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子どもたちの学習態度を育てるにはどうすればよいか、また机間指導中に行うべきことなんでしょうか

「白井さん、あれは授業ではありませんね。」
 新任の時、初めての授業研究が終わっての帰り道、歩道橋の上で当時の校長であったH先生からいただいた言葉です。
 自分なりにがんばったつもりであり、授業後の研究協議会でも厳しい意見をいただかなかっただけにショックでした。
「模造紙何枚もの資料を作ったのに…」
「睡眠時間を削って指導案を書いたのに…」
 今考えれば、H校長先生の言葉がよくわかります。
 せっかく作ったからといってすべての資料を広げれば、子どもたちは混乱するばかりです。
 授業は私の努力を見せる場ではありません。
 また、睡眠不足は私の準備不足から来たもので、子どものせいではありません。
 むしろ、そんな状態で授業をしたことを子どもたちに謝らなければならないところです。
 つまり主語がすべて自分であって、子どもたちが主語になっていないのです。
 当時はそのことに気付きませんでしたが、この厳しい言葉が、授業について考える出発点になったのは確かです。
 幸いにして、私はたくさんの授業を見せていただく機会に恵まれました。今までに見せていただいた授業の数は、二千本近くになるのではないでしょうか。
 これまでたくさんの授業を見てきて、とても残念に思うのは、学習態度は小学校の低学年の方がしっかりしている場合が少なくないことです。
 学習態度を向上させるのに一番効果的なのは、新年度早々に「○年生らしい姿とは何か」について十分に話し合わせ、めざしたい○年生像を一人ひとりの子どもにしっかりとイメージさせることだと思います。
 その際、具体的な行動の仕方や態度だけでなく、それがなぜ求められるのかということについても十分に話し合わせておくことが大切です。
 また、話し合いの基本的なルールやマナーについて集中的に指導しておくことも有効です。
 年度当初、学級で話し合っておいた方がいいことはたくさんあるはずですから、それらを話し合わせる中でルールやマナーを身につけさせていくのです。
 高学年であれば、下級生の存在を意識させるというのも、自らの行動への自覚を高めていくうえで有効な方法です。
 機会あるごとに、下級生が君たちから何を学んでいるかということを、特にプラス面を中心に伝えていくのです。
 子どもたちの学習態度を高めるために、他の先生方の力を借りるということも大切です。
 なるべくいろいろな教師に教室に来てもらって、授業の仕方だけでなく、子どもたちの様子についても見てもらい、批評してもらうようにするのです。
 なぜこのようなことが大切かと言いますと、知らず知らずのうちに学級の雰囲気やスタイルのようなものができてしまい、教師も子どもたちもそれに慣れてしまって、その中の改善すべき点が気づきにくくなってしまうからです。
 反対に、見てもらって教師からほめてもらった場合は、子どもたちにそれを伝え、共に喜び合うようにします。
 子どもたちにとってほめてもらうということは大きな自信になり、さらにがんばっていこうとする意欲につながっていきます。
 机間指導中に行うべきことはなんでしょうか。
 机間指導は、
(1)子どものつまずきを早期に発見し、適切な手だてを講じるようにします。
(2)よい点を認め、励ますということです。
「この考え、すばらしいよ」と声をかけたり、ノートにその場で花まるを書いたりすると、ふだん発言をためらいがちな子でも発言するようです。
 先生に認められ自信が生まれるからでしょう。
(3)授業の組み立てに役立てるということです。
 たとえば、
「Aさんがノートに書いている疑問は目標と関連が深いから、全員の学習課題にしていこう」
「Bさん、Cさんの順に指名してそれぞれの解き方を説明させ、共通点と相違点を考えさせよう」
「Dさんが個性的な考え方をしているから、紹介しみんなの見方を広げていこう」
 と、その後の授業展開をイメージしていくのです。
 机間指導の際に座席表を活用すると、授業の組み立てや、記録や資料としても役立つでしょう。
 各自が自分の考えをまとめているときに、座席表に簡単にメモしていきます。
 そのメモした座席表の情報をもとに授業を組み立てていくと、授業はふくらみのあるものになります。
 また、このメモした座席表を保存していくと、子どもたちの学習状況をとらえるための資料となりますし、通知票の所見を書く際に活用すれば記述が具体的なものになります。
 机間指導中に子どもと会話する場合には、しゃがみこんで子どもと目の高さを合わせて話すことが大切です。
 また、個別指導しているときも、常に全体に目配りしている必要があります。
(白井達夫:川崎市立小学校教師、横浜国立大学附属横浜小学校副校長、川崎市総合教育センター教科教育研究室長、川崎市立小学校校長を経て横浜国立大学教育デザインセンター主任研究員)

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