学級の生徒を指導するとき「おまえを愛してるから、俺は偉い!」が口癖になった
教師として、子どもと人間関係を築くことはとても大切です。特に、思春期まっただ中の中学生と信頼関係を築くことは、難しい場合が多いです。
まだ竹内和雄先生が新任教師の時の話です。
Aくん(中学2年生)は、竹内先生のクラスの生徒で、いわゆる問題生徒で、竹内先生に反抗ばかりしていました。事件が起こったのは五月半ば。
そんなAくんが社会の授業で、教科担当のB先生(五十代男性)と衝突しました。
授業中、私語をやめないので、きつく叱られたそうです。
非行を繰り返すグループでリーダー的な地位にいたAくんは、みんなの前で叱責されたこともあって素直に謝れません。
学級委員が職員室に「先生、大変です! AくんとB先生が!」と駆け込んできました。
たまたま竹内先生は空き時間で、職員室にいましたので、教室に急ぎました。
教室では、正にAくんとB先生がにらみ合って、すごい表情で言い合いをしています。
Aくんは、今にもB先生に殴りかかろうとしているのを、クラスの生徒たちが一生懸命止めているところでした。
若かった竹内先生は、どうしていいのかわかりませんでしたが、背中から、はがいじめにして、廊下に無理やり引っ張り出しました。
Aくん「やめろや、離せや、ボケ!」
竹内先生「誰に向かって、物言ってんねん!」
Aくん「教師が何様じゃ!? えらいんか!」
売り言葉に買い言葉。どんどんエスカレートしていきました。とっさに、
竹内先生「俺は、最高にえらい。俺にえらそうなことを言うな!」と言いました。
Aくん「は~、笑かすな! 教師のどこがえらいねん?」
竹内先生「お前を愛してるから、俺はえらい。だから俺のいうことを聞け」と怒鳴りました。
Aくんの力がすっと抜けたのを感じた竹内先生はたたみかけました。
竹内先生「お前を愛してるから、俺はえらい。世界でたった一人のお前の担任やぞ」と一気に話しました。
竹内先生「俺はお前の担任やぞ。担任やから、お前のこと、愛してるに決まってるやろ」
竹内先生「だから俺はえらい。俺の言うことを聞け」
竹内先生は自分で話しながら、涙が出てきました。どういう涙なのかわかりません。
竹内先生は自分でも何をしゃべっているのか訳がわかりませんでした。
Aくん「わかった、離せ」と静かに話し、ゆっくり自分の席に戻りました。
そして、山本先生に向かって「授業、はじめろや」と言いました。
周りに集まっていた生徒たちを座らせ、竹内先生はこう宣言しました。
「Aくんはもう大丈夫です。残り二十分授業がある。みんなしっかり勉強しなさい」
副主任の先生が「Aくんを別室で指導してから授業を受けさせるべきではないか」と心配してくださいました。
しかし、山本先生は「大丈夫です。担任は僕です。任せてください」と言って聞きませんでした。今思うと傲慢な新任だと顔から火が出そうです。
もちろんAくんは、最後までちゃんと授業を受けました。
休み時間にクラスの女子たちが職員室に走ってきて「先生、かっこよかったぁ」と絶賛してくれましたが、なんであんな言葉がすらすら出てきたのか、自分でも不思議です。
それ以来、山本先生は「愛してるから、俺はえらい」というフレーズをずっと使っています。
考えてみたら、担任は、クラスの子を愛してるから、やっていけるものです。
もっと言えば、愛することができるように、日々、努力しなければならないと思っています。
(竹内和雄:1964年生まれ、公立中学校で20年間、生徒指導を担当し、寝屋川市教委指導主事を経て兵庫県立大学准教授。課題を持つ子どもへの対応方法について研究)
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