兵庫県朝来町立山口小学校の異変がきっかけである。
 岸本先生は、
「山口小学校は数年に1人程度しか有名大学進学者がなかった。ところがこの10年間、同小で百ます計算など反復トレーニングを集中的に実践。毎年、2割程度の難関大学合格者が出るようになった」と説明する。
 東北大学未来科学技術共同研究センターの川島隆太教授は、
「百ます計算や音読のときは、脳全体に血流が集まることが実験で明らかになった」
「小学生時に訓練された計算力や言語能力、記憶力、認知力は一生残る」と指摘。
 しかし、教育界には、小学生時の単純な反復訓練が大学受験時まで効果があるのか疑問視する声も多い。
 元教師の家本芳郎は、
「小学生の時につけた学力が、簡単に壊れることは長年の中学校教師経験で知っている。計算能力と考える知能は全く別ものだ。受験の学力を本当の学力と定義しているのが間違い」と言う。
 さらに、教師がストップウオッチ片手に子どもを競わせるスタイルも問題という。
 家本先生は、計算が早ければ偉いという一元的価値観を植え付け、受験戦争につながる。小学生の段階で、人との協調性より競争心を育てるのは時期尚早である。
 実は、百マス計算の生みの親の岸本先生も、考案の目的は受験対策ではなかった。
 詰め込み教育の、落ちこぼれ対策が出発点だったというのだ。
 百ます計算の利点は、勉強が苦手な子どもでも全問正解できる。
 自信をつけさせてくれた教師に、子どもは「先生、今度は何をすれば賢くなれるんや」と聞いてくる。
 理想論では、子どもたちは救えないと。
 教育界の百ます計算の批判に対し、岸本先生は、
「反復学習を批判するのは、自身が高学歴者ばかりじゃないか」と一蹴する。
「全国で学級崩壊どころか学校崩壊にまで広がっている危機的状況をみて、どう思うのか」
「子どもの能力を引き出すのは、子どもに基礎学力がある場合だけだ」
「勉強が分からないから、学校が楽しくなくて、荒れる子どもたちの悲しみが分かっていない」
 と反論する。
 競争が子どもの人格形成に悪いという意見については、岸本先生氏は、
「競争が駄目なら、運動会の徒競走で順位をつけるのも、コンクールで表彰するのもやめなければいけない」
「競争があってこそ、努力して成長できる」と言う。さらに、
「百ます計算で競争する相手は、友だちはなく、レベルが低かった過去の自分」
「教師が『よく頑張った』と褒めることで、みんなも祝福し、教室の雰囲気がよくなる」と。
(岸本裕史元:1930-2006年、神戸市生まれ、元小学校教師。百ます計算の生みの親。1985年 「学力の基礎を鍛え落ちこぼれをなくす研究会(落ち研)」(現「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会」)代表委員)

 

 

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