生活指導はどのように変遷してきたか
1 生活綴方(1930年代~)
生活指導というのは、生活綴方の実践(峰地光重:1890~1968、小学校教諭)から始まった。
生活綴方とは、子どもたちが日々の暮らしのなかで見聞きしたこと、遭遇した問題などをありのままに綴った文や詩を作り、それを学級のなかで読み合い批評しあう。
その過程で「ものの見方・感じ方・考え方」の意識化をはかり、より人間らしい生活の仕方を考え合っていく。
そのことを通じ、子どもたちは貧困や抑圧にくじけぬ意欲と知性を育み、抱かえこんだ困難な問題への共感とケアの能力を獲得していく。
2 北方性(ほっぽうせい)教育(1930年代~)
東北地方の青年教師たちが、生活綴方の実践を発展させ、日々の暮らしから出発して、子どもに内在する意欲や要求を引き出し、高め、社会や文化をつくり変えていく主体を形成するように構想されたもの。
戦後初期の「山びこ学校」の実践へと継承された。
3 仲間づくり(1950年代~)
小西健二郎の「学級革命」などが代表的な実践で、学級内の力関係をみつめ直し、理不尽な支配には、みんなが連携して立ち向かっていく、そんな力を子どもたちのなかに育てようとした。
子どもたちの生活世界のなかに民主主義を追究していく生活指導が展開された。
4 学級集団づくり(1960年代~)
全国生活指導研究協議会(全生研)による「学級集団づくり」の実践である。
そこでは、「集団の力」が強調され、クラス作りや行事でのクラス発表に向けた組織的な行動力と自治的な集団の統治能力の獲得が目標とされた。
その活動の母体となる「班づくり」、学級の民主的な諸問題の解決のために主導していく「核づくり」、質を深め、その実現方法を考え合う「討議づくり」が、「班・核・討議」として学級集団づくりに定式化され実践された。
この実践は、主として教科以外の特別活動において働きかけるものである。自治的な組織と運営の担いてになる行動能力を育てるという目的を意識して展開されていったものである。
5 異質共同型集団づくり(1980年代後半~)
豊かな社会のなかでの、子どもの荒れ(校内暴力・不登校・いじめ・学級崩壊)の背景にある、能力主義的な競争を強いる学校や家庭での抑圧感からさまざまな問題を生みだしている。
普通の子どものなかにも鬱屈とした感情がためこまれ「ムカツク、ウザイ」という言葉が蔓延する時代である。
子どもを支配する学校から、コミュニティとしての学校へと子どもたちの内面と対人関係を組みかえていくような指導が求められる。
異質共同型の集団づくりは、従来の規律重視の集団主義に代わり、子ども同士の関係性に重点をおきます。
「みんな一緒に」という力が働く学校の一元的価値の息苦しさから脱出し、子ども同士を出会い直させ、絆を編み直させる、関係性を変革に視点をおく実践である。
6 心の居場所づくり(1990年代~)
学級が子どもの心の居場所として、安心して自分を表現でき、自尊感情を取り戻す場となるような学級をつくりだしていく実践である。
(船橋一男:1959年横浜市生まれ、埼玉大学教育学部教授。生活教育、生活綴り方、生活指導の研究を主に手がける)
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