教師はカウンセリングを学ぶと自分が好きになってくる
カウンセリングを学ぶと、問題から少し距離をとる感性が育ってきます。
家族や子どもたちの焦りに巻き込まれず、全体の場の雰囲気を理解しながら対応する力が生まれてくるのです。
カウンセリングを勉強すると、教師自身の心の中での葛藤も生じます。
しかし、それは自分自身を見つめ直すトレーニングなのです。
たとえば、子どもたちとの関わりの中で、過去の自分が経験した「つらい思い」や「心残り」を体験したり、自分の子どもに対して抱いていた「自分の思いや心残り」の気持ちを子どもに押しつけたりします。
過去の思いから生まれる感情を子どもたちにぶつけたりもします。
自分の感情を関係のない子どもに映し出してしまうのです。
しかし、カウンセリングを勉強していると、そのような感情がどのようにして起きてくるのかが自分にも明らかになり、その感情をどう処理したらよいかがわかります。
また、教師自身が一人の人間として、どのように周りの人々に影響を与え、周囲と関わっているかも見えてきます。
それは、自分の正直な姿であり、その姿が一人の人間として愛しくなり、自分を認めることができるようになっていきます。
このような経験が人間として自らを大きく成長させてくれるのです。
カウンセリングを学ぶことで、自分が成長できたと感じるのは「自分が好きになってくる」からです。
いろいろな事態や状況に対して、自分を肯定的に見ることができるようになるのです。
この見方は、教育の現場では重要なことです。
教師は子どもを指導するときに、注意や禁止といった指導をしがちになります。
子どもたちと肯定的な関わりが少なくなってくるのです。
子どもたちと向かい合うためには、教師自身が自分を肯定的に受けとれるようになる必要があります。
そうなることによって、子どもたちとも肯定的な関わりができるようになるのです。
それができてこそ、教育の喜びをより感じとることができるのです。
(上野和久 1953年生まれ 高野山大学准教授、臨床心理士カウンセラー。和歌山県公立高校副校長、和歌山心療オフィス所長を経て現職)
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