集中力とバランス感覚は、子どもたちに小中学校を通じて身につけてほしい一番大事な力です
社会に出て、自分のキャリアの基礎技術を得る、最初の大事な5年ぐらいが20~30代前半にあります。
そこでは体力と耐力が必要なわけですが、耐力を支えるのが「集中力」と「バランス感覚」です。ぜひ小中学校で身につけてほしい力です。
もし、子どもに集中力があるのなら、多少学力が低くても、夢は何かと語れなくても、大目に見てあげてほしいですね。
集中力を養う方法は、百ます計算や音読がすごくいいと思います。
今や世界中に広めようとしている陰山英男さんの百ます計算。
これで養われる力は計算力だけではないですね。
単純計算を繰り返すことで脳が刺激されて、脳の力、考える力が増すこともあるでしょう。
それ以上に集中力が増します。
あるいは「声に出して読みたい日本語」で有名な齋藤 孝さん推奨の音読も、毎日やることで、記憶力だけでなく、集中力が高まるすごくいい方法だと思います。
また、これらの方法が広まる前から、跳び箱を使ったり、ロボットを作らせたりして、集中力を高めたり、引き出す技術を持った先生が日本中にたくさんいるわけです。
こういう先生とぜひめぐり会ってほしいですね。
集中力は、本当に子どものころに身につけることじゃないかと僕は思います。
興味の対象が見つかったときに、集中力さえあれば、それが絶対に身につきます。
もう一つのバランス感覚は、主に小中高を通じて身につける力です。
昔は地域社会が豊かで、兄弟の多い子の兄貴分に鍛えられることがあったんです。
僕は一人っ子だから兄弟では揉まれなかったんですが、住んでいた公務員住宅の隣に5人兄弟のあきちゃんという子がいました。
あきちゃんが左利きだったもんですから、僕も一緒にお兄ちゃんに野球を教えてもらって左打ちになっちゃった。
そういうことが昔はきっといっぱいあったのに、地域社会もごそっとなくなった。
それに兄弟も親戚付き合いも少ないから、子どもたちは、親と子、先生と生徒という縦の関係と、友達の横の関係だけになりがちなんですね。
学校がこぢんまりとして暴力的ないじめがなくなった一方で、ナナメの人間関係ができにくいわけです。
世の中にいる厳しいおじさん、いろいろ教えてくれる優しいおばさん、お兄さん、お姉さん、そういうナナメの関係に揉まれていないので、人間の関係性や距離感が非常に学びにくくなっている。
僕は、ナナメの関係というのはすごく大事で、地域社会を学校の中に復興させなきゃいけないと主張しています。
とりわけ人間との距離感を学ばせるためには、今の社会はあまりにも過酷すぎます。
あまりにも核家族化し、地域社会がなくなり、学校も小規模化しています。
だから、人の関係に限らず、物やお金を含めた世界全体と自分との距離を学ぶ機会が少ないですね。
そういう、昔は黙っていても育った、まっとうなバランス感覚が、現在は育ちにくくなっていることを親は非常に意識しなくてはいけません。
小中学校を通じて、この集中力とバランス感覚はすごく大事です。これがあれば、周りにどんな人が現れても、そこから学びとる力が自然に育まれていきますから、自分の興味がどこへ向かっていっても大丈夫な子になると僕は思っています。
これが、小中学校でぜひとも身につけたいことの話です。
(藤原 和博:1955年東京都生まれ、東京都初の中学校の民間人校長として杉並区立和田中学校の校長を務めた)
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