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英語嫌いだったのに、なぜ予備校の人気英語講師になったのか、勉強好きな子どもにするにはどうすればよいか

 人気コミック「ドラゴン桜」の英語教師のモデルでもあり、東大合格者から「先生のおかげで英語が克服できた」と厚い信頼を寄せられるカリスマ英語講師、竹岡広信さん。
 意外にも、学生時代は英語が嫌いだったという。その彼がなぜ嫌いなものを使う仕事を選んだのか。
 多くの受験生たちから支持される独特の教え方とは。親や教師は子とどう向き合うべきなのか。
 そして、私たちが決断に迷った時、何を決め手にすべきなのか。竹岡さんに教育や生き方について大いに語っていただいた。
 竹岡さんの父親が塾長を務めていた塾で、京都大学工学部の学生だった竹岡さんは高校英語を教え始める。
 竹岡さんは、英語が嫌いだったし、生徒に教えるなんてムリと思ったんですが、英語は大学入試に必須の科目。高校生には避けて通れない上、自分は国立大学に合格したから教えられるかもしれないと引き受けました。
 生徒たちもほとんどが英語嫌いだった。しかし、竹岡さんは自分が「やみくもに勉強」した経験から、とにかく必死で教える。
 生徒たちも全力でついてきた。そして、運命の合格発表。結果は男子全員が、不合格。
 竹岡さんは「あぁ、しまった。彼らをつぶしてしまった」と悔やんでも悔やみきれない気持ちです。
 生徒たちは竹岡さんの授業に感謝してくれました。しかし、竹岡さんは「自分に教える力がなかった。あまりにも罪が大きい」と。
 そこから、竹岡さんの葛藤が始まる。塾には次の学年の生徒たちが既にいた。今度こそ合格させるためにも英語教育に本腰を入れようと、文学部への編入学を考える。
 迷いに迷って、ふたりの恩師に相談する。
  工学部の教授には「どっちに進んでも、確実に後悔する」と言われました。だから「後悔の少ない方に行きなさい」と。
 高校時代の先生に相談すると「自分にとって不利な方を選べ。自分を抑えて、世の中の役に立つ方へ進みなさい」と言われた。
 実はほのかに、竹岡さんは英語教育に疑問も感じ始めていた。英語嫌いがこんなに多いなんておかしい。英語をこれだけ学んでも話せないのはおかしい。今までの英語教育は変えるべきなのではないだろうか、と。
 竹岡さんが出した結論は、文学部米文学科への編入学だった。
 文学部では、工学部を卒業しての編入学だっただけに、自らハードルを高く設定。成績は「優」でなければならない、と心に誓う。
 全部優を取れるほどきちんと理解できていないと思って。このままではダメだ、思いきり勉強に打ち込める環境をつくろうと、休学しました。
 勉強に専念するための休学。なのに待っていたのは「パチプロ」のような生活だ。パチンコ店へ通いながら「弱いな俺」と自分を嘆いた。
 そんなある時、競馬に異常に詳しい人と知り合ったんです。
 過去のレース結果から、それぞれの馬の体重、親馬の情報までこと細かに知っている。でも、その人はそれを覚えようとして覚えたわけじゃないんです。
 「好きだから」自然と自分の中に入っていく。
 コレだ!好きじゃないと始まらない。「好きじゃないと伸びない」と思い至ったのです。
 やっぱり今までの自分は英語を好きではなかった。
 「イヤイヤやっていたんだ」と竹岡さんは「好き」というチカラの大きさに気づく。
 つかんだ真理は「好きだからこそ伸びる」だった。
 そして、好きになるために「ゆっくり学ぶ」スタイルへ変えていく。ゆっくり勉強することで英語が楽しいものになった。
 復学すると一年間で94単位を取得したのだった。
 では、好きになるために「ゆっくり学ぶ」方法とはどんなものなのだろう。
 英単語のイメージをつかむと、英語がぐっとおもしろくなる。
 生徒が竹岡さんに「先生、『triumph』がどうしても暗記できない。どうしたら覚えられるんだろう」と聞かれ、単語について調べ始める。
 triumphの成り立ちを見ると、語尾のphはphoneに由来し、音という意味。umphで勝利の歌(音)を歌う、になります。
 ところで、私たちは祝いの席では何をしますか? そう、万歳“三”唱。つまり“三”を指すtriが語頭にあるわけです。
 外国でも勝ちどきは三回なんですね。triumphは勝利の歌を大合唱するということで、大勝利という意味になるのです。
 ちなみに大勝利の時に奏でられるのが、トランペット『trumpet』(trumpはtriumphの変形)。なんだかおもしろいと思いませんか。
 成り立ちのほか、単語の持つイメージがわかるとぐっと覚えやすくなるという。
 たとえば、spring。春、バネ、泉・温泉を指しますが、それぞれの意味に関連性を感じませんよね。
 春というと、日本人の感覚では穏やかで優しいイメージだけど、イギリス人にとっては厳しい寒さの冬が終わり生命がわきだすイメージ。
 「爆発するようなエネルギー」を感じるそうです。その感覚で見直すと、生命が一斉に息吹く春も、弾けるバネも、わきだす温泉も、確かにspringですよね。
 たったひとつの単語にも奥深い世界が広がっている。
 興味を持てばおもしろいし、納得したら簡単には忘れない。
 自分のペースで、自分が納得するまで向き合ってみる。
 それが、竹岡さんの「ゆっくりと学ぶ」ということ。
 自らゆっくり学ぶことで英語が楽しくなったように、生徒たちへもそのスタイルを貫いている。
 しかし、受験に「ゆっくり」は許されない気もするが、どうだろう。竹岡さんは、
 「確かに、私も以前は“丸暗記”を生徒に求めていました。単語を間違えたら100回書いて覚えろ、という具合に。しかし、これは教師の“自己満足”に過ぎません」
 「生徒が自分からやらない限り、何も身につかない」
 「教師の役割は、きっかけづくり。英語を「おもしろい」「好き」と思えるようにすることです」
 「そのためには、一つひとつ丁寧に教えた方がいい。一見遠回りに感じますが、しっかりと記憶に残り、結果的に近道になるのです。遠回りこそ近道です」
 「おもしろい、好きと思えば、子どもたちは走り出す」
 「いったん走り始めたら、放っておいてもひとりで走り続ける」
 と竹岡さんは言う。
 だが、走り出すのを「待つ」のは親としても教師としてもつらいことだ。竹岡さんは、
 「待つのはつらい。だけど、こどもたちをほめて、ほめて、ほめて待つんです」
 「子どもの力を限定してしまうのは“家庭、地域、学校”です。勝手に限界を決めつけて、子どもの能力や心の成長にブレーキをかけてしまう」
 「どんな子でも、アホと言われ続けたらアホになります。だから、ほめるのです」
 「しかも、本気で。子どもは敏感に気持ちを察知するので、本気でないと意味がない」
 「本気で信じ続けて待つこと。そうしたら、彼らは変わります」
 という竹岡さんも「辛抱し過ぎてハゲそうだ」といつも言っている。
 子どもを信じ続けたら、変わる。
 大切なのは、相手のあるいは自分の力を信じて一生懸命になること。
 ひとつのことにひたすら打ち込むことで、きっと道は拓ける。
(竹岡広信:1961年京都府生まれ、英語教師。竹岡塾主宰。駿台予備学校講師(主に関西エリアに出講)ドラマ、漫画『ドラゴン桜』に登場する英語教師のモデル。先生を対象にした講演会。テレビ「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演)

 

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