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今の子どもたちは、どのような問題を抱える子どもが多いのでしょうか、どうすればよいか

 子どもが思春期に入るというのは、人のこころの影の部分に気がつくということでもあります。
 鬱屈した葛藤を抱かえるようになることは、子どもが思春期に入ったということです。
 無邪気だった子が、親に否定的な目を向けるようになったりするのは、親にとってもきついことです。
 でもそれは、子どもが自分について考えるようになるために必要な道のりなのです。
 「本当は思い切り本人に向かって言ってやりたいことがあるけど、我慢しよう」というように、自分の衝動をどこかで自覚しつつ、それを止める自分もいるという両極の気持ちを抱かえることができるのが、葛藤の基本である。
 それがあるがゆえに、未来に起きるであろう自分と他者の不利益を予想して、自分の行動を社会化させていくことができるようになります。
 もちろん、ついつい言い過ぎたり、行動に出てしまって、トラブルになることもある。
 そういうことをした後で、自己嫌悪にさいなまれたりする。
 これが今までの「ふつうの」思春期のありようだったのです。
 ところが、他人のことをまったく考えられず、自分の衝動や欲望だけに忠実で、罪悪感もない中学生や高校生が増えてきたという話が学校の先生方と話しているとよく出てくるようになりました。
 カウンセラーとして学校現場にいても、悩みがあって相談をする子どもが以前よりも減ってきている。
 カウンセラーのところに話しに行こうとする子は、自分のことや人間関係で葛藤や悩みをもっている。なので、治療もできて、変化していくという経過をとることができるのである。
 ところが、人間関係でトラブルや問題行動の多い子が先生に勧められて面接室にやってきても、何度面接しても表層的な「フツー」の話しかしないか、周囲の人たちへの悪口で終始するというようなことも珍しくない。
 そして、以前ならば中学生の相談で私が聞いていたような人間関係の悩みに、二十歳を過ぎてから、どうかすると、30~40歳代になってから初めてぶつかる人の話を聴く機会も増えてきた。
 さまざまなことで悩み、葛藤するのが思春期だったが、目の前の「フツー」の子の思春期には、当てはまらないケースが増えてきています。
 どのような問題を抱える子どもが多いでしょうか
 学齢期の子どもに関しては、最近は発達障がいではないかと心配して、親に連れて来られる子どもが増えています。
 またネットの問題、特にLINEやtwitterのトラブルで心の問題を抱えることになった思春期の子どもや、子どものスマホ使用が長すぎることで不安になった親御さんの相談も増えています。
 LINEやTwitterなどの短文でやり取りをするコミュニケーションは、まだ書き文字での交流が訓練途上の子どもたちにとって、実は難易度が高いツールです。
 どう読み取っていいのかわからないような表現のやりとりは、疑心暗鬼を呼びやすいのです。
 顔を合わせて話していれば誤解が生じることなどないことでも、言葉のニュアンスがうまく伝わらず人が怖くなったり、その不安を払拭しようとして逆に攻撃的になったりしてしまうこともあり、それが深刻なトラブルの原因の一つになっていると感じます。
 それらを解決するための糸口は、とにかく実際に顔を見て会うというオフラインの付き合いを増やすことが大事だと思います。
 コミュニケーションというのは、言葉が占める割合よりも、その時のその人の表情や、声のトーンによって伝わる部分が圧倒的に多いものです。
 LINEやメールだと、何か怒りを向けられているように感じていたけど、会ってみたらそんなニュアンスは全然なかったということは大人でもあるように思います。
 実際に会ったときの感覚を大事にすることが重要だと思います。
 また親や学校の先生だけでなく、それ以外の大人と話す機会を敢えて作っていくことも大事かなと思います。
 そうすると、世界が少し広く見えて、息がしやすくなる子もいると思います。
 そのような安心して会える大人として、この相談センターのスタッフや大学院生を求めている子もなかにはいます。
 また今は「スマホ子守」と言って、子どもが泣いたりぐずったりするとスマホやタブレットを持たせることも一般的になってきました。
 手伝ってくれる人がいないなかでの子育てはほんとうに大変なので、これも仕方がない部分があります。
 しかしいつでもスマホに任せてしまって二次元の刺激に興味がいく環境に慣れてしまうと、二次元の中で気持ちを抑える癖がついてしまいます。
 そうすると本当に困った時に生身の人にどうSOSを出したらいいかがわからなくなるという危険性もありますね。
 プレイセラピー(※)で、今までいろんな理由で表現できなかったことを表現する機会を与えると、子どもはそれだけで変わる可能性があります。
 もちろん、そういうことが起こるためには一緒に遊ぶセラピストには専門的な知識が必要になってきます。
※プレイセラピー(子どもの心理療法)
 子どもは、大人のように自分の行為や気持を言葉にしてうまく伝えることはできません。そのため、言葉に頼らない遊び、描画、ゲームの方法で、子どもの困っている問題、症状にアプローチしていきます。
 治療者との遊びや会話の中での、相互交流を通して、子どもが安心感をもって自分の気持ちを表現できるように手助けをします。
 遊びの表現の中に、子どもが困っていることが表現されていきますので、治療者がそのことを理解し、子どもとの相互交流の中で、問題が解決していくことが促進されます。
(岩宮恵子:1960年鳥取県生まれ、臨床心理士、臨床心理相談室を個人開業 、島根大学教授)

 

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