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校長のあり方が学校を変える

 野口克海先生の印象を一言でいうと「スクルウォーズからそのまま飛び出してきた先生」というのがぴったりでしょう。
 叩き上げの教育論は実が詰まった具体的な話が多く、講演会での講話に涙が出るほど感動する。
 熱血先生なので学校の荒くれどもとのエピソードが耐えません。
 中学校に赴任早々に、職員室の机でふんぞり返っていた生徒に灰皿で殴られ、血まみれになって取っ組み合いをした話。
 勉強を一切しなかった落ちこぼれが「俺やっぱり高校行きたい」という告白から、毎夜泊まり込みでの特別個人指導をした話など、下手な落語家よりよっぽど面白い。実体験だというのだからさらにすごい。
 全国各地から講演に呼ばれ、本当に教育熱心先生です。
 野口先生の実体験からの講演内容には必ずと言っていいほどの共通項があります。
 それが「絶対に生徒を裏切らない。どんな状況でも子どもを信じ抜く」という姿勢でした。
 野口先生には言葉では言えない「覚悟」の強さを感じます。それはその信念があるからでしょう。
 その信念があったからこそ、決断力もまた大きい力がありました。
 野口克海先生が中学校教師のときに仕えた三人の校長はタイプが全然違っていました。
 望ましい校長像というのは、それぞれの持ち味でいいのだと思うと野口先生はいいます。
 三人ともそれぞれ何か一つほれさせるものを持っていた。
 一人は「ハート」、二人目は「冷静な判断力と知恵」、三人目は「力」にほれました。
 校長は自分の持ち味のなかで、教職員に、なるほどと思わせるものを持っているということが、大事なのだと野口は思っています。
 この三人に共通していることは、自分のいる学校をよくしたいという情熱を持っていたことです。
 野口先生は、校長先生たちを前にして次のような話をされたことがあります。
 赴任したらまず校長室に入らずに、主事室や給食室に挨拶に行き、その後は不登校の生徒の家を家庭訪問して、
「今度赴任した校長です。きみが登校したときに、このおっちゃん、誰やと思わないように挨拶に来た」と、言いなさいとのことです。
 野口先生は、心がけが違うというか、本当に子どもたちのことを一番に考えている人なんだなあと思います。
 校長の哲学として「静」と「動」があると野口先生は次のように言います。
「静」というのは「動かざること山のごとし」です。
 野口先生は、全日本中学校長会会長の話を聞いて、なるほどだなと思いました。
「うちの学校はゴミ拾いで学校を立て直した。やんちゃな子も、近所の方からありがとうと言われ、ほめられたことのない子が地域でほめられる」、
 だから「学校の特色は何ですか」と問われたら、「ゴミ拾いです。それで学校を立て直しました」と答えています。
 いろんなことをしなくても、うちの学校はこれでいくという学校長の信念。それはすばらしいことだと思います。
 私はこういう学校をつくりたい、私はこういう子どもを育てたいという動かざること山のごとしという校長の信念です。
 もう一つは「動」でありますが危機管理の問題です。
 野口先生が教育委員会に勤務していると、学校の様々な事故や事件が起こったときの初期対応のまずさ、危機管理の不徹底で、こじれて教育委員会に問題があがってくるときがあります。
 そのときは、手のほどこしようがないほど、保護者の不満やら苦情が渦巻いているという状態で、教育委員会のところに来ます。
 じっと事件や事故の報告を見ていたら、ああ、これが起こった最初の日に、校長先生が足を運んでいてくれたら、全て解決していたのになあと思います。
 初期対応のまずさという危機管理の問題です。
 学校経営が非常に複雑な今の時代で、様々な保護者がおられ、どれだけ日頃から危機管理がなされているかどうかということが問われています。
 十分に学校の危機管理の体制は整えておくべきだと考えます。
 ある校長先生にお聞きしましたら、私は必ず保健室の保健日誌は、一日一回必ず報告させ、今日は何という名前の子がケガをしたか、目を通して印を押すことにしているということです。
 学校がきちっとしているということも、大事だろうと思います。
 そういうことも含めた危機管理の体制を整えることが、今日、非常に重要になり必要になってきています。
 野口先生の好きな言葉は、「骨太、信念、協調、細心大胆」です。日ごろ仕事上で野口が思っていたことは、
(1)ドンとこい、ということです
 どんなことがあっても、うろたえるなということです。
(2)部下の面倒はちゃんとみるということ
 きちっと面倒を見て、安心して働いてもらうこと。
(3)自分を開くということです
 自分の思いや願いは絶えず職員に全部、話をします。トップに立つ者がどっちを向いて走っているのかを、部下の職員が知らなかったら、みんな困ってしまうからです。
(4)人間としてのつきあいも大切にします
 自分の弱さやプライベートなことも職員の前で裸になるというふうにしている。
(5)人を信頼する
 人を信頼しきって任せていくということが非常に大切です。任せてどうするのか考えさせます。責任は私が取ります。とことん信頼します。
(6)五、三、二
「五つ教えて、三つほめ、二つ叱って人を育てよ」と言われます。
 これは、いろんな意味があって、叱るよりもほめる方を多くしなさいよという意味もありますが、同時に最低二つは叱れよということです。
 先輩教師が若い教師を叱らなくなったと言われています。
 私はできるだけ、明るく、ネアカで仕事をするように心がけ、みんなの前で明るく大声を出して怒りまくります。
(7)不安と孤独
 長のつく者は不安で孤独です。人からどう思われているか、非常に気になる。
 確かに気にはなりますが、お互い気の弱い人間ですから、割り切るようにしています。
 割り切って、好かれなくてもいいと思うようにしています。
 まず、優先順位は、職務をきちっとやり切ることが、本来の仕事ですから、好かれようが嫌われようが、仕方がないと割り切るようにしています。
(野口克海:1942- 2016年大阪市生まれ、大阪府公立中学校教師、大阪府教育委員会課長、堺市教育長、大阪府教育委員会理事、文部省教育課程審議会委員、園田学園女子大学教授、大阪教育大学監事、子ども教育広場代表)

 

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