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不登校の子どもと親は、どのように指導すればよいのでしょうか

 金澤純三さんは元開善塾教育相談研究所長で、不登校の実践的な指導にかけては、わが国における第一人者といわれ、長期にわたる不登校も、わずか数週間で改善させる技をもつ。
 不登校の子どもも学校へ行きたいと思っているので、登校の支援をしてあげる必要がある。不登校の子どもを減らすには母親の健全化が欠かせない。
 金澤さんは講演で、興味深い話を次のように披露されました。
 私のところに来る子どもは,長期間学校を休んでいる場合が多い。
 母親が学校に相談すると,「温かく見守りましょう」とか「様子を見ましょう」と言われ、どんどん月日が経ち,どうしようもなくなる。
「様子を見る」という実態のない言葉は使わない方がいいだろう。「様子を見に行きましょうか」と言って家庭訪問をするなどまず行動をすることが必要である。
 不登校になる子どもは,長期の休み明けから学校へ行かなくなるケースが多い。なるべく早く学期内に戻すのが大切である。
 学校を休めば自分は悪いことをしたと思いこみ自己評価が下がる。この自己評価をどのように上げていくかが重要である。
「休んでもよい」とか「休んでもこうすればよい」と子どもに伝えるようにすればよい。ただ例外もあるが,休めばエネルギーが溜まるということはない。
 休めばエネルギーが溜まるなら,長期の休み明けに休むことはないからである。
 今の子どもたちは基本的に大変神経質である。小さいほうを大切にして,大きいほうを見過ごしている。
 また,今の子どもに特有なのは,他人の痛みに鈍感,自分の痛みには敏感で,バランスが取れていない。バランスが取れていない人は,他人の痛みがわからないのでいじめなどで相手を追い込んでしまう。
 先生たちも頭髪の指導にあるように,細かなものにこだわっている。
 1年近く登校拒否をしていて,久しぶりに学校に来た子どもに,髪の毛が伸びているから切りなさいというような指導をいきなりすると,こんなところには来られないと普通は思う。
 受け入れる先生は,不登校の子どもに対して家庭よりも温かくて居やすいようにしなければならない。みんなが来やすい学校にすることがまず大切である。
 頭髪がどうとか細かいことにこだわらない。指導力のない先生は,型を求める。
 弱い子どもや敏感な子どもがいるのだから,だれもが来られるように,先生は子どものそばにいてあげなくてはいけないのに,用事があるからといって離れてしまう。
 母親が,子どもが動かなくなり困ったと相談に来たときには急であってもきちんとやさしく応対してほしいものである。
 困っている子どもは,自分が困っているとは言えない場合が多いので,先生が家庭訪問をするということが大切である。
 家庭を見ると子どもの問題も見えてくる。神経質な家はきちんとしている。庭も整備され,玄関マットもきれいになっていると,子どもがずれたときに,何か騒動があるだろうなあと予想することができる。
 そういう家には,私たちは半ズボン,ランニングで行くなど失礼な格好で訪問するときがある。
 子どもは変な人だなと思うかもしれないが,警戒はしない。
 これは,スキを作り,打ち込み(攻め)させるねらいがある。経験のない人や頭の固い人は,真面目に行くのでうまくいかない。
 教育で歪んでくる子どもは母親に神経質な人が多く,ある一部分をよくしようとして全体をだめにしている場合が多い。まず母親と仲良くなるようにする。
 カウンセリングにしても教育にしても,必要なのは相手に好きになってもらわなければならない。相手を敬うことにより,好かれるようになる。
 家庭訪問の具体例として,お茶が出たらそのお茶を褒めたりすると,まず好意的に思ってくれる。
 お茶を飲んで今日は家の場所がわかったから帰ると言うと,大抵は呼び止めて子どもに会ってくれと言われる。
 このように,母親がまず先生を受け入れてくれなければ子どもは受け入れてくれない。
 次に子どもの部屋に通されたら,子どもの宝物を探し,それについての質問をし,褒める。まず本人以外のものを話題にする。
 えてして先生は,聞きたいことをいきなり聞こうとするが,子どもが言いたいことを聞くということが大切である。子どもが大切にしているものに先生が興味を示す。
 子どもは自分の大切なものに興味を持ってもらうと,自分に興味を持ってくれる,自分を大切に思ってくれていると思う。
 それによって安心感を得ているのである。先生たちはそういった子どもを見る目,気づく心を持ってほしい。
 帰るときは,子どもに玄関まで送ってと言う。最後に子どもに会って別れることが大切である。
 母親が出ると子どもと切れてしまうから,母親には出ないようお願いしておく。
 行動療法とは,再学習させることである。
 要するに「学校を休むと楽だ」と考えている子どもに,「学校へ行くと楽だ」というように考え方,感じ方を変えるのが私の言う行動療法である。
 心が変われば行動が変わると思っている人がいるが,行動が変わったら心が変わるという考え方である。行きたくなくても行かせると学校に行きやすくなる。
 今の子どもたちに共通している悩みとして不眠がある。私のところは8,9割の子どもが寝られないと言うが,実際には寝ている。
 そういう子たちは眠れないと感じているということを理解しなければならない。今の子どもたちは,不安とか不満とかいうのを「何々感」という形で表すが,これからの生徒指導はそれにどう付き合っていくかということである。
 本当は寝ていると言ったら子どもは自分のことをわかってくれないと思って関係が切れてしまう。そのときに,躁鬱タイプと神経質タイプによって言い方を変える。
 例えば,11 時に寝るときに,躁鬱タイプの子どもには 11 時「少し前」に足を温めなさいと言い,神経質タイプには 11 時「2分前」に足を温めなさいと言う。
 生徒指導では,神経質な子どもには厳密にやり,躁鬱タイプの子どもには曖昧にやるというのが大原則である。
 言い方は違っても,「足をお湯で温めなさい」と言った次の日に「どうだった?」と聞く。
 お湯で温めなさいとか塩を入れなさいといろいろ方法を変えて「どうだった?」と共感的に聞くことにより,子どもはつながりができたと感じ,自分を見てくれているという安心感が,不眠感を消してくれる。
 共感的に理解をするということが大切である。
 ところが下手な先生は欠点ばかりを指摘する。欠点をなくせば長所だけが残るという数学的な考えで,欠点だけとろうという発想でいくと子どもは神経症,脅迫症状を起こしてくる。
 生徒指導上の共感的理解とは,「次の一手を早く打てるか」ということである。
 この子どもには今どんなことが必要なのか,言葉や態度などから先生がいかに的確に対応できるかが子どもの心地よさと関係してくるので,共感的理解を中心にやっていただきたい。
 子どもを学校に連れて行く「登校訓練」をやるが,これは学校に行っても危険でない,安全であるということを体験的に理解することである。
 人に見つからないように行こうと言って連れて行くと,意外と行けるようになる。
 実際に行ってみて嫌なことがないと,体験的に理解したということになる。
 子どものカウンセリングで必要なのは「癒す」ことではなくて,「鍛える」ことである。
 不登校の子どもの家に行くと,畳なのにベッドで,きれいな絨毯が引いてある。
 手をかけたら子どもは良くなると思うことが,子どもをだめにする。
 子どもを癒す必要はない,若いうちは鍛えなければならない。弱い子を強くしなければならない。ストレスのない社会はないのだから。
 今の子どもに欠けているのは「耐性」である。耐性を獲得するには失敗経験をすることである。「我慢」=「鍛える」ということかもしれない。
 だからといって失敗しても大丈夫だよと言うと身構えてしまう。ところが知らず知らずのうちに失敗して,それを乗り越えて目標達成すると耐性ができる。
 例えば,マッチで火をつけるのを 19 回失敗して 20 回目に成功させるようなスモールステップで成功体験をしていく。
 これを「単位操作」と言うが,この子どもに欠けているものを本人が意識しないように体験させていくのである。
 次に「 けんちゃん(仮名,中学2年生男子)」の実践について述べます。
 2年間学校に行ってないと母親から電話相談が2月にあった。
 家に行き,部屋に入ると,雨戸が閉まりうす暗く,子どもはコタツに体を半分入れて寝ていた。
 母親も一緒に聞きたいと言ったが,うまくいっていない人と一緒に話をしてもうまくはいかないので断った。
 彼はミイラのようで,目だけを出して動かなかったが逃げずにいるので,拒絶していないと判断し、話をした。
 帰り際に「もう少し楽にしなよ」と言ったら,彼は体を固くした。
 これは私を拒否し抵抗するための反応であるので,逆に「体を固くしてみな」と言うと,体を固くしてこれ以上できなくなったとき,「もういいよ」と言ったら息を吐いて体を緩めた。
「たいへんだったね」と言うと,座り直し,「はい」と答えた。すると,急に母親が「けんちゃん今何されたの」と言って入ってきた。
 子どもが少し変化すると親はおおげさに反応するので,子どもは変化を親の前で表せない。
 しゃべらない子や,昼夜逆転の始発点も親がしょっちゅううるさく言う場合が多い。
「今子どもと話をしているから口を挟まないでください」と言っても,子どもの声を久しぶりに聞いたので言うことを聞かない。
 しかたないので彼に自分の部屋に行っていてと言うと,「はい」と言って立ち上がり部屋を出て行った。
 母親も後を追おうとするので待ってと言っても聞かず行ってしまった。
 母親はにこにこして戻ってきて「けんちゃんが一人で暗くて寂しくなるといけないから電気とテレビをつけてきました」と言った。
 ルソーが『エミール』の中で,子どもを不幸にするには,子どもが望むことを親が全部やってしまえばいいといっている。これが神経質タイプの不登校の主流である。
 いかに親を安定させるかが課題といえる。
 彼に「学校で会いたい人はいないか」と聞くと,養護教諭の先生に会いたいと答えた。
 なぜかと聞くと,クラス発表の日に学校に行き自分の名前があったので安心したのだが,そのときに神経を遣って疲れて倒れた。
 小学校時代の友達6人が保健室へ連れて行き寝かせてくれ,まわりで騒いでいたところに先生が来た。騒いでいたことを怒られるかと思ったら,養護の先生は自分がいなかったことを詫び,6人にお礼を言ったので,彼はそのときのお礼を言いたいと思っていた。
 そこで,先生が今学校にいるか確認しようと話し「だれにも会わないで学校まで行ける道を知っているか」と聞いた。
 たいていの子どもは,だれかと会うのを避けて学校に行けなくなる。休んでいると二次障害が出て,休んだことで自分は悪い奴だ,ダメなんだと思っているからみんなに会えない。だから,会わなければ行ける場合が多い。
 だが先生が「だれにも会わなければ行けるだろ」と子どもが恥ずかしいと思うことを直接言ってしまうと,結局は行かない。
 自分が分析したことをその子どもに言わないでいただきたい。自分が分析されたというのは,子どもにとってはつらいことである。
 翌日の午後保健室へ行き,こんにちはと言って入ると,彼に描いてもらっていた似顔絵のとおりの先生がいた。
 先生はすぐに立ち上がり,笑顔で迎えてくれ,担任の先生を呼んでくれた。担任の先生も喜び,出席を取ってもよいですかと聞かれたのでお願いしますと言った。
 彼は相当緊張しているので,先生にはすぐに出直すと言って帰った。
 帰るときに,ここにタンポポがあるとか水がわいているとか言いながら帰ると,そのうち「あそこにすすきがまだ生えている」と子どもの方から言ってくるほど落ち着いてきた。
「君はいい目してるね」と,どうでもよいことを褒める。
 彼と家に帰り,私だけまたすぐ学校に行き,先生に「出席だけ取ったらどうでもいいような話をしてすぐ帰らせてください。まず学校は,安全で安心なところだと思わせてください」と依頼した。
 少しずつ慣らせていき,人がいない部屋などに行かせてみる中で,教室に入る準備のために,どの辺の席がいいか聞いていく。
 保健室登校は1週間くらいがよく,その間にクラスの生徒には,昨日まで来ていた生徒のように振る舞うように話しておく。
 ある時,先生にわざと忘れ物をしてもらい,誰かに取りに来るようにしてもらう。生徒はだれでもよい。その生徒には,おはようと言ってもらい,あとは何も言わないようにしてもらう。
 翌日,計画通り,先生が万年筆を忘れ,それを取りに子どもががらりと開けて入ってきて,おはようと言って帰っていた。
 彼は緊張していたが,「よく頑張ったな,だんだん会えるようになるから」と言うと,彼も「はい」と返事をした。
 それから,教室に入るまでの不安解消表を作る。教室に入るまで,今日は職員室の前,今日は教室が見えるところ,今日は教室を外から覗くというようにイメージで練習させる。イメージでできたことは動きやすくなる。
 しかし,実際にはイメージより手前で止まる。そういうとき8秒間息をして力を入れ,8秒間抜く,これを繰り返していくと教室まで行けるようになる。
 少しずつスモールステップでやる。本人がもう一度やり直したいという気持ちにそってやるとうまくいく。
 テーブルカウンセリングのために,ご飯を食べさせてくださいと頼んだとき初めて祖母が出てきた。祖母は彼の魚を取り食べさせた。
 私はやめてくださいと再三言ったが,やめなかったのできつく叱った。なぜかと言うと,本来言うべき父親がいたからである。
 祖母は,立ち去っていくときに母親に「あなたが食べさせてやって」と言った。
 家族全体が病んでいたから彼は問題行動を起こして,まともな家庭にしようとしたのではないかと思う。
 子どもが3,4年休んでもあまり関係ない。休んでもあとでやるぞと思えば,必ずやれる。
 もし身近に「休んでしまったが,僕の人生間に合わないのではないか」と思っている子どもがいたら,
「やる気になって死ぬ思いでやればできるんだ,両親も死ぬ思いで働いているんだ」と言えば,安心する。
 指導をするときはなるべくユーモアをもってやってほしい。厳しくて温かいというのがいい。
 やさしくて冷たいというのは,自殺する子どもの家庭に多い。
 よく子どもと遊ぶこともよいが,子どもの世界に入り込まない。特に母親にこれを注意していただきたい。
(金澤純三:行動療法的アプローチを主として神経症的不登校の援助指導法の研究・開発に取り組む。日本の不登校相談の草分け。不登校にかかわる実践的指のわが国における第一人者といわれる。文部科学省の委員を歴任。元開善塾教育相談研究所長)

 

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