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保護者を巻き込む保護者参観の授業で保護者に安心感を

 保護者を巻き込む授業で保護者に安心感を、と細水保宏先生はつぎのように述べています。
 保護者がいる前で授業をするというのは担任がナーバスになることが多く、つい無難な授業を選択しがちです。
 細水先生も昔は算数で簡単な問題を出して全員が解けるようにしていました。
 でも、問題が易しいと、子どもたちはすぐ飽きてあとは遊んでしまいます。
 保護者は「うちの子にはこんな易しい問題は合わないわ!」と担任批判が始まってしまいます。
 そういった傾向を見て細水先生は、保護者会ではまず担任の教育観を見せるべきだと思うようになりました。
 例えば、今の教育で足りないのは、授業で子どもが間違える経験が少ないこと。
 間違える経験をする授業を考えました。
「間違えさせる」教材を用意すれば、保護者も巻き込むことができます。
 細水先生が行った五年生「円と正多角形」の授業では、折り紙とハサミを使いました。
 折り紙は教材開発に適していて、ノートに貼らせると子どもも喜びます。
 100円ショップで大量に買い教室に置いてあります。
 では、折り紙を対角線に合わせ(2分の1)て半分に折ります(4分の1)。さらにもう半分に折ります(8分の1)。
 すると8分の1の三角形ができるはずです。あとはハサミで切るだけ。
 授業では、まず細水先生が手本を見せます。
 折り紙を折って、最後に「いい? 一本の直線で切るんだよ」と言って切る。広げてみると、きれな正八角形。
 細水先生はこの作業を、クラス全員の子どもたちと保護者にも折り紙を配って切ってもらいます。
「では、折り紙を開いてみましょう」と細水先生が言うと、机の上に一斉に開かれた折り紙は、正八角形と思いきや、正方形、手裏剣・・・・。「え~、なんで」ざわめきが教室中に広がります。
 実は、三角形の切る箇所によって、できあがる形が変わってしまうのです。保護者も間違えているわけですから、わが子が間違えても腹が立ちません。
「みんな、間違えて当たり前。ここで成功すると算数的素質がありすぎ。先生の立つ瀬がない」と言いながら、切った折り紙を黒板に貼っていくと、正八角形とそれ以外の図形との違いが見えてきます。
 正八角形の勉強をするとき、そうでない図形をもってきて比べたほうがやかりやすいこともあります。
 ですから、あえて間違いの図形を貼って違いを見ます。
 算数的活動とは、実はこういうことを言っているのではないでしょうか。
 細水先生が「どこが違うかな?」と尋ねると、賢い子は切ったときの折り目の長さが違うことに気付き始めるでしょう。
 どう切ると、正八角形になるか皆で考えた後、今度は正方形や手裏剣にするにはどうすればいいかも考えました。
 最後に、子どもたちに、つくった図形をノートに貼らせます。
 ノートには間違えた原因を書かせてもいいし、図形に目玉をつけさせたりしてアート風にまとめさせてもいいでしょう。
 この教材で、私は親の授業観を変えたいと思っていました。
 こういう子に育ってほしいという細水先生の教育観を見せたかったのです。そうすることで親を巻き込むことができます。
 多くの保護者はわが子しか見ていません。
 わが子をしっかりと見てくれている担任に対してはあまり文句を言いません。
 担任は「あなたのお子さんをちゃんと見てますよ」とアピールすればいいのです。
「急に背が伸びましたね」と、全員に同じ一言ではなく、その子に応じた一言を伝えれば、保護者は安心してくれるでしょう。
(細水保宏:1954年生まれ、横浜市立小学校教師、筑波大学附属小学校教師、同副校長を経て、明星大学客員教授兼明星学苑教育支援室長、明星小学校長。全国算数授業研究会元会長、ガウスの会会長。全国各地の小学校で授業や講演)

 

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