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教師に求められている能力とは何か、どうすれば身につくか

 教師に求められている能力は、
1 話術と専門的な知識
 従来の講義型授業で求められる専門的な知識や独演会的な話術である。
(1)話術
 話法が単なる技術として、その大切さが軽視されている。
 授業を成り立たせる要素の一つが「語りのうまさ」である。
 ベテランの教師に話術のたくみな人が多かった。
 例えば、語りの上手な次のような教師がいた。
 ある小学校の教師は、お話を低学年の子どもたちにして、45分間飽きさせなかった。
 話しの構成、間の取り方、声の強弱、身振りと表情に工夫をこらして話しをした。
 その教師は、大学生のときから、紙芝居、人形劇、寸劇などの表現活動を中心に行うサークルに入り、20年近く活動を続けている。
 話しの分かりやすさは、話しの構成力に負うところが大である。
 話しのおもしろさは、話し方と豊富な雑学的知識による。
2 子ども理解能力
 一人一人の子どもに対する的確な理解を行う能力。
 子どもの気付きや、驚き、感動や興味を尊重し、子ども独自のものの見方や考え方の筋道を重視する。
 教師が授業中、子どもの発言、行動観察、作品(ノート・ワークシート)等より、さまざまなことを把握すること。例えば、子どもたちは、
・何に関心をもっているか。
・何にこだわっているか。
・何がネックになって学習が進まないか。
・どのような発想をするか。
・どのようなことによって、考え方や見方が変わるのか。
・どのような筋道で物事を考えているか。
・どのようなことに学ぶ喜びや達成感を感じているか。
 授業の巧みな教師は、毎日の授業で、無意識のうちに子どもを理解し評価する活動を頭の中で行っている。
 将棋のプロ棋士は、一瞬のうちに最善の手を見つける。
 授業中の瞬時の判断こそ、力量の差が表れる場面である。
3 対応力(対話力)
 子ども理解に基づく臨機応変の対応力(対話力)である。
 コミュニケーション授業がうまい教師の授業に共通していることは、教師が自分も知らないこと・知りたいことを問い、子どもが知らないこと・知りたがっていることを伝える。
 教師が一方的に話すのではなく、子どもの話しを引き出し、それに応える。例えば、
(1)ある発見や気付きに導いていく能力
(2)一定の時間内に、一定の内容について対話を終える必要もある。
(3)クラス30人の勝手な思いと対話していくことができる。
 先輩の授業を参観して、実際に子どもの前に立って授業をして失敗し、もう一度やってみるという繰り返しが必要。
 対話を成り立たせるためには、相手の理解が不可欠である。
4 教師の能力向上のための研修
 「伝承」と「創造」の二つが必要である。
 将棋の格言・定跡のように、初心者は格言・定跡を使って基本を身につけ、「名人に定跡なし」とトッププロは、新しい手をひねりだす。
 教師の指導力向上のために、授業では、子どもとのコミュニケーションや、子どもの学習への評価(理解)などが重要である。
 小学校における指導力不足教員は、40~50歳代が多く、研修後、学校現場への復帰者が少ないことから、若手のうちに予防策を講じることが必要である。
 専門とする教科・領域を定め、時間外にも行える研究仲間との研究会方式が効果的である。
 教師の指導力向上のためには、
(1)「鉄は熱いうちに打て」と言われるように、素直に吸収できる教職5年目までの期間に、授業の基礎を身につけさせておくことが必要である。
(2)内容は授業研究に大胆に時間をおく
 若い教員が授業に集中できるよう、校務を精選する。
 服務事故の原因の多くは、指導力不足からくる、子ども・保護者・同僚とのストレスにある。
 経験を重ねるにしたがって、校務処理、学校運営などに比重を増やしていく。
 私の経験から言うと、学力の定着度が高い学校というのは、生活面でも落ち着きが見られ、学校行事や学級活動において、子どもがいきいき活動している。
(3)自己研修
 授業力の向上は、常に自分の授業の問題点を意識し、改善の努力を続ける姿勢が必要なのである。
 ある教科にしぼって、1年間、全授業を録音し、通勤途上に聴くという方法を勧めたい。
 私は、若い20歳代後半に、専門とする社会科のすべての授業について事前に学習指導略案を作成した。
 授業後、苦手であった話し合い指導の場面についての授業記録を起こした。
 板書を記録し、子どもの作品をすべてコピーして授業分析を行った。
 準備に3時間、記録と分析に3時間、計6時間かかった。
(4)授業が楽しければ学級崩壊はおこらない
 子どもは、「授業が楽しければ学級崩壊はおこらない」と思っている。(大阪大学の秦政春教授の調査)
 授業に自信をなくしている教師が多い。
 授業を苦痛に思うことが「よくある」「ときどきある」という教師が6割(同上)。
 授業がうまいと「あまり思わない」「まったく思わない」という教師が6割(同上)。
 忙しくて疎かになっている仕事の1位は、教材研究(39%)であった。
 大阪大学の秦政春教授は、
 「授業さえ、きちんとしていれば子どもはついてくるものだという自信が教師になくなったことが、学級崩壊に反映されていると思う」と述べている。
 子どもは、教師と子どもの人間関係づくりに精力を傾けるよりことよりも、授業の充実に力を注いでくれることを望んでいる。
 授業が充実すれば、教師に対する信頼感が生まれ、人間関係もよくなる。
 教師は専門職である。実際に何回も失敗を重ねながら、その資質や能力を高めていくものであろう。
 一心不乱に授業のことを考える、そんな毎日を過ごすことによって教員の授業力は高まる。そのことを後ろ押しする教員研修の在り方が、今、問われていると思う。
(鈴木義昭:東京都公立小学校教師を経て、元東京都教育委員会統括指導主事。指導力不足教員を対象にした研修に携わった後、問題を起こした教員を対象にした研修を担当した。多くの教員を見てきた経験から、メディアなどで提言を行った)

 

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